【立憲民主党の新代表決定】首相経験もある野田氏が当選。政権交代を目指す野党のリーダーに求められることは?
静岡トピックスを勉強する時間「3時のドリル」。今回のテーマは「立憲民主党の新代表決定」。先生役は静岡新聞の橋本和之論説委員長です。(SBSラジオ・ゴゴボラケのコーナー「3時のドリル」 2024年9月24日放送)
(山田)立憲民主党の新代表が野田佳彦元首相に決まったということですね。
(橋本)事前の予想で野田さんが優勢という話が出ていましたので、下馬評通りの結果になったということだと思います。静岡新聞が事前に行った県内の立民の国会議員や地方議員などの動向調査でも、16人のうち半数が野田さんを支持していたということです。
(山田)そうですか。
(橋本)9月24日静岡新聞朝刊の新聞の見出しにもあるように、旧民主党時代の首相経験者ということで知名度が抜群にありますし、政策通で党内きっての論客ということで、党首として4候補の中では最も安定感のある人物として評価されたということが選出された理由かと思いますね。
(山田)やっぱり、首相の経験ってのも大きいわけですね。
(橋本)そうだと思います。旧民主党政権時代に3人が首相を務めていて、その最後の3代目をやられてますね。
政治とカネの問題で批判を浴び、支持も低迷している自民党は、総裁選で刷新感のある新総裁を生み出して何とか国民の支持を取り戻そうとしています。その効果もあってか、ちょっと支持率が上がっているという話もありますが、そういう中で、新代表は自民党との新総裁と党首討論などもやらなくてはいけなくなります。野田さんなら十分対応できると思われた方が多かったということではないでしょうか。
(山田)与党の代表は、首相だから注目するのはわかるんですが、野党の代表に注目する理由はどういうところにあるんですか。
(橋本)最大野党としての役割の一つは、野田さんが挨拶でも話していたように「政権を取りにいく」「政権交代を目指す」ということです。自民党政権では自分たちが国民のためにいいと思ってる政治はできないから、自分たちが政権を取って政治のやり方を抜本的に変えようということですね。
それともう一つ、野党の役割としては、与党が暴走しないようにするということがあります。国民のためにならない政治や、自分たちの権益のための政治をしないようにチェックをして、問題があればそこを指摘し、対案を出して変えていく必要があります。最大野党の代表というのは、その一番トップに立つべき人だということですよね。
決選投票で選出
(山田)なるほど。では、簡単に今回のこの代表戦を振り返っていただけますか。
(橋本)立候補者は野田さんのほかに、3年代表を務め再選を目指した泉健太さん、立憲民主党の創設者と言える枝野幸男さん、あとは当選1回ですが前回衆院選の東京8区で自民党の石原伸晃元幹事長を破って初当選した吉田晴美さん。4者による戦いになりましたね。
投票は国会議員と公認候補予定者による党大会での投票と、地方議員と協力党員による郵便やインターネットでの事前投票を合わせた1回目の投票で、過半数に達した候補者がいませんでした。上位2人の野田さんと枝野さんによる決選投票が行われ、決選投票の結果、野田さんに決まったということです。
決選投票は国会議員と公認候補予定者、47都道府県の代表による投票で、その結果、232対180で野田さんが勝利したと。
(山田)232対180っていうのは、「野田さん強いなー」って感じで勝ったっていう数字なんですか。
(橋本)まず、そもそも1回目の投票で過半数を取った人がいなかったですよね。野田さんが強いとは言われてましたが、党内にはいろいろ考え方があるということですね。野田さんは旧民主党で首相を務めましたが、自民党に政権を奪還された時の党首であり、また消費税を5%から10%に段階的に上げることを決めた首相でもあるので、そういうことの印象から「野田さんじゃない方がいい」と思う方もそれなりにいたということだと思います。
また、野田さんも枝野さんも、旧民主党政権のときに中心的に活躍されていた方です。「党の刷新感」という意味では、「長いこと党の中心にいるよね」って思われているような方達なので、果たして、党が新しく生まれ変わったとか、改革されたとかというイメージを国民に持ってもらえるのかどうか、ということもあるわけです。
泉さんは前の衆院選で枝野さんが議席を大きく減らしたことで辞めた後に選ばれて、40代で代表になっています。若手として刷新感を出すために選ばれた方なので、本来だったら継続されてもいいと思うんですが、泉さんのこの3年間の運営についても疑問を持った方が多かったようです。
例えば、初めは自民党に対して、反対よりもまず現実的な対案を出すということに力を入れたんですが、そのうちに自民党の不祥事もあり、だんだん路線が変わってきて、最近で言えば政治とカネの問題などを批判していかないといけない、という状況になっていきました。
そうした党運営の路線に紆余曲折があったという部分や、前の参議院選で議席を減らしたことなどから、評価されなかったということがあります。また、唯一の女性候補が出たので、その方の方が党のイメージ刷新にはいいんじゃないかという人たちも一定数いたということだと思います。
(山田)じゃあ結構、票が割れたんですね。僕、枝野さんもあるのかなと思ってたんですけども。
(橋本)これから政権を取っていくにあたって野党で協力しなくてはならないという中で、以前の選挙で共産党の協力を取り付けて成果を上げたことのある枝野さんがいいという意見もあったようです。けれども、最終的には野田さんの方に支持が集まったということです。
まずは党内をまとめる必要
(山田)野田さんになって、これから立憲民主党はまとまることができるんでしょうか?
(橋本)9月27日に自民党の新しい総裁が決まり、10月1日に臨時国会を開いて新しい首相が決まる見通しです。それから間を置かずに衆院が解散して総選挙を行うと言われてますね。投開票日が10月27日か11月10日のどちらかになると予想されています。
野田さんは就任の挨拶で、「次の総選挙で本気で政権を取りにいく覚悟だ」と宣言しました。ただそれを実現するには、まず党をまとめる必要がありますよね。代表選の票が割れたので、野田さんと相容れない意見を持っている方もいるわけです。
それをまとめていかなくてはいけないので、野田さんが挨拶で強調していた「ノーサイド」の挙党態勢を作れるのかどうかが最初のハードルになると思います。
そのハードルを越えたとしても、次の選挙に臨むときにはやっぱり立憲単独ではなかなか自民党を過半数割れに追い込むことはできないので、他の野党とも協力していく必要がある。それをうまくやれるのかが課題になってきます。
ただ、野田さんは共産党と政権を組むことはないということも言っていて、それに対する共産党から反発もあります。そういう中で、選挙でうまく協力する態勢を作っていくというのは、なかなか難しいことではないかと思います。
自民党の総裁選は過去最高の9人が立候補して、看板の掛け替えじゃないかという批判もされましたが、これだけ大勢が出て論戦を交わすことによって注目を集めた。
立憲民主党の党首の代表戦は、その陰に隠れてしまったという印象もないとは言えません。そういう意味では自民党の方の狙いが功を奏したと言えるかもしれません。
(山田)なるほど。
(橋本)ただ、自民の新総裁と野田さんの間で論戦が交わされれば、その発言によって、次の選挙への影響がガラッと変わることもあるかもしれません。
新総裁にみんなが期待して一時的に支持率が高まっても、何か不用意な発言をしてガクッと下がってしまうとか、その逆ももしかしたらあるかもしれない。そこで、野田さんが頑張って次の選挙に繋げることができるのか、それとも自民党の新総裁に押し切られてしまうような形になるのか。そこは本当に注目すべきところだと思います。
(山田)すごい。今後の日本に関わるようなことがこの先の1、2週間で行われるということですね。今日の勉強はこれでおしまい!