僕が「数字を見ない」理由と、新チームメイトの「ココがすごい!」と思った話! 巨人、高梨雄平投手の連載日記【ナシさんのアリな話 鉄腕奪取】第18回!
「数字を気にすること」と「数字にフォーカスすること」は
実は似て非なるモノ
『ラブすぽ』読者のみなさん、読売ジャイアンツの高梨雄平です。開幕から1カ月以上が経過しましたが、僕自身は前回コラムでも書かせて頂いたようにようやく心身ともに「シーズンモード」に順応できて、充実した(しんどい時もありますけど……苦笑)毎日を送っています。今回のコラムでは、前回も少し触れた「数字との付き合い方」についてと、今季のジャイアンツについて書いていきたいと思います。
前回のコラムで、僕は「数字は見ていない」と書きました。開幕1カ月の時点では、まだ残した数字が「サンプル」にもならないという理由もありますが、実は僕自身ここ数年、年を追うごとに数字への興味も薄れてきているんです。登板数が……防御率が……という部分よりも、むしろどれだけ良いトレーニングができているか、どんな感覚で投げられているかを探る方が、シンプルに楽しくなってきている気がしています。もちろん、プロ野球選手である以上「結果」「数字」を残すことは大前提だし、そこを求めなければいけないのは当たり前です。
ただ、厳密にいうと「結果や数字を残すこと」と「結果や数字を気にする、見ること」って、実は似て非なるモノなんですよね。なぜなら、今そこにある「数字」ってすべて「過去」のモノだから。僕らが気にしなければいけないのは「過去」ではなく「未来=この先、どんなピッチングをするか、できるか」なので、究極の話をすれば過去の数字を見たところで何の意味もない。もちろん、過去の数字から見えてくるものもあるし、それを気にすること、意識することを否定するつもりはないです。ただ僕の場合、フォーカスする部分がそこ=「過去」ではない。「未来」で良い結果を残すために「過去」に囚われる必要性は、あまり感じていないんです。
例えば、「結果や数字」が出ないと逆にそこばかり気になってしまう、意識し過ぎてしまうケースは、プロ野球選手でなくてもよくあるケースだと思うんですけど、それも結局「結果=過去」や「周囲からどう見られているか」を自分自身の基準にしてしまうから起きることだと思うんです。もちろん、「結果を気にして、結果を出す」能力も大事ではあります。でも、それが必ずしも今日の自分、未来の自分とリンクするとは限らない。
過去の自分(結果や残した数字)が悪かったら、今日の自分も悪いのか……そんなことはないですよね?もし「今日の自分が良い結果を出す」ことだけにフォーカスしたいのであれば、過去のネガティブな情報って必要なんでしょうか?それがプラスになる人もいるかもしれないけど、結果が出なかった過去を引きずることが、今日の良い結果につながらないこと(が多い)は、僕自身の経験則で分かっていることなんです。
僕が数字や結果にこだわらない、意識しないのは、そういう理由があります。それが分かっていれば「過去(数字)を意識しても意味ないじゃん」って思考からぶった切ることができる。それができない時点でプロフェッショナルではない気がします。これから残すであろう結果にフォーカスすることと、過去の結果を意識してしまうことは、実は真逆の行為。そこはプロ野球選手として、シーズンを戦うためにいつもしている部分です。
リリーフの立場から見た
2025年ジャイアンツの「ココがすごい!」
ここまでは僕自身の「数字との向き合い方」について書いてみましたが、今回のコラムでは最後に「今季のジャイアンツ」についても少しお話したいと思います。ファンの方もきっと気になっている部分じゃないかなと思うんですけど、連覇を目指すジャイアンツというチームにおいても、今季はいくつかの大きな変化がありました。
ひとつは、昨季までチームを「エース」として引っ張ってくれた菅野(智之)さんが抜けたこと。僕自身はリリーフという立場なので、その影響を直接感じることは少ないんですけど、菅野さんが抜けて、特に若い投手の多くが「俺がやらなきゃ」と目の色を変えてシーズンに臨んでいるのをすごく感じます。逆を言えば、それだけ菅野さんの存在がジャイアンツにとっても大きかったんだなと痛感する部分でもあります。メジャーの舞台でも開幕から結果を残して、僕自身も気になって見るんですけど「菅野さん、やっぱりすごいな」と感じますね。もちろん、チームメイトだったころからすごいとは思っていましたけど、改めてメジャーでもしっかり結果を残す姿を見て「さすが!」と思っています。
投手陣に関して言えばもうひとつ、ライデル(・マルティネス)の加入はすごく大きいです。ライデルはリリーフなので、僕自身はもちろん、ブルペン陣にとっても影響はかなり大きいです。大勢とライデルという、球界を代表するクローザーがチームに二人もいる……これは正直言ってメチャクチャ心強いです。ファンの方もそうだと思うんですけど、とにかく「7回までにリードする」ことを徹底すれば、後はあの二人がなんとかしてくれる。チームメイトの僕が言うのも変な話ですが、大勢とライデルが同じチームにいるのは「反則クラス」だとさえ思ってしまいます(笑)。例えば野球ゲームなんかで、選手の能力値の合計数に制限があったりするケース、あるじゃないですか?実際のプロ野球はゲームじゃないし制限もないけど、もしあったら確実に制限オーバーするような、そんな感覚です(笑)。
だからこそ僕らリリーフの仕事が重要になってくるんですけど、ここから先のシーズンを戦う上では、やっぱりカギを握るのは大勢なんじゃないかなと思っています。ここ数年はコンディションの部分で苦しむこともありましたが、もし大勢が抜けるようなことがあればライデルへの負担も増えるし、二人が揃っているからこそ、という部分もとても大きい。その意味で、その前を投げる立場として大勢にはすごく期待しています。
野手で言えば、FAで(甲斐)拓也が入ったのはピッチャーとしては大きな変化です。同い年だしコミュニケーションもよくとってくれるんですけど、今までのジャイアンツにはいないタイプのキャッチャーだなと思っています。リード面でも「ここでそんなボールを要求するんだ」と驚くことがありますし、何より本当によく人を見ている。野球に対する姿勢も感心することが多いです。プロ野球選手ってよく「負けたときのストレス解消方法は?」みたいな話を聞かれることがあるんですけど、そんな話を拓也としたら真顔で「次の試合で勝つ以外、解消できる方法なんてなくない?」と言われて、普段は普通にお酒飲んで、前の試合のことなんて全然考えない僕は何も言い返せませんでした……。コレは絶対に拓也の耳には入らないよう、ここだけの話にさせてくださいね(笑)。
とまぁ、そんな感じで今年のジャイアンツも昨年に負けず、メチャクチャ良いチームです!まだまだシーズンは続きますが、引き続き熱い応援を宜しくお願いします!