【認知症リスクを減らす】専門医が伝授!脳ダメージを回避するためのストレスマネジメント
現在、日本では65歳以上の5人に1人が認知症になると言われています。認知症になるリスクを減らすために重要なのは、食事、運動、睡眠などの「生活習慣」に気を付けることですが、見逃しがちな要因もあります。それが『慢性ストレス』。日々の「不安」「イライラ」が脳にダメージを与えているかもしれないのです。 書籍『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』(KADOKAWA)は、消化器外科医/ヘルスコーチである著者・石黒 成治氏が、医学的根拠と、過去に健康に悩んでいた自身の実践をもとに、「ストレスに屈しない」思考法や、運動、食事、生活行動など、生活習慣の予防法を網羅しています。 今回はその本の中から、石黒氏自身が実践してきた「ストレス」をはねのける方法をご紹介します。
※本記事は石黒 成治著の書籍『認知症にならない ストレスマネジメント 医師が実践する 脳ダメージをはねのける方法』から一部抜粋・編集しました。
「他人は変えられない」と割り切る
人と意見が異なるときに、自分の正しさを主張するために、相手の意見の矛盾や自分の意見の正当性を語ることによって、言葉で相手を打ち負かすことは一種の快感を呼びおこします。ですがいくら相手をぐうの音も出ないほど打ち負かしても、打ち負かされたほうは決して「君の言うことが正しいことがわかったよ、ありがとう」とはなりません。
逆に人間関係はもっと悪くなり、「二度と議論をふっかけられたくないので話をするのはやめよう」となります。これらは日常でのちょっとした争いでも同じで、「主人が何かをやってくれない」とか、「妻が何かをやってくれない」とか、「子どもたちが言うことを聞かない」とか、いくら相手を言葉でせめ立てたところで、思い通りに動いてくれることは少ないですし、感情的なしこりや胸の中にもやもやしたものが残るだけで、その後の永続的な行動の変化につながることはありません。
基本のマインド(心構え)として、「たとえ身内でも、他人と意見が違うのは当たり前、他人の気持ちを自分が変えられることはない」と考えて、自分の感情をコントロールすることを心がける必要があります。このマインドをもって生きれば、イライラしたり、腹が立ったりすることも激減します。自分が忙しくて今やらなくてもいい(と自分では思う)タイミングで、別の仕事を頼まれたとき、何か理不尽なことを言われたときなど、生活していれば感情の起伏がおこるタイミングがあると思います。
「子どもたちが言うことを聞かない」「部下が自分のアドバイスを受け入れない」「上司や先輩が自分の意見を認めてくれない」など、人間関係で自分の思い通りにいかないときや動かないときなどには、以前は僕も腹を立てていましたが、今ではほとんど腹を立てることがなくなりました。「自分は正しい。相手は間違い」という感情を捨てて、「相手には相手の都合があってそう言っているのだろう。僕だって意見の違う相手に何か言われて素直に考えを変えたことなどないのだから、いくら自分が論理的に相手の意見の間違いを指摘しても変わることはない」と考えて、変えられないものを変えようとしなければ、イライラは本当になくなります。
逆に変えられるものは何かといえば、自分の感情だけです。自分の中での何かをすべきであるとか、何かが正しいという考え方を変える必要はありませんが、その考え方と違う意見に遭遇したときに、自分の思い通りにすべきであるという思考から抜け出せないと、怒りや憎悪の感情が生まれてきます。意見が違うと認識したときに、反射的に感情に接続するのではなくて、間にワンステップをおくクセをつけると、胸のもやもやした感覚がなくなってきます。とはいえ、これまでずっとその考え方で生きてきたものを、なかなか簡単には変えられないものです。感情をセルフコントロールするためにはトレーニングが必要です。