虫がつかない「無菌の土」で野菜が育つ未来…狙うは万博!親子の挑戦が大きな反響
2024年の秋、YouTube上で、ある”園芸動画”が話題になりました。
格闘家の朝倉未来さんが観葉植物の紹介をしています。
緑と触れ合う格闘家の園芸シーンは、”ギャップ萌え”すると話題に。
実は、朝倉さんのこの園芸で使われていたのは、北海道大学のスタートアップ企業「ラテラ」が発明した「土」です。
一般的な腐葉土と違い、「土」なのに「無菌」。
虫の心配がないため、キッチンや職場などの屋内でも葉野菜や根菜類が育つのが最大の特徴です。
連載「じぶんごとニュース」
親子2人の試行錯誤が今…
商品化したのは、元北海道三笠市の職員の荒磯慎也(あらいそしんや)さんと、父親で北大名誉教授の恒久(つねひさ)さん。
恒久さんが「試行錯誤と失敗の連続でやってきた」と話すと、慎也さんも「今月、支払いどうしよう!みたいなものは、日常茶飯事だった」と笑います。
社員は親子ふたりだけ。でも今では大きな反響があります。
2人が訪れたのは、札幌市清田区にある草花を扱う専門店「花葉花」です。
店では、根が付いたまま育つ植物を市内のスイーツ店やレストランなどへ納品しています。
オーナーの野瀬さんは、テレビで「虫の心配がない土」を知り、2人に連絡をとりました。
「室内で植物を楽しみたいけど、土が苦手だという方もいらっしゃるんです。土を否定するわけではないんですけど、レストランやテーブルの上は、清潔を保つのがマストなので…」
この日は「無菌の土」を使って、植物を植えてみることにしました。
白い土に生き生きとした緑が映える作品ができあがりました。
在庫が足りないほどの売り上げに
恒久会長が「そういえば最近、売り上げどれくらいになっているの?」と訪ねると、慎也社長からはこんな答えが!
「1日、10万円を超しています。『在庫が足りません』とAIが言ってくる。明日は事業計画を作るかな…」
そんなラテラに3月、大きな転機が訪れました。
2人も緊張の面持ち…商談を持ち掛けてきたのは、海外でも事業を展開している国内有数の大手日用品メーカーです。
打ち合わせ相手は、海外事業部門を取り仕切っているトップ。
この日が初対面です。
企業秘密のため、打ち合わせは非公開で行われました。
約1時間後…慎也社長にその手ごたえを聞いてみると。
「きょうは具体的な話もあったので、本気度が違うというところで、本当にお付き合いしてもいいのかもしれない会社さんと、ようやく出会えたと思いました」
この日の商談を機に、2人は海外市場へ舵を切ることを決断しました。
次に狙うのは…
ラテラは、新たな研究拠点へ踏み出します。
そこは、道内の様々な国立大学や、ベンチャー企業などが集まる「エア・ウォーターの森」です。
農業分野を中心に、産官学が共同で実証実験を行うなど、北海道の社会課題の解決に向けて取り組む”開かれた”イノベーション施設です。
エア・ウォーター北海道事業企画部の棟方裕介リーダーは「北海道の技術革新や農業革新につながるのであれば、我々としてはありがたい」と歓迎します。
その先を目指す”夢”を2人が打ち明けてくれました。
「私たちが狙っているのは、次の万博。2030年、サウジアラビアのリアドで開催が決まっているので、メロンを展示できるような野望を持って出資をしてもらう」
親子が描く未来は、中東の乾燥地帯で新鮮な野菜や、甘みのある北海道原産の果物栽培。
父と子のベンチャーの夢は、日夜、膨らみ続けています。
さらにこんな動きも…ますます注目!
最新の動きとして、屋内で果物を栽培する道内の農業法人からも声がかかり、本州の大学系の投資会社から出資の話も入ったそうです。
一方で投資会社との交渉も。
モノづくり大国の日本から芽を出した北海道発の農業技術は5年後に実を結ぶのか。
成長に期待していきたいですね。
連載「じぶんごとニュース」
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年4月18日)の情報に基づきます。