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横振り刺しゅう 止めるな伝統、託す技術 弟子公募で職人技の門戸を開く

タウンニュース

横振り刺しゅうで生地に柄を起こす山上さん

ドブ板通りの一角にある刺しゅうとスカジャンの専門店「ドブ板コーバスタジオ」を営む山上大輔さん(34)が、減少の一途をたどる「横振り刺しゅう」の技術を継承しようと、10月1日から弟子の一般公募を始めた。職人の世界では珍しいといい、今年12月頃から2年間をかけて、次代の職人候補を育てたい考えだ。

群馬県桐生市にルーツを持つといわれる横振り刺しゅうは、左右に針が振れるミシンを使って、職人の手で直接生地に柄を起こしていく日本独自の手法。重ね縫いによる立体感などが特徴で、唯一無二の品が出来上がるという。横須賀では戦後、米兵向けのスカジャンが人気を博したことに伴い、隆盛を見せた。

しかし現在では職人の高齢化や機械式ミシンの台頭などにより、その技術は途絶えかけているという。ドブ板通りにもその波は押し寄せており、山上さんを含め職人は数人しか残っていない。「巧拙は関係なく、横振り刺しゅうは機械には出せない”人間臭さ”がある。その魅力を残していきたい」と山上さんは決意をにじませる。

職人減、需要は過多

職人の減少の一方、横振り刺しゅうによる味わいのあるデザインは根強い人気がある。公募に至った理由の一つは、需要に応えるため。生地によっては、通常の2〜3倍の時間を要するといい、オーダーが入っても手が回らず、断らざるを得ない状況が続いていたという。

2年で一人前に

山上さんによると、退職後のセカンドキャリアやデザインの仕事の幅を広げたい人などから、10月14日現在までに計7人の応募があった。今後、面接を通して6人に絞っていくという。

初回の講座は12月頃を想定。虎の牙や水玉模様、松の実など比較的簡単なデザインをこなしていき、1カ月に1度山上さんが直接指導する。これを約2年続け、最終的にプロとして仕事を任せられるレベルを目指していく予定だ。

「伝統ある横振り刺繍という文化で、一緒に横須賀を盛り上げていけるメンバーが見つかれば」と願いを込める。

横須賀の文化を紡ぐ

山上さんは2019年から22年まで、ドブ板通りの「ファースト商会」店主で刺しゅう職人の松坂良一さんや桐生市の職人に教えを請い、技術を習得した。その後、コーバスタジオを開店。オーダーメイドのスカジャンを手掛けている。「横振り刺しゅうは横須賀の伝統文化。ぜひ地元の人にも興味を持ってもらいたい」と話している。

応募は11月1日(金)まで。年齢性別国籍等不問。詳細は同店【電話】046・890・6041。

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