一見地味なヒイラギの意外な生態と食味 別名ネコマタギの意味は「価値がない」から?
釣りで遭遇する外道の中でも、特に知られている「ヒイラギ」。浅海の砂地に生息し、投げ釣りの際に多く釣れる魚で、大量の粘液を放出するため厄介者扱いされることもあります。「ネコマタギ」と呼ばれ価値がない魚と見なされることもありますが、ヒイラギは東南アジアでは重要な水産資源であり、日本でも美味しく食べられる地域があります。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
ヒイラギとは
ヒイラギはスズキ目ヒイラギ科に属する魚で、主に海水・汽水域に出現する小型種。日本産ヒイラギ科は2024年5月現在、17種が知られており、南方域では種数が多く沖縄などで見られるセイタカヒイラギは日本産ヒイラギ科の中でも大型になる種です。
ヒイラギの生態
本科の魚はいずれも銀色の体色を持ち、体側部は円鱗で被われます。これらの特徴からしばしばアジ科と混同されることもありますが、本科は背鰭が1基であることなどが特徴。本種は背鰭と臀鰭に硬く鋭い棘を持ち、これが植物の柊のようであることがヒイラギの由来とされています。
ヒイラギは地味だけど美味
ヒイラギ科は一見なんの変哲もない魚に見えますが、食道付近に発光器を備えており、共生しているバクテリアの働きにより発光することが古くから知られていたそうです。
深海性の魚で発光する種は多くいますが、浅海性の魚で発光する魚は珍しいかもしれませんね。
日本で広く見られるヒイラギ科はヒイラギとオキヒイラギです。特にヒイラギは釣りお馴染みの外道であり、大量の粘液を分泌することから釣り人からは好まれていません。
また、ヒイラギは各地でこれらの特徴に由来したと考えられる地方名が付けられています。
例えばギラは銀色の体に由来していると推測され、ギギは本種が釣り上げると鳴くためでしょう。ハナタレエバという変わった地方名は本種が分泌する粘液に由来しているのかもしれません。
他にもヒイラギは魚が好きな猫すら跨ぐ魚=価値がない魚を意味する「ネコマタギ」の別名で呼ばれることもあるとか。
食用としてのヒイラギ
そんなヒイラギですが、実は美味しい魚なのをご存知でしょうか?
釣りでよく見られるヒイラギは広く食品とはならないものの、味は良く刺身や煮付けで食べることができます。味は人によってアジ科に近いとも評されます。
高知県ではヒイラギをニロギと呼び、本種を使った汁物である「ニロギ汁」は有名なヒイラギ料理です。
ヒイラギの干物
ヒイラギ科に属するオキヒイラギは名前の通りヒイラギと比較してやや沖合に生息する種。沿岸部に生息するものの釣りで見かけることはほとんどなく、定置網などで時に大量に漁獲されます。
本種はヒイラギよりも小型の種で、背鰭と臀鰭の棘が比較的弱いことから丸干しにして食べることが可能です。オキヒイラギが多産する相模湾では、本種の丸干しがちょっとした名物でもあります。
このように日本国内では限られた地域のみで食べられているヒイラギですが、東南アジアでは重要な水産資源であり、フィリピンではヒイラギ科をサプサプと呼び干物にして食べているようです。
釣りの外道のイメージが強いヒイラギですが、食べてみると美味しい魚でもあります。棘に注意しつつヒイラギ料理を楽しんでみてはいかがでしょうか。
(サカナト編集部)