『忘却バッテリー』の推せるおじさん5選! 球児たちの青春を彩る個性豊かなおじさんたちの魅力
マンガ誌アプリ「少年ジャンプ+」で連載中のみかわ絵子先生による大人気漫画『忘却バッテリー』。中学時代に“怪物バッテリー”として名を馳せた天才投手・清峰葉流火と捕手・要圭が、要が記憶喪失になったことをきっかけに野球部のない都立小手指高校に入部し、かつて自分たちが挫折させた球児たちと再び野球に打ち込む日々を描いた高校野球漫画です。
筆者はそんな本作が大大大好きなのですが、高校生たちのフレッシュな青春物語もさることながら、彼らを取り巻くユニークなおじさんキャラクターも魅力のひとつだと感じています。
そこで本稿では、『忘却バッテリー』に登場するおじさんキャラクター5人にスポットライトを当ててみたいと思います。『忘バ』のおじさんたちは、面白くて、可愛くて、貫禄があって本当に推せるんです……!
※本稿にはネタバレ要素が含まれます。アニメ2期以降の内容にも触れていますのでご注意ください。
帝徳高校・岩崎勤監督(初登場:コミックス2巻8話)
まずご紹介したいのは、小手指高校と同じ西東京地区の名門校・帝徳高校の岩崎監督です。名将と謳われ、長年帝徳を率いてきた彼は、清峰や要はもちろん、小手指の最強二遊間である藤堂と千早もスカウトしていました。しかし彼らは都立高校へ進学してしまい、獲得することができませんでした。
今もなお彼らへの未練を持ち続けており、4人のこととなると普段の威厳ある風格から一変して激しく取り乱してしまいます。アニメ1期にも登場し、その強烈なキャラクターに驚かされた視聴者も多いのではないでしょうか。
岩崎監督の推しポイント①:清峰たちを愛しすぎている
岩崎のインパクトの強さといえば、清峰たちを見て取り乱す姿。彼らが帝徳を蹴って都立高校に入学したことを知って、奇声を上げながら膝から崩れ落ちる姿は何度見ても強烈です。彼らを見ると涙を流したり、震えたり、泡を吹いて倒れたり、若者口調になったりと、とにかく様子がおかしくなってしまう岩崎。私はこんなに取り乱すおじさんを見たことがありません。
それだけ彼らのことが欲しくてたまらなかったのだということがわかりますが、名門校の監督ともあろうおじさんがこんなに感情を素直に出す姿には、面白いだけでなく愛らしさを感じてます。また、小手指を応援する読者としては、小手っ子(小手指野球部の子供たちのこと ※岩崎命名)をこれほどまでに高く評価しているところも嬉しくなってしまいます。同担大歓迎ですね!
岩崎監督の推しポイント②:名将の重みある発言
小手っ子を愛しすぎているがゆえにすぐ取り乱してしまいギャグ枠のように描かれることの多い岩崎ですが、そんな彼が見せる名将らしい重みある発言にハッとさせられることも多いです。
例えば、スポーツ用品店で小手指野球部の面々と岩崎が偶然出会ったときのこと(コミックス5巻第31話)。同じく名門校である氷河高校との練習試合を観に来てほしいと岩崎が誘うと、千早が「敵に手の内を見せていいのか」と返します。すると、岩崎は「見たところで何かできるとでも?」と一言。
今まで手放して彼らにラブコールを送っていた岩崎とは別人のような凄みに、彼が名門校を率いている事を再認識した読者も多いのではないでしょうか。監督の人格の温度差に風邪をひいてしまいそうです。フレンドリーな態度からにじみ出る人の良さとライバル校の監督の厳格さのギャップが岩崎のキャラクターをより魅力的なものにしています。
岩崎監督の推しポイント③:帝徳野球部員への強い愛情
岩崎の愛はもちろん帝徳野球部員へも注がれています。コミックス6巻第35話では大勢の部員を抱える帝徳で3年間一度もレギュラーになれなかった部員の姿がとてもシビアに描かれているのですが、私は岩崎がレギュラーに選ばれた選手も、選ばれなかった選手も同じように愛情をかけているように感じられました。それでも試合で起用する選手を選ばなければならないため、描かれてはいないものの岩崎自身も人知れず胸を痛めているのではないかと推察しています。
また、彼の部員愛が感じられるのは、出場した夏の甲子園一回戦で名門・大阪陽盟館高校にボロ負けしてしまったときのこと(コミックス12巻第84話)。あまりに一方的な試合だったことから、帝徳はSNSで酷い誹謗中傷をされてしまいます。
それを見た岩崎は「私はいいんだよ 何を言われたところで」「しかし…ッ 子供たちは まだ未熟な高校生だぞ」と激しく憤ります。その怒りは日々練習に励み、やっと晴れ舞台に立てた部員たち、レギュラーになれなかった部員たちを思ってのこと。部員たちを心から大切に思う姿勢も彼が名将と呼ばれる所以なのだと感じられます。
小手指高校の佐古優助監督
次にご紹介するのは、小手指野球部の佐古監督です。彼は小手指高校2年の佐古レイラの従兄弟で、彼女の紹介で初めての夏の大会を終えた小手指野球部の元にやってきます。年齢は不明ですが、おそらく20代。しかし、無職で長く引きこもり生活をしていたため見た目はもっさりしており年齢以上に老けて見えます。
初登場の際には道中で突然犬に襲われたらしく服はボロボロで、髪もボサボサ、目もどんよりとしており、おまけにお腹を空かせて部員に食べ物をたかるという始末。緩く締まりのない言動からは何も期待できないように感じられる佐古ですが、就任してみると驚くほどの監督力を発揮するのです。
佐古監督の推しポイント①:鋭い観察眼と抜群の監督力
淀んだ目をした佐古ですが、彼の観察眼の鋭さは目を見張るものがあります。監督就任から数か月が過ぎた頃、部員から要の二重人格について伝えられた佐古。普通は冗談だと思ってしまってもおかしくない内容ですが、佐古はあっさり信じるのです。あまりにさらっと信じてもらえたことに動揺する部員たちですが、彼は「キミたちわざわざ仲間の噓なんてつかないでしょ 信じるよ」と一言。
また、野球の実力は素晴らしいものの情緒面が未熟な清峰を気にかけ、チームのために投げる“本物のエース”に育てたのも佐古の手腕によるもの。これは智将・要圭にもできなかったことです。佐古自身も清峰の精神的な成長を見て目を潤ませる様子を見せています。
さらに、最新話ではフィジカルを理由に憧れのプレースタイルを諦めていた千早に、もう一度挑戦してみることを提案。その際、小技を磨いてきた千早のこれまでの努力を強く肯定したうえでプレースタイルの変更を勧めているのもとても印象的でした。
選手として部員たちを尊敬しつつ、高校生の未熟な部分をサポートする佐古の姿を見ていると、彼が小手指の監督で本当に良かったと一読者ながら思うようになりました。彼に見守られながら成長していく小手指メンバーのこれからがますます楽しみです。
佐古監督の推しポイント②:溢れ出す部員愛
部員たちをよく見ているなと感じる佐古ですが、それはひとえに部員たちへの愛によるものではないでしょうか。彼はおじさんらしからぬ言動でそれを惜しげもなく晒し出します。
試合の中で清峰・要バッテリーが急成長を見せた際には身震いしながら喜んだり、新球種・スプリットを投げられるようになった清峰には「もう我慢できないッ 神 LOVE」と言いながら抱きついたり(頬にキスしようとしたり)と、全身で愛を表現。私は、気分がいい時に千早のことを“ちーくん”とあだ名で呼ぶところも面白くてとても好きです。その愛情表現に対して塩対応する高校生たちにも笑ってしまいます。
小手指と帝徳の公式戦を観戦し、小手指に無限の可能性を感じて監督を引き受けた佐古。彼らの成長を間近で見られるのは胸が躍るほどの喜びなのでしょうね。
佐古監督の推しポイント③:頼りにならないようで頼りになるギャップ
監督がいなくても自分たちの力で上手くなれる才能を持つ小手指メンバーに対し、「決断するストレスを自分が負担する」と言って監督に就任した佐古。宣言通り、彼は練習日程や大会への出場是非、そして当然試合においても様々なことに決断を下しています。
時には勇気のいる思い切った決断をする頼れる監督……かと思いきや、不安で脚はガクガク、顔には「怖ェ~」「逃げてェ~」という胸の内が浮き出てしまう佐古。あまりの不安感から赤ちゃんになりたがり、しまいには「バブゥ~」と口に出してしまい、部員たちからは「赤ちゃん返りすんな」と総ツッコミを食らってしまいます。そうなると監督の威厳など欠片もありません……。
しかしそんなところが、3年生の先輩も含めて固い上下関係に縛られない小手指野球部らしくて私はとても好きです。監督として優秀なところに一目置かれながらも、部員たちとフラットな関係を築く佐古は小手指にぴったりの監督だと思います!
スポーツ用品店店長・安藤(初登場:コミックス5巻第31話)
三人目の推しおじさんは、吉祥寺のスポーツ用品店の店長・安藤です。小手指野球部がユニフォームを作る際にこの店を訪れ、その時に山田と出会い、心意気を気に入った彼は以降山田のファンを公言しています。岩崎監督とは旧知の仲のようで、お互いに「安藤」「岩崎」と呼び捨てで呼び合っています。
安藤店長の推しポイント①:ヤマちゃんを応援する気前のいいおじさん
安藤が山田のファンになったきっかけは、山田が捕手から一塁手にポジション転向した理由を聞いたことです。記憶喪失で素人同然になってしまった要にポジションを譲る山田の心中を察し「捕手として頑張ってみてもいいんじゃないか」と提案する安藤。それに対して山田は清峰・要バッテリーの活躍を心底期待していることと「野手たちの魂のこもった球を捕れるのはとても誇らしいです」とその心境を伝えました。
そんな山田の姿勢を気に入った安藤は、新しく買ったグローブの型付けを無料でしてあげたり、後日山田がお礼を言いに来た際には塗るとエラーしなくなるというジンクスのあるオイルを塗ってあげたりとサービスする気前の良さを見せています。
確かな実力を持ちながら普通の子っぽさもある山田は、読者の多くが親近感を持って応援したくなるキャラクターの1人。そんな彼を応援する安藤にも私たちは親近感を覚えるのでしょうね。
安藤店長の推しポイント②:時には喝を入れることも!
2年生になった山田は皆の推薦で主将を務めることに。しかし、実力ある他の部員を前に自分が主将でよかったのかと思いながらも、雑務を自分が引き受けることで主力メンバーが練習に集中できるようサポートしたいという胸中を安藤に明かします。
それを聞いた安藤は「雑務はみんなでやるもんだ」「みんなヤマちゃんに雑務押しつけたくてキャプテンに選んだわけじゃねェだろ」と、山田に反論。さらに、山田のミットを見て「これは野球が上手いやつのミットだ」と言い、「ヤマちゃんもチームの主力の一人だろがッ 縁の下に回ってる暇はないぜ」「チームの勝利はヤマちゃんにもかかってンだ 一選手としてもっと上手くなれ」と喝を入れたのです。
それを聞いた山田は「はい!! 僕…甘えてました」と認識を改めた様子。それを見て「頼むぜ 俺はお前のファンなんだからよ」と笑う安藤にグッと来た読者はきっと多いはず。山田を応援する読者の気持ちを代弁してくれる俺たちの安藤店長……推せる……!
大阪陽盟館高校の亀田監督(初登場:コミックス10巻第65話)
推しおじさん四人目は、プロ養成所と謳われる大阪陽盟館高校の監督・亀田です。快活でコミカルな人柄ですが、スカウト能力と質の高いコーチングで、数多くのプロ選手を輩出しています。180cm以上の子だけをスカウトするという方針を取っており、清峰のことはスカウトしたものの、要のことは歯牙にもかけていませんでした。
要を評価しなかったことや要が記憶喪失になる大きな要因のひとつであったこと、高校野球最強校の監督であることから、ヒールのような立ち位置にいる亀田ですが、彼にもまた推せるポイントがあるのです。
亀田監督の推しポイント:狂気的に強い野球愛
亀田の180cm以上しかスカウトしないという方針は、野球を盛り上げたいという一心から。愛してやまない野球界に格好良い若手選手を送り込み、もっともっと盛り上げたいと思っているのです。また、「陽盟(ウチ)の子供たちが安月給で終わるんは耐えられんのです」とも発言しており、日本で一番稼げるスポーツである野球でプロになってほしいと考えているところは部員への愛情も感じられます。
野球への愛情が強すぎるあまりサッカーを異様なまでに敵視しているところも面白く、選手の髪の毛がフサフサなサッカーにお洒落さが負けていることが悔しすぎて血の涙を流す姿には、彼が育成の立場から(もはや狂気的に)必死に球界を盛り上げようとしていることが伝わってきます。
今は要のことを目にも鼻にもかけていない亀田。しかしきっと「何あの子!? 身長低いのに野球うっま!! しかもイケメンやん!!」と癖強く悔しがる姿を楽しみにしている読者も多い事でしょう。憎まれ役の亀田ですが、彼もまた作品を彩る魅力的なおじさんのひとりなのです。
フリースポーツ記者・佐古純次(初登場:コミックス12巻第85話)
最後に紹介するのは、フリースポーツ記者の佐古純次です。小手指の佐古監督の叔父であり、彼が小手指野球部を訪ねてきたことをきっかけに佐古優助を監督に迎え入れることになりました。
強面でごろつきのような雰囲気を纏った佐古。初登場時は不躾な態度で部員に悪印象を持たれてしまうものの、本当は小手指を応援したいと思って問題点を指摘しにきただけの不器用なおじさんだったのです。
佐古純次の推しポイント①:小手指野球部限界オタク
小手指の実力を強く買っている佐古。そのファンっぷりは筋金入りで、要の写真を常に持ち歩いているほどです。他メンバーの写真を持ち歩いている描写はありませんが、彼なら清峰はもちろん、藤堂や千早、山田の写真も携帯していると私は思っています。
彼は大阪陽盟の亀田とも見知った仲なのですが、亀田が要を歯牙にもかけていないことに歯がゆい思いを抱えており、早く要の存在を見せつけてやりたいと思っている様子。要の活躍を亀田が目の当たりにした時の佐古の反応も楽しみで仕方ありません。
佐古純次の推しポイント②:気遣いのできる記者
スポーツ記者として高校野球名門校にも取材に訪れる佐古。小手指に初めて訪れた際は愛が溢れるあまり不躾な態度を取ってしまいましたが、普段はとても気遣いができる記者なのです。
それがわかるのは、桐島秋斗がエースを務める氷河高校を訪れた際のこと。桐島は「貴方だけですよ 弟のことを聞いてこない記者サンは」とポツリと佐古に零します。弟とは大阪陽盟で注目されている2年生投手・桐島夏彦。桐島は自分よりも実力が上回る弟の存在にコンプレックスを抱いているのですが、多くの記者は桐島の気持ちに配慮せず弟のことを聞いてくるようです。
そんな桐島に対し佐古は「俺は桐島秋斗に会いに来たんだ 選手の家族構成にはとんと興味がなくてね」と一言。桐島はいつも通りの澄ました表情でしたが、内心とても嬉しかったのではないでしょうか。信頼される記者とはこういう人なんだろうなと思わされるエピソードです。
癖つよおじさんが彩る『忘却バッテリー』
癖が強くて魅力的な5人のおじさんをご紹介してきましたが、本作には彼ら以外にもたくさんのモブおじさんが登場します。中学野球からチェックする高校野球大好きおじさんや特定の学校や選手を推すおじさんなど、いろんな種類のおじさんが登場するのですが、みんな名前も無いのに超個性的!
アニメ第2期の制作や舞台化も決定し、注目度がさらに上がっている『忘却バッテリー』。野球に青春を捧げる爽やかな高校生たちもいいですが、そんな彼らにムンムンとした熱視線を送るおじさんたちに注目して楽しんでみてはいかがでしょうか。