「楽しさ無双」のアクション超大作!痛快フシギ世界に興奮&感動『マインクラフト/ザ・ムービー』の魅力とは?
ゲーム映画の到達点『マインクラフト/ザ・ムービー』
人気ゲームをハリウッドが映画化する――。これまでに何度も試みられてきたこの流れは、意外なほど成功例が多い。「バイオハザード」を筆頭に、「トゥームレイダー」「サイレントヒル」「ソニック」「モータルコンバット」など、シリーズ化されるほどの人気を誇った作品も次々とタイトルを挙げることができる。
もともとゲームを楽しんでいた人の期待に応えられるか。作り手はそこに留意しつつ、映画としてのエンタメ感でアップデートさせる必要もある。これがうまくハマれば、ゲームのファン、および新たな層も取り込めるわけで、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』(2023年)はそこがハイレベルで機能し、世界的メガヒットにつながった。
4月25日(金)公開の映画『マインクラフト/ザ・ムービー』は、快進撃の「マリオ」の記憶 が甦ってきそうな仕上がりだ。しかも全米興行収入は1億5700万ドル(約230億円)と、「マリオ」のオープニング成績を超える興収を記録している。
「マインクラフト」は売り上げが3億本超え(!)で、2014年には「世界で最も売れたインディーズゲーム」としてギネスで認定されたことから、「マリオ」同様、映画版に興味を持つ人の絶対数が高い。そして「マリオ」との大きな違いは、実写であることだ。
ゲーム「マインクラフト」は、プレイヤーそれぞれが目標を定められるのが特徴で、一人で何か建造物を作ったり、サバイバルのために戦ったり、他のプレイヤーとオンラインで繋がったりと、楽しみが多岐にわたる分、一本の映画として世界を完成させるのは、ハードルが高いと思われた。「マリオ」もある意味、映画化で難しい面もあっただろうが、その「マリオ」の成功によって「マインクラフト」の実写化が、自由な発想として受け入れられる素地ができたのかもしれない。
ゲーム未経験でも無問題! 凸凹チームと共に「マイクラ世界」に秒で没入
子供時代に“採掘”に夢中になり、採掘場に出入りしては追い出されていたスティーブが、会社員としての日常を送る大人になってからこっそり採掘場に忍び込んだところ、そこで光るキューブを発見。そのキューブのパワーによって、異世界へ放り込まれてしまう。
すべてが四角形でできていて、自分の発想でどんなモノでも創り上げられる世界。採掘(=Mine)し、手作り(=Craft)するというゲームの根本が冒頭で一気に伝わり、あっという間にマイクラワールドに入り込めるのが、この映画版の魅力だ。
そしてもう一人の主人公とその仲間たちが、これまた個性的で楽しい。かつてビデオゲーム界のチャンピオンという栄誉を手にしつつ、その栄光にすがっているがためにわびしい日常を送るギャレット。そんな彼の店になぜか、あのキューブが! ……という期待を外さない設定。キューブを手に入れるのが、発明好きの少年のヘンリー。その姉のナタリー、彼らに新居を世話する不動産でもあり移動動物園の園長ドーンという4人が、キューブによってマイクラワールドへ入り込んでしまう物語。
そんな個性バラバラの4人が、マイクラワールドでは先輩格のスティーブと結託し、元の世界に戻ろうと奮戦し、そこに基になったゲーム、マインクラフトの要素――溶岩チキンやアイアンゴーレム、ゾンビやスケルトンなどの敵キャラ――が、たっぷりと詰め込まれる。人間キャラ5人のアドベンチャーに、ゲームの内容が巧妙に絡んでくるので、「マインクラフト」をプレーしたことのない人にも無理のない“やさしい”設計だ。
ページ分割:これぞハリウッド! なスケール感とサービス精神
これぞハリウッド! なスケール感とサービス精神
マイクラワールドでは、キャラクターや建造物も基本は“立方体”で構成。パンダやニワトリ、ミツバチも、すべて四角。3Dブロックで構成されたバーチャル世界で、そのブロックを集め、好きなようにモノを作る「マインクラフト」を映像化した結果だが、そのバラエティ豊かな世界は観ているだけでテンションが上がる!「マリオ」の映画と同じく色づかいも超カラフルなので、有無を言わさずハッピーな気分になるのだ。特にマッチョなギャレットが身につけるピンクのジャケットと、バックの青空の組み合わせが目に鮮やか。
ハリウッド作品らしいスケール感も満点で、マイクラワールドが“無限に広がっている”と感じさせることで、どこで何が出てくるかというワクワク、ときめきも倍増する。暗黒の地下世界、さらに現実とのコントラストも、いかにも映画的だ。当然のごとく、アクション&スペクタクルの迫力は最高レベル。最初はマイクラワールドのルールに戸惑っていたギャレット、ヘンリー、ナタリー、ドーンの4人が、それぞれの特技を活かして戦いのテクニックを進化させ、ここぞという場面で全力を出すプロセスは、キャラがパワーアップしていく、あらゆるゲームに共通する感覚に似ている。
空中での大規模なチェイスが、あの『マッドマックス 怒りのデス・ロード』(2015年)の“上空版”を思わせたりと、本格アクション映画としてのサービス精神も忘れていない。
このまま「マイクラ世界」で過ごしたい! 胸に去来する喜びと映画の本質
そして映画ファンに注目してほしいのは、監督のジャレッド・ヘス。オタク風で、いじめられっ子の高校生の日常をユルいギャグも駆使しながら愛情たっぷりに描いた、2004年の『ナポレオン・ダイナマイト』(日本では当時流行していた『電車男』に便乗して『バス男』のタイトルでDVD発売し、今で言う“炎上”案件に!)が、カルト的な人気を獲得。その後、メキシコのプロレス“ルチャリブレ”を題材にした『ナチョ・リブレ 覆面の神様』(2006年)で、そのコメディセンスを最大限に発揮した。
そんなヘスにとって『マインクラフト/ザ・ムービー』はメジャースタジオで十分な製作費をかけた超大作であるのだが、独自の(いい意味での)脱力系ギャグを惜しみなく注入。『ナチョ・リブレ』でも組んだジャック・ブラック(スティーブ役)、『アクアマン』(2018年)などでアクションスターになったジェイソン・モモア(ギャレット役)も、ヘスのセンスを思い切り楽しそうに受け止めているところに、映画ファンは胸アツになるはず。
そんなノリノリの演出&演技、奇想天外なストーリーによって、登場人物たちと同じ気分で、このままマイクラワールドでの時間を延々と過ごしたいと思わせるのも、本作のマジック。映画の終盤、あるキャラは現実世界に戻ることを拒んだりするのだが、そこは『アバター』(2009年)や『未知との遭遇』(1977年)、そして同じジャック・ブラックが出ているということで『ジュマンジ』シリーズ(2017年ほか)なども思い出させるうえに、劇場が明るくなって現実の時間が戻ってきてしまう、「映画の本質」と重なったりも……。
そして何より、「自分で作って遊ぶ」という多くの人の本能的喜びが、そのまま映画になった『マインクラフト/ザ・ムービー』は、そこだけで微笑ましく、素直に喜びを共有できてしまうのだ。
『マインクラフト/ザ・ムービー』は4月25日(金)より全国公開