LAM①性癖が大きく歪んだ 『ローゼンメイデン』
Febri TALK2025.03.21 │ 13:17
LAMイラストレーター
①性癖が大きく歪んだ
『ローゼンメイデン』
クールでキャッチーながらもとことん刺激的な作風が人気を集めるイラストレーター・LAM。キャラクターデザインを中心に、各種ビジュアルワークや書籍イラストなどを手がけ、個展「千客万雷」の盛況も記憶に新しいLAMが選ぶアニメ3選。1本目は、オタク道を突き進む中学時代に出会った『ローゼンメイデン』。
取材・文/岡本大介
ローゼンメイデン
水銀燈との出会いが僕の性癖を歪ませた
――『ローゼンメイデン』(旧テレビアニメ版)は2004年放送ですが、リアルタイムで見たのですか?
LAM 中学3年生くらいの時期に見たと思うので、今考えるとリアルタイムではなく、放送から1年くらい遅れていたかもしれません。中学生になってから深夜アニメにハマっていったので、『ローゼンメイデン』もその流れで見た覚えがあります。
――最初にハマった深夜アニメというわけではないんですね。
LAM そうですね。その意味でいうと最初は『R.O.D -THE TV-』だったと思います。当時、僕は福岡県に住んでいたので、テレビで見られる深夜アニメは限られていたんです。でも、パソコンを手に入れた途端に世界が広がって、一気にオタク的なコンテンツにのめり込み、ライトノベルを読み漁ったり、声優さんのラジオを聴いたりするようになって。なので、この時期にハマったのは『ローゼンメイデン』だけじゃなくて、『灼眼のシャナ』や『ゼロの使い魔』『SoltyRei』『魔法先生ネギま! 』など、数え上げればキリがないですね。
――そんな中で、あえて『ローゼンメイデン』を選んだのはなぜですか?
LAM やっぱり水銀燈(すいぎんとう)というキャラクターとの出会いに尽きます。祖父の家に日本人形がたくさんあったこともあって、もともと人形には興味があったんです。だからアンティークドールたちが活躍するこの作品はドンピシャでした。どのドールも魅力的でしたが、水銀燈にはこれまでに感じたことのない魅力を感じてしまって。
――水銀燈のどんなところに惹かれたんですか?
LAM 目つきが悪くて、高圧的で、ちょっとSっ気がある感じというか……もうすべてですね(笑)。つり目キャラ自体は小学生の頃から大好きで、それは高橋留美子先生の影響なんですけど、水銀燈はそれに加えて気高さや神秘性、超常的な力など、さらに深いところまで刺さって、思春期だった僕はガッツリと心をつかまれました。それから現在に至るまで、女性キャラの好みはほぼ変わっていないので、言わば僕の性癖を歪ませた張本人です(笑)。似た理由で『魔法先生ネギま!』のエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルや『機動戦艦ナデシコ』のルリルリ(ホシノ・ルリ)なんかも大好きなんですけど、やはり水銀燈が「原点」にして「至高」っていう感覚なんですよ。
――人間ではなく「球体関節人形」であることもポイントが高いんですか?
LAM そうですね。サイズ感もそうですし、「非生命」というところが最高に美しいなと思います。数年前にDOLKさんから水銀燈のキャストドールが発売されて、思わず買っちゃいました。
人形なのに人間のような「実在感」
――水銀燈でとくに印象深いシーンはありますか?
LAM 原作と違って、アニメの水銀燈は腹部のパーツのない不完全なドールとして描かれていて、真紅(しんく)に「ジャンク」と言われて激昂するんです。基本的に高圧的でプライドも高いんだけど、弱さやコンプレックスをのぞかせるシーンがけっこうあって、そこが印象的です。人形だけどすごく人間っぽいし、実在感を感じられて好きですね。あとこれは当時からネタになっていましたけど、水銀燈の「乳酸菌摂(と)ってるぅ?」というセリフも覚えています。「原作でこんなこと言ってたっけ?」と思いつつ、でもなんかいいセリフだなと思って、僕も乳酸菌飲料を飲むようになりました(笑)。
――水銀燈の模写はしていたんですか?
LAM めっちゃしていました。真紅や蒼星石(そうせいせき)も好きだったので描いていましたけど、いちばんは水銀燈です。そのときは「絵が上手くなりたい」というより、仲の良かったオタク友達を驚かせたいとか、喜ばせたいという気持ちのほうが強かった気がします。当時は将来のことをあまり考えていなかったので、シンプルに好きだから描いていた、という感じでしたね。
――ちなみに当時はアナログですよね?
LAM そうです。初めてペンタブレットを使って描いたのは高校2年生のときなので、それまではノートにモノクロで描いていました。
――水銀燈の存在が今のLAMさんに与えている影響はかなり大きそうですね。
LAM 僕が今やっている「PROJECT KAGURA」というコンテンツも「人形」がモチーフになっていますし、ルーツのひとつであることは間違いないです。高飛車で、強くて、可憐で、美しくて、儚さもある水銀燈は、いまだに人生でトップ3に入る大好きなキャラクターで、多感な時期に出会えたことには本当に感謝しています。
KATARIBE Profile
LAM
イラストレーター
イラストレーター。ゲーム会社に勤務後、2018年からフリーのイラストレーターとして独立。キャラクターデザインやビジュアルワーク、書籍イラストなど国内外問わず幅広く手がける。2024から2025年にかけて東京・大阪で個展「千客万雷」を開催。
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