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【インタビュー】1月に始動したにいがたAIビジネス、AIとコンサルで地方から仕事の変革を

にいがた経済新聞

左から、にいがたAIビジネスの照山浩由氏、朝妻拓海氏、大竹崇仁氏

大竹崇仁氏は1991年生まれ。現在は五十嵐経理事務所(新潟市中央区)に勤務しつつ、行政書士としても活躍中。クライアントの資金調達とマーケティング支援に取り組んでいる

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初回掲載:2025年2月25日(再掲載:3月9日)

「我々の目的は一つのAIツールを売ることではなく、『AIを運転する技術』を教えること」──にいがたAIビジネス株式会社(新潟市中央区)の代表取締役CEO大竹崇仁氏はそう強調した。同社は2025年1月設立で、地方の中小企業向けに生成AIによる業務効率化やマーケティング支援を提供する。AI関連のビジネスが乱立するなか、同社はコンサルティングを中核に据えたモデルを目指す。

目次

○ 現場の効率化から販促まで
○ 「AIツールを売る会社」ではない
○ 全員が100%の力を出せる職場環境を
○ AIを地方から全国へ

現場の効率化から販促まで

にいがたAIビジネスが中心としているのは、中小企業向けの生成AI導入コンサルティング、「にいがたAIコミュニティ(NAC)」の運営、そして補助金や助成金などを活用した資金調達支援の3点。

第一に挙げている生成AI導入コンサルティングは、一般的に思い浮かべるような生成AIを活用した企業の業務効率化や生産性向上を目指すもの。加えて、LINEやメルマガの配信文、チラシの作成などといった販促面でもAIを導入して効率化を進める。

朝妻拓海氏。Giftation株式会社代表取締役。中小企業向け販促やマーケティング支援を専門としている。大竹氏とは中学生時代からの友人で、同氏に共鳴してにいがたAIビジネスの立ち上げに参加した

「ほとんどの同業他社は業務効率化や生産性向上が中心で、販促・マーケティングを考えているところはほとんどない」。そう話すのは、同社取締役COOの朝妻拓海氏。「だが、弊社ではそこも支援していく。弊社では中小企業をターゲットとしているが、そうした会社は業務効率化や生産性向上に限界がある。それよりも、どうやって売上拡大をしていくかが重要。『自社の商品をどう広めていきたいが、やりかたが分からない・人員がいない』という課題へ我々が入っていき、お手伝いしていきたい」。

導入の取っ掛かりは「現場ベース」を重視する。大竹氏は話す。「会社全体をどういう方向へ進めよう、という大きな話ではなく、あくまで部署レベルの困りごとからAIを導入していく。現場を知らない人へAIの使い方を説明しても、うまくはいかない。まずは目の前の困っている業務から改善して、一つを効率化できたらその周りの工程へ……やがて部署全体、会社全体へ広げていく」。

そもそも中小企業では、業種や会社によってはIT化が進んでいないことも多い。そうした場合はAIにこだわらず、その前段階のDXから携わるという。

「AIツールを売る会社」ではない

照山浩由氏。株式会社コーポレートGPT代表取締役。上場企業やベンチャー企業において、企業法務、DX推進、コーポレートガバナンスの分野で豊富な経験を持ち、現在は全国でAI関連のコミュニティ立ち上げに携わる

見てきたように、にいがたAIビジネスの最も特徴的な点は、生成AIそのものではなくコンサルティングに軸足を置いている点だ。「AIによる業務効率化」を謳う企業の多くは、基本的に自社のAIツールを販売し、その使用料を徴収するビジネスモデルである。

「同業他社は結局、ツールを売ることが第一の目的。AIを活用できる人材が社内にいればそれでいいかもしれないが、中小企業はそうもいかない」と同社取締役の照山浩由氏は喝破する。同氏は株式会社コーポレートGPT(東京都渋谷区)代表取締役も務め、全国で生成AIの導入支援に携わってきた。「我々はそれぞれの会社に合わせて、『何が課題になっていて』『どこにAIを入れ』『どのように解決していくか』という文脈でコンサルティングをしていく」。顧客の課題ベースで用途や目的別に最適なソフトを使い分ける形は、同業他社とは大きく異なる。

それを端的に表すのが、もう一つの事業であるNACの運営だ。同事業は昨年夏から県内8社を迎えてテストマーケティングを開始し、1月から本格稼働した。ここではAIについての勉強会や研修、個別相談、またコミュニティに参加する会社同士で事例共有なども行っている。企業がそれぞれAIや業務効率化についてのリテラシーを高め、最終的には自走できるところまでを目指す。

大竹氏は自社の在り方を、自動車と運転に例える。「他社は謂わば、AIツールという自動車をつくっているようなもの。一方で弊社は、教習所のように運転技術を教えることが役目。また(AIによる)結果だけではなく、それを出力するまでのプロセスが大切であり、自走してもらうところまで行かないと意味がない」(大竹氏)。

全員が100%の力を出せる職場環境を

左から、にいがたAIビジネスの照山浩由氏、朝妻拓海氏、大竹崇仁氏

にいがたAIビジネスが動き始めたのは昨年夏頃。全国でAIについてのコミュニティをつくっているコーポレートGPTの照山氏が、以前から付き合いのあった大竹氏に声をかけたのが始まりだった。

事業を始めるにあたって、大竹氏が思い出したのは以前務めたの職場の状況だった。「昔、商社でプロジェクトマネージャーとして働いていた頃、(自分たちの)チームには優秀な人が多くて、みんなが100%の力を出せたら、自ずと良い結果は出るんだろうなと考えていた」。しかし、実際の業務には苦手な仕事や雑務がつきまとう。「AIが出てき始めた時、これだ、と思った。自分の苦手な仕事はAIにまかせて、得意な仕事にフォーカスしていけば、生産性は上がるという確信を持った」。

また、「課題ベースのAI導入」というにいがたAIビジネスの在り方にも実感を込める。大竹氏は現在、新潟市内の会計事務所に務めているが、そこでAIを導入した際には苦い経験もある。「導入当初は社内botの作成を目的としていたが、結果的に現在はそれを使っていない。むしろ、AIを導入したときの経験を活かして、補助金データベースのようなものを自作して活用したりしている。当初の課題感と、AIを使えるようになってから『AIには何ができるのか』『何がしたいのか』という気づきは異なる」。だからこそ身近な課題から入り、そして結果を与えるだけではなく、AIへの理解度を高めて自走してもらうことを重視した。

AIを地方から全国へ

全国の事例を見てきた照山氏は2025年の生成AI業界について「AIのツールは更新されるし、様々な情報が出てくるのは間違いない。しかし、公に発信されているほどには(企業の業務効率化の)効果や成功事例は出ないと思う」と予測する。企業単位でも生成AIを乗りこなせていないのが現状であり、首都圏や大企業では技術を導入せずとも「まだ人員があるからなんとかなる」という状況がある。

一方で、地方の中小零細企業の状況は緊迫している。技術の導入による効率化は喫緊の課題だ。また、中小だからこそAI導入への意思決定も早い。「これまで(AIのような最新技術は)首都圏や大企業でまず普及して、そこから地方と中小企業へ落ちてきていた。しかし、これが逆転する。新潟モデルという風に、地方でこそ成功事例をつくることができるのでは」と照山氏は期待する。

にいがたAIビジネスでは、今年度中にNACの会員を100事業者まで増やす目標を立てる。一部サービスを制限した低価格版会員などで間口も広げ、様々な業種に関わって成功事例を集める。目指すは県内経済の活性、そしてその事例を全国まで広げ、日本全体の生産性向上へ繋げることだ。

「弊社のコンセプトは『あなたにしかできない仕事をしていこう』。AIを使って人それぞれが得意な仕事に集中できる環境を整え、生産性を向上させていくことで、仕事に前向きになれる社会をつくりたい」。大竹氏はそう力を込めた。

【関連リンク】
にいがたAIビジネス webサイト

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【新潟発のAI活用支援】首都圏とのネットワークやAI活用ノウハウを地方に、にいがたAIビジネス株式会社(NAB)が始動 (2025年2月7日)

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