「夏休みなんかなければいいのに」と嘆くシングルマザーの現状。海水浴どころか、こどもが貧血に
認定NPO法人キッズドアが2024年6月26日、困窮子育て家庭を対象としたアンケートの結果を発表。アンケートからわかったのは、学校がない夏休みを前にした食費と生活費やこどもたちの体験格差に関する悩み、そして物価高騰による深刻な影響でした。こうした声をふまえ、キッズドアは政府や自治体に対する緊急提言もあわせて発表しました。
夏休みを前にしたタイミングでの困窮子育て家庭を対象にしたアンケートは、2022年、2023年に続き今年で3回目。キッズドアが運営するファミリーサポートによる物資支援、情報支援、体験活動、就労支援の4つの無料支援を受けている子育て世帯から1821件の回答があり、そのうちの90%が母子世帯となっています。
「夏休み」に頭を悩ませる保護者たち
今回の調査では初めて、こどもの夏休みをどのように捉えているかという質問を実施。すると、保護者の6割が夏休みについて「今より短い方がよい」または「なくてよい」と回答し、その理由として「こどもが自宅にいることで生活費が増加する」や「給食がないことでこどもの栄養状態が不安」といったことをあげていました。
また、夏休み中のアクティビティの予定に関する質問では、「特に予定しているものはない」との回答が過半数の52%となり、海水浴や家族旅行などを予定している家庭は1割未満となっていました。さまざまな理由で夏休み中のアクティビティの予定ができないことについては、「家族旅行をした友達の話などを長期休み明けに聞き、こどもがうらやましそうにしていて格差を感じる」など、罪悪感を感じている保護者の声も目立ちます。
こどもの成長や健康にも影響
こうした苦しい経済状況に拍車をかけているのが、このところの物価高騰による影響です。昨年の同時期と比較した家計の変化として「とても厳しくなった」という回答は77%。「やや厳しくなった」も含めると、実に98%の回答者が家計の悪化を実感していることがわかります。
さらに、こどもの成長や健康に関する問題も顕在化しています。特に低所得の家庭ほど深刻な状況であることがわかり、所得300万円未満の家庭では「成長や健康状態への悪い影響は出ていない」との回答が半数を下回り、所得100万円未満の家庭になると「こどもが健康診断で栄養不良や肥満・やせ傾向を指摘された」との回答が18%にも達していました。
保護者からは「私が仕事を休むと給与が減ることを気にして、こどもが体調不良を我慢して隠すようになってしまった」、「健診でこどもの体重減少を指摘され、満足な量を食べさせてあげられず申し訳なく思っている」といった声が寄せられるなど、物価高騰の影響による深刻な状況がうかがえます。
こうした厳しい状況を打開するためにも、給与所得を目にみえる形で増やす賃上げは欠かせませんが、2023年に賃金が上昇したとの回答は18%にとどまります。また、賃上げによる手取り月収の増加額(中央値)も5000円で、賃金が上昇したと回答した人の9割は、自身の賃金上昇は物価高騰に対して十分ではないと感じているようです。
今すぐにできる支援を
この結果をうけ、キッズドアは「夏休みを迎える困窮子育て家庭に現金給付を」「困窮子育て家庭の体験格差を埋める支援を」「年収 300 万円未満の困窮子育て家庭へ緊急の支援を」「困窮子育て家庭にも賃上げを」の4項目からなる緊急提言を発表しました。
キッズドア理事長の渡辺由美子さんは、「保護者からは『こどもが貧血を起こしてしまった』という声も聞きますが、これは血となる肉や魚を買うことができないことも影響していると思われます。そうした状況に保護者からは『死にたい』『こどもと心中したい』といった切実な声も寄せられており、深刻な事案も増えています。少子化対策なども大切な政策ですが、まずは成長や健康にも影響が出ているこどもたち、そして保護者たちの支援に政府は力を入れてほしいです」と話します。
キッズドアでは、緊急提言をこども家庭庁、厚生労働省、文部科学省といった中央省庁へ提出予定。また、夏休みを前にした困窮子育て家庭向け緊急食糧支援を行うため、クラウドファンディングを実施しています。