将来 AI に奪われそうで不安・・・。自分のキャリアに未来はある?【motoさんのお悩み相談室】
ビジネスパーソンが抱える仕事やキャリアの悩みに、転職・仕事のプロがお答えする「お悩み相談室」。
今回のテーマは「将来 AI に奪われそうで不安・・・。デジタルマーケターのキャリアに未来はある?」です。昨今、どの業界でも話題にあがるAIの普及。これからの時代、本当にAIに仕事を奪われる日がやってくるのでしょうか。
今回質問にお答えいただいたのは、新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、スポットライト(現:楽天ペイメント)など7社を経験されたビジネスパーソン・motoさん。
「全員がAIに仕事を奪われるわけではない」と話すmotoさんに、デジタルマーケターが考えるべきこれからのキャリアや、AI時代に生き残れる人材になるポイントなどを伺いました。
Question
将来 AI に奪われそうで不安・・・。デジタルマーケターのキャリアに未来はある? Web広告代理店で運用コンサルタントをしています。近年のAIの発達で自動化が進み、運用力に差がなくなりつつあることを実感しています。もちろんまだまだ人が介入する余地、人がやった方がいい仕事もありますが、長い目で見ると今の広告代理店のスタイルでは厳しいと思っています。また、ワークライフバランス的にも厳しいところがあり、スキルを身につけた人から事業会社に転職またはフリーランスになるのが職場のトレンドとしてあり、自分もそろそろ転職した方が良いかもと考え始めました。運用スキルを活かせる事業会社に行くのか、20代のうちに職種を変えてキャリアチェンジした方が良いのか悩んでいます。 (広告代理店 /Webマーケティング/5年目/20代男性)
事業会社への転職で、事業を伸ばす視点とスキルを身に付けよう
今後のキャリアを考えるのであれば、今持っている運用スキルを活かせる事業会社に転職するのがおすすめかなと思います。事業会社のマーケターは、自社事業に対するインパクトを出すことが求められます。そのためどのように自社のメディアに集客するのか、ECの販売実績をどう伸ばすかなど、「どうすれば事業を伸ばすことができるか」といった視点が身に付きます。
また、これまでは広告代理店として「仕事を受注する側」だったのに対し、事業会社では「仕事を発注する側」になります。つまり、事業を伸ばすという目的のために外部に仕事を発注できるようになります。自分が対応できる範囲内で成果を上げるのではなく、外部も含めた広い選択肢の中から課題に対する打ち手を考えられるようになるため、マーケターとしてのスキルも磨かれるはずです。
このように、これまで培ってきた運用スキルに加えて、事業を伸ばす視点やそのために必要な新しいスキルが身に付く環境は非常におもしろいと思います。また、この視点やスキルを持つ人はどの企業でも重宝されます。事業会社に転職してキャリアを積むことで、将来どこに行っても活躍できる人材になれるでしょう。
1年後の今日、今と同じ状態で良いかを考えてみる
職種を変えたキャリアチェンジも検討しているようですが、個人的にはあまりおすすめしません。どうしてもやってみたい仕事があるなら別ですが、特に希望がないのであれば職種を変えるメリットはないと思います。
フリーランスへの転向も悪くありませんが、その場合は今自分が持っている運用スキルを使って仕事をすることになります。それを楽しいと感じられるのであればフリーランスも有りですし、結局は自分がどうなりたいかを基準に今後のキャリアを描くべきだと思います。
なりたい姿は別に立派なものでなくて構いません。ただ漠然と「年収を上げたい」とか「海外で働いてみたい」とかでもいいのです。そして、その漠然としたイメージを現実にするためには今何をすべきかを考えてみてください。年収は具体的にいくらあればいいのか、海外は具体的にどこの国がいいのかなど、想像を膨らませ、ではその年収になるにはどんな仕事があるのか、海外にいくためにはどんな仕事をすべきかなどをリアルに考えてみてください。
なりたい姿を考えるときは近い未来をイメージするのもポイントです。5年後や10年後では遠すぎてイメージしづらいため、まずは1年後を考えてみます。今の状態がこのまま1年続いて、来年の今日も今と同じようにWebの運用をやっているとしたらどうでしょうか。もしそれが嫌だと感じるのであれば、今から何をすれば良いのか考えてみましょう。
「AI 対 人」ではなく「AIを使える人 対 AIを使えない人」の時代
最後に、デジタルマーケターの仕事はAIに奪われるのか、について話をしたいと思います。
僕はデジタルマーケターに限らず、すべての業種において「AI 対 人間」ではなく、「AIを使える人 対 AIを使えない人」の時代が来ていると感じています。
例えば、新しくAIを導入したことにより人間の仕事が減ってしまうとなったとき。日頃から言われたことをやるだけで、自分では何も考えられない人はすぐにAIに仕事を奪われるでしょう。言われたことを指示通りにこなすのはAIの得意分野だからです。
一方で「AIの回答は一律すぎて不十分だ」と言い、どのようにAIに指示を出せば成果を最大化できるのか考えてAIを動かせる人は、今後も仕事がなくなることはありません。なぜならAIは単体では動かず、必ず人間の指示が必要だからです。
自分の思考を介在させAIを使って成果を最大化できる人なのか、ただ言われたことをやるだけの人なのかが、これからの時代の生き残りを左右するでしょう。
ちなみにAIを使う技術は転職市場において価値は高いですが、本当に大事なのはその技術を活用して転職先で成果を上げられるかどうかです。資格と一緒で、ただ持っている、使えるというだけでは意味がありません。課題に対しての打ち手としてAIを使える能力があるかどうか、そこがポイントだと考えています。
プロフィール
moto(戸塚俊介)
1987年長野県生まれ。新卒で地方ホームセンターへ入社後、マイナビやリクルート、スポットライト(現:楽天ペイメント)など7社を経験。自身の転職経験をもとにした転職ノウハウやキャリア観などの発信がSNSを中心に話題に。現在はmoto株式会社、HIRED株式会社の2社を経営。
代表著書 『転職と副業のかけ算(扶桑社)』『WORK価値ある人材こそ生き残る(日経BP)』 企業サイト moto株式会社/HIRED株式会社 X(旧Twitter) moto (戸塚俊介) ブログ 転職アンテナ