CLUTCH創刊を陰で後押しした男。100号記念に、世界的ヴィンテージディーラー・ジップを再び訪ねて。
CLUTCH Magazineは今回の号が Vol.100となった。しかし、じつは製作回数で数えると101回目。vol.1を創刊する3カ月前に、創刊準備号としてvol.0をフリーマガジンとして各所で配布していたのだ。そのvol.0のカバーに登場したのがジップ・スティーブンソン、彼が記念すべき最初のカバーモデルだったのだ。
CLUTCH創刊を陰で後押しした男。
ジップ・スティーブンソンは、ロサンゼルスに拠点に置く世界的なヴィンテージディーラーで、多方面で活躍するクリエイターでもある。彼は才能豊かな人物で、ヴィンテージスタッズワークを現代に甦らせる「HTC」や、かつてカリフォルニアにあったブーツファクトリー「SANTA ROSA BOOTS」の名を受け継いでブーツブランドを立ち上げた。そして、忘れてはならないのがDENIM DOCTORというサインを掲げて、ヴィンテージデニムのリペアも行っていたこと。当然、ヴィンテージ業界では影響力のある人物だ。
ヴィンテージ&ヘリテージスタイルの雑誌『CLUTCH Magazine』構想中にジップを訪ね、協力を仰いだ。その際に彼のアトリエで撮影したのが創刊準備号となるフリーマガジン『CLUTCH Magazine Vol.0』の表紙用写真だった。進化や変化を求める人が多い中、彼の仕事は当時からあまり変わらない。良い時もあれば良くない時もあったはず。それでも変わらずに、ヴィンテージ探しに勤しみ、スタッズワークを続けてきた。彼のそんな生き様を見習いたい。
ヴィンテージディーラーとして有能な彼は、ハリウッドセレブリティたちを顧客に持つ。また、HTCのスタッズベルトは一世を風靡し、日本やアメリカの人気ブランドとも時折コラボレーションを行っている。
DENIM DOCTORとして、ヴィンテージディーラーとして、既に業界では有名人だったジップだが、日本で彼の名が広まったのは、HTCのスタッズベルトの存在が大きい。スタッズワークはベルトに留まらず、様々なプロダクツを生み出していった。
最近、また注目度が増すHTC。数々の個性豊かなベルトを生み出しているが、デザインソースはやはりヴィンテージにある。アメリカ各地からヴィンテージのスタッズベルトを集めてきて、膨大なアーカイブを所有する。
ローズボウルフリーマーケットで戦利品のエンジニアブーツを抱えて歩くジップの姿はお馴染みの光景。レストアするものもあれば、次なる製品のデザインソースになるものもある。彼のウエアハウスには圧巻のブーツ棚が。
昨年、フルカウントとHTCがコラボレーションしたデニムジャケットは今号の表紙で彼が着用している。大柄のジップのために作られた超大型サイズなのだとか。但し、このモデル、発売からあっという間に品薄状態で既に入手困難となっているそうだ。
彼のことを「DENIM DOCTOR」と、敬意を持って呼ぶ人も少なくない。希少なヴィンテージデニムを求めて、アメリカ国内はもちろん、世界中を精力的に飛び回っている。
日本でもその価値が上昇したヴィンテージのメキシカンリングを積極的に広めたのもジップに違いない。ネイティブアメリカンからメキシカンまでアクセサリーの目利きも卓越。
厳選されたヴィンテージピースを揃えるショールーム。
彼のウショールームには大物から小物まで、膨大な数のアメリカンヴィンテージが出番を待っている。次なるムーブメントを予感させる品々である。
(出典/「CLUTCH Magazine 2025年8月号 Vol.100」)