【立ち食いそば放浪記373】JR中央線本線に隠された秘密 / 立川名物として知られる「おでんそば」は、奥地に行くと強くなる
突然だがあなたは、東京立川の名物と言われてピンと来るものはあるだろうか? 私(中澤)はおでんそばである。駅のホームにある『清流そば』と『奥多摩そば』。その全ての店で立川名物とオススメされているのがおでんそばで、駅そば好きに知られる珍メニューとなっているのだ。
SNSで「おでんそば」と検索すると食べに足を運んだショートトリップ系のポストは立川ばかり。ゆえに、おでんそばと言えば立川、立川と言えばおでんそばというイメージだった。しかし、JR中央本線で立川を越えてもっと奥に進んだところ……
山賊揚げ(税込280円)トッピングのガッツリそばが有名な店だ
・ガチ感
駅そばメニューで立川以上のガチ感を漂わせるおでんそばに出会った。立川駅そばはがんもどき、玉子、さつま揚げのどれか1種か、がんもどき+玉子の組み合わせだけど、こちらの「おでんそば(税込860円)」は……
練り物と玉子だけじゃない! 大根もこんにゃくも結び昆布もおでんの具が一通り入っていて、真のおでんそばを感じた。おまけに辛子までついてきて、もはやメインがおでんである。立川のおでんそばは四天王最弱だったのかもしれない。
・食べてみた
では味はどうなのかと言うと、そばつゆもおでんも醤油系のつゆだから特に違和感はない。違和感はないけど、練り物や大根、こんにゃくは、そばのタネとしては珍しい部類に入るので、微妙によそ者オーラは出ている。
要するに、カレーそばのように、そのストレンジャーな交流を楽しむメニューだと思う。ただ、カレーそばほどハーモニーを奏でてはいないので、やっぱり珍メニューという域は出ないかもしれない。
・個性のぶつかり合い
試しに辛子をつけてみたところ、おでんみが増して体が温まる味になった。おでんとそばがそれぞれの存在感を発揮して並列に肩を並べている。ロックバンドみたいだ。
そして、ロックバンドみたいになっている一因はおでんのガチ感だろう。各メンバーがそれぞれの強みを突き詰めることにより方向性がブレる。これはロックバンドによくあるジレンマだ。ゆえに、バンドは解散する。
・破滅に向かうおでんそば
このおでんそばは解散が近いのかもしれない。だが、20年くらいライブハウスでバンド活動を続けている私は解散も美しさの1つだと思う。バンドは解散するものであり、解散するからこそ美しいのだ。ちなみに期間限定メニューである。
破滅に向かうおでん&そば。それも上等と言わんばかりに期間限定。そんなパンクなおでんそばに出会ったのは甲府駅前にある駅そばチェーン『丸政 甲府北口店』である。
都民からすると高尾に壁があるように感じるJR中央線本線。その奥には立川名物以上のおでんそばが潜んでいた。進むとおでんそばが強くなる──。中央線本線の真実を確認し、私は新宿行きに鉄道に乗ったのであった。
・今回紹介した店舗の情報
店名 丸政 甲府北口店
住所 山梨県甲府市北口2-9-12
営業時間 7:00~19:00
定休日 無休
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.