札幌の子どもたちにはおなじみ!「おばけのマール」20周年 実在の人が登場する「発見する楽しみ」を味わって
子どもだけでなく大人も楽しめる絵本を、絵本セラピスト協会認定「大人に絵本ひろめ隊員」、そして2児の母でもある、HBCアナウンサーの堰八紗也佳(せきはち・さやか)がご紹介します。
「おばけのマール」が20周年に!
「まちのちかくのまるやまにおばけのマールがすんでいました」というフレーズから始まる絵本シリーズ、おばけのマール。
2005年12月にシリーズ第1作『おばけのマールとまるやまどうぶつえん』が刊行されてから20年となりました!
そんな節目の年に発表された新刊の舞台は、「北海道立文学館」。
特別展「おばけのマール ほんがだいすき!」も開催中です。
今回は、新刊『おばけのマールとぶんぶんぶんがくかん』と特別展の魅力をお伝えします。
おばけのマールについては絵本通信の記事でもご紹介しています。
これからの雪の北海道にピッタリの記事もありますよ。
『おばけのマールとぶんぶんぶんがくかん』(中西出版)絵・なかいれい 文・けーたろう
おばけのマールは、マールが札幌市内を中心とした身近な場所に出かけていき、素敵な出会いや体験をするお話です。
14作目となる新刊では、マールが札幌市の中島公園の一角に位置する「北海道立文学館」にお出かけ!身近な場所が色鮮やかに表現され、遊び心満載に描かれています。
道立文学館はその名のとおり、北海道出身の文学者や北海道にゆかりの深い文学者に関する文学資料を収集・展示している場所です。
しかし、“文学館に子どもが来る”というイメージはあまりありませんよね?
どうしたら子どもたちに北海道にゆかりのある文学を伝えていくことができるのか。
絵本の中には、小林多喜二『蟹工船』や有島武郎『小さき者へ』、知里幸恵『アイヌ神謡集』に出てくるフレーズが登場します。
子どもにとっては意味が理解できず、初めて出会う“オノマトペ”のように感じるかもしれません。
しかし、大きくなったときにこれらの作品に出会ったとき、「マールの絵本で見たことがある!」と気づき、文学に親しみと興味を持つきっかけになるのではないか、そんな想いが込められています。
そして、マールシリーズにはいつも「発見する楽しみ」があります。
例えば、実在する人たちを発見する楽しみ!
こちらの紳士は誰でしょう?
正解は…文学館の地下1階にあるカフェのマスター!優しい笑顔が印象的です。
では、こちらのおひげの男性は…?
正解は…文学館の工藤館長!
「ロシアンハット館長」というキャラクターで絵本の中に登場する館長が、そのまま等身大パネルになって文学館に展示されています!
ちなみに館長はロシア文学の研究者です。
他にも、文学館の職員さんや、これまでのマールシリーズで見覚えのあるキャラクターもさりげなく登場しています。何回もページをめくって、色々な“しかけ”を見つけてください。
特別展「おばけのマール ほんがだいすき!」開催中
道立文学館は開館30周年!マール誕生20周年とコラボレーションし、新作の発売と同時に特別展「おばけのマール ほんがだいすき!」が始まりました。
マールの歴史がわかる年譜や資料の展示、全シリーズの厳選された名場面の原画展示、スライドショー、クイズパネルの展示など盛りだくさん!マールファンとしては見逃せないスペシャルな展覧会となっています。
初日に訪ねたところ、作者のけーたろうさんと、イラストを担当しているなかいれいさんにもお会いすることができました。
「辛いことや苦しいことや悲しいことは生きる上でたくさんあるけれど、文学から、それらを笑顔で乗り越える術を教わっていた」という中井令さん。
サン=テグジュペリの小説『星の王子さま』に出てくる“本当に大切なものは目に見えない”という言葉が好きで、見えないものを大切に、想いを込めて描いています。
こちらの原画は、新作「おばけのマールとぶんぶんぶんがくかん」の見開き1ページ。
実は、真ん中にいる職員さんが手に持っている本の中身も、ロッカーの番号も、原画の段階では詳細に描かれているのです。
原画にじっくり目を凝らすと、色々なものが見えてくるかも!!
最後に今後の夢を聞くと、「我が子のように愛しいマールを、これからもさまざまな場所へ冒険に連れていきたい!」と教えてくれました。
2026年1月18日(日)までの開催期間中、読み聞かせやコンサートなどのイベントも予定されています。詳しくは道立文学館のホームページでご確認ください。
【取材協力】
北海道立文学館
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「連載コラム・今月の絵本通信」
文|HBCアナウンサー 堰八紗也佳
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編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は取材時(2025年11月)の情報に基づきます。