デヴィッド・リンチが死去、78歳 ─ 映画界が追悼:スティーブン・スピルバーグ、カイル・マクラクラン、ニコラス・ケイジ、ナオミ・ワッツほか
映画監督・脚本家のデヴィッド・リンチが死去した。78歳だった。
1月16日(現地時間)、リンチの家族が公式Facebookにて死去を公表。「彼の不在によって、世界には大きな穴が空いてしまいました。けれども彼が言ったように、穴ではなくドーナツを見つめてください。太陽の輝く、青空の美しい日です」とコメントを発表した。
1946年1月20日、モンタナ州ミズーラ生まれ。大学卒業後に映画製作を開始し、『イレイザーヘッド』(1976)で長編監督デビュー。「ツイン・ピークス」シリーズ(1990-1992, 2017)や『ブルーベルベット』(1986)『ワイルド・アット・ハート』(1990)『マルホランド・ドライブ』(2001)など、全作品が代表作ともいうべきキャリアを誇る。短編映画やドキュメンタリー、ミュージックビデオなども手がけたほか、アーティストとして美術・音楽活動にも取り組んだ。
必ずしも映画賞で優遇されたわけではないものの、唯一無二の映像美と謎めいた作風から、観客の間では「カルトの帝王」として熱狂的な支持を獲得。2019年にはアカデミー名誉賞を授与され、2022年にはスティーブン・スピルバーグ監督『フェイブルマンズ』でジョン・フォード役を演じた。
2024年8月には、長年にわたる喫煙のため肺気腫を患っていることをしたが、「引退するつもりはない」として生涯現役を宣言。晩年もSNSやYouTubeにて短編作品を発表し、新作のプロジェクトにも取り組んでいた。
死因は公表されていない。ただし米によると、リンチは1月7日に発生したロサンゼルスの山火事で自宅からの避難を余儀なくされ、その後、体調が悪化したという。
Megamoneymonster https://commons.wikimedia.org/wiki/File:David_Lynch_Smoking_A_Cigarette.jpg
巨匠の死去を受けて、ハリウッドの業界関係者やフィルムメイカーは相次いで追悼の意を表明した。
映画監督のロン・ハワードやジェームズ・ガン、イーライ・ロス、ジャド・アパトー、俳優のヒュー・ジャックマン、ベン・スティラー、パットン・オズワルト、カット・デニングスらのほか、ウォルト・ディズニー・カンパニーのボブ・アイガーCEOがSNSやメディアを通じてコメントを公開。全米監督協会やアメリカン・フィルム・インスティチュート(AFI)も追悼文を発表している。
『ブルーベルベット』や「ツイン・ピークス」に出演したカイル・マクラクランは、「彼は創造的な海がわき出るような、謎めいて直感的な男でした。私たちが手に入れたいと願うものに触れていたのです」と記した。
「世界が偉大なるアーティストを失った一方、私は親友を失いました。私のために未来を想像し、想像もしなかったような世界を旅させてくれた友人を。温かな笑顔とハグ、けたたましい声で、立ち上がりながら裏庭で私を迎えてくれた姿が目に浮かびます。私たちはコーヒーについて、思いがけない喜びについて、世界の美しさについて語り、笑いました。[中略]言葉や心の限界を越えて、私は彼を恋しく思います。彼を知ったことで、私の世界はより豊かになった。彼が去ったことで、私の世界は空っぽになったのです。デヴィッド、私は永遠に変わってしまったけれど、永遠にあなたが思うカイルのままだ。すべてのことに感謝します。」
『マルホランド・ドライブ』主演のナオミ・ワッツは、「彼の創造的な指導は本当に力強いものでした。彼は私を世界の地図に載せてくれたのです。10年以上オーディションに落ちながら、なんとか私が飛び込もうとしていた世界に」と感謝を綴った。同じく主演のローラ・ハリングも「あなたと出会ったすべてのアーティストと人々が死を悼むことでしょう。けれど私は、あなたが上でも映画を作り、文章を書き、絵を描き、瞑想していることを知っています」と綴った。
『ワイルド・アット・ハート』に出演したニコラス・ケイジは、「彼は類まれなる映画の天才であり、現在の、時代を問わず最も偉大なアーティストの一人です。勇敢かつ知的で、ユーモアにあふれた、型破りな人でした」と語っている。「デヴィッド・リンチの現場ほど楽しい仕事はなかった。彼は永遠に輝きつづけることでしょう」。
そして、映画監督スティーブン・スピルバーグは「私はデヴィッドの映画が大好きでした」と記した。「私がデヴィッドを知ることができたのは、『フェイブルマンズ』でジョン・フォードを演じてくれたとき。私のヒーローであるデヴィッド・リンチが、同じくヒーローのジョン・フォードを演じたのは、まるでデヴィッドの映画のワンシーンのごとくシュールでした。独創的な、唯一無二の声を失った世界は寂しくなります。時の試練に耐えてきた彼の映画は、今後もずっと残りつづけていくはずです」。
Source: Deadline(, , ), ,