「誰も信じられない」 被害女性が手口語る
今月9日午後0時45分ごろ、女性宅の固定電話が鳴った。受話器を取ると、藤沢警察署生活安全課のタカハシを名乗る若い男だった。聞けば、自宅付近で空き巣被害が多発しているとのことで、「お宅でも何か被害が出ていませんか」と尋ねられた。そうした形跡は特に見られなかったため、女性は「ないですよ」と伝えると、タカハシは「気を付けて下さいね」と言って電話を切った。
すると間もなくして、今度は同課のヨコヤマという年配男性から電話が掛かってきた。「先ほどタカハシから連絡があったと思いますが、今詐欺グループの男女を逮捕しました。犯人のアジトに、あなたの個人情報が載っている名簿が見つかりました。キャッシュカードが犯罪に使われる恐れがあるので、現在お持ちのものは停止処分して、新しくした方がいいですよ」と言われ、警察官という肩書きを完全に信じ込んでしまった女性は、すべての手続きを任せることにした。
カードすり替え
口座のある4つの銀行をヨコヤマに伝えると、そのうち1行の残高が「720円しか入っていない」と言われ、女性は動揺した。続けて「カードを停止処分しないと全部引き出されてしまう。すぐに金融庁の職員を向かわせるので、古いカードを封筒に入れておいて下さい。あと手続きに必要なので、暗証番号を教えて下さい」と畳み掛けるように言われ、女性は疑うことなく口座の暗証番号を伝えてしまった。そうこうしているうちに自宅のインターホンが鳴り、金融庁のムラタという男が現れた。「カードと印鑑を持ってきて下さい」と指示された女性はキャッシュカード計4枚を手渡し、玄関にある印鑑を指さした。するとムラタが「喉が渇いているので水を一杯もらえますか」と言うので、女性は一旦玄関を離れ、水を汲んだコップを差し出した。最後にムラタは封筒に印鑑を押し、「絶対に開けないで大切に保管しておいて下さい」という言葉を残して去った。
午後2時30分ごろ、口座のある銀行から電話があり、「口座に不審な取引があった。心当たりはないですか」と聞かれた。行員に一連の流れを説明すると、封筒の中身を確認するよう指示され、恐る恐る見てみるとカードは緑色のプラスチック板4枚にすり替えられていた。そこで女性はキャッシュカードがすり替えられたことにはじめて気づき、110番通報。現場に駆け付けた警察官に事情を話すと、水を取りに行かせている間にカードを盗んだ「キャッシュカード詐欺盗」だと教えられ、総額200万円が引き出されていることが分かった。この手口を女性は知らなかった。
優しい犯人の声
藤沢署は女性宅のインターホンに録画された犯人の写真をもとに、JR藤沢駅を張り込み。辛うじて犯人逮捕に至った。年齢は若干18歳だった。
「犯人は優しい口調で話し掛け、なかなか電話を切らせてくれない。もう誰も信じられない。同じような電話が掛かってきたら、今度は真っ先に本当の警察署に掛け直す」と今回の被害を教訓にするとした。