「シェフが主人公の映画」にハズレなし?ジメる季節を吹き飛ばす『ラ・コシーナ/厨房』ほか注目作続々公開
この初夏に観たい<シェフが主人公の映画>3選!
第74回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で上映され高い評価をうけた、ピリっと社会風刺も効いたヒューマン・エンターテインメント『ラ・コシーナ/厨房』が6月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMAほか全国公開となる。
昨年末に公開された、木村拓哉が型破りなフランス料理シェフを演じた『グランメゾン・パリ』(一部劇場で上映中)の大ヒットも記憶に新しいが、なぜか“シェフが主人公の映画”には傑作が多い。ジャンルも多彩で、『シェフ 三ツ星フードトラック始めました』や『ボイリング・ポイント/沸騰』、『レミーのおいしいレストラン』など、コメディからヒューマンドラマ、アニメまで挙げればきりがないほどだ。
そして今年の初夏、同じくシェフが主人公となる映画が相次いで公開される。戯曲の名作を原作に厨房での混乱の一日を描く『ラ・コシーナ/厨房』を筆頭に、一流シェフが出会った男性とのラブストーリー『We Live in Time この時を生きて』は感涙必至だし、思わぬ理由で熱い注目を集めている“あの俳優”が一流シェフ役として主演した配信作も、今こそ再注目したい。
ということで、梅雨の季節のジメりを吹き飛ばしてくれそうな、各作品の注目ポイントをご紹介。それぞれジャンルは違えど、豪華キャストから巧みなストーリー展開、細部までこだわった美術など見どころ満載だ。
『ラ・コシーナ/厨房』
6月13日(金)より全国公開
主人公のペドロは、スタッフの多くが移民で構成されたニューヨークの観光客向け大型レストラン「ザ・グリル」の料理人のひとり。トラブルメーカーで大人になりきれないが料理の腕は一級という魅力的な人物像だ。しかし、お店で発生した売上金紛失のトラブルに際し、普段の素行の悪さゆえ彼が真っ先に“第一容疑者”と疑われてしまい……。
大型レストランの厨房での1日を描いていく本作は、慌ただしく働く活気に満ちた厨房の雰囲気から一変、やがて予想だにしない事態へと発展していく。まぶしく先進的なニューヨークという街と、レストランでブラック労働に耐えながらアメリカン・ドリームを求めて滞在する移民たち。両者の対比がじわじわと、しかし鋭く浮き彫りになっていく、社会風刺&厨房エンターテインメントだ。
ペドロを演じたラウル・ブリオネスは、その人物像について「ペドロは社会的な闘士として戦い続ける存在です。彼は単なるキャラクターの枠に収まらず、その殻を破って本来の人間性を取り戻しつつあるのだと思います」と分析する。
原作は、イギリスの劇作家アーノルド・ウェスカーが書いた1959年初演の戯曲「調理場」。本作では舞台をニューヨークの観光客向けレストランに移し、ハリウッドからルーニー・マーラをヒロインに迎え、世界各国の映画賞を席巻した。
『ラ・コシーナ/厨房』は6月13日(金)よりヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA ほか全国公開
『We Live in Time この時を生きて』
6月6日(金)より全国公開
主人公は、新進気鋭の一流シェフであるアルムート。彼女の運転する車がトビアスをはねてしまったことが出会いとなり、ふたりは恋に落ちる。対照的な性格であるふたりは何度も危機を迎えながらも、一緒に暮らし娘が生まれ家族になる。そんな中、アルムートの余命がわずかだと知ったふたりが選んだ型破りな挑戦とは――。
限りある時間を輝かせるために、何を成し遂げようとしたか、驚くべき決意が明かされるラブストーリーの感動作。予告編には母となったアルムートがシェフとしてコンクールに出場する様子も収められており、彼女の職業人としての姿にも注目したい。
アルムート役のフローレンス・ピューと、トビアス役のアンドリュー・ガーフィールド、名実ともに実力派の2人が主演を務める。監督を『ブルックリン』のジョン・クローリーが務め、北米配給権をA24が獲得した話題作だ。
『ザ・メニュー』
各種サブスクにて配信中
超一流シェフにして、すさまじいサイコぶりを発揮する主人公のスローヴィクを演じるのは、『教皇選挙』(全国公開中)でコンクラーベを取り仕切るローレンス枢機卿を演じ、いま世界的に熱い注目を集めるレイフ・ファインズ。3度のアカデミー賞ノミネートを誇る名優の最恐演技に注目だ。
太平洋に浮かぶ孤島を訪れたカップルは、予約が取れないことで知られる有名レストランを訪れる。目当ては、有名シェフのスローヴィクが振る舞う極上のフルコースメニューだ。目にも舌にも麗しい料理に感激……と思いきや、あることをきっかけに、次第にレストランは不穏な空気に包まれていく――。三ツ星シェフが監修した誰もが虜になる、“極上の美食”と社会風刺をきかせながら五感を刺激するサスペンス。