【福山市】タートル 〜 溶岩窯で焼かれる140種以上のパン!大正8年創業の地域に根差した老舗パン屋
福山市内にはパン屋がたくさんありますよね。
どんなパン屋さんが好きでしょうか?
実は福山市には、創業100年以上の歴史があるパン屋があります。それが「焼たてのパン タートル」(以下、タートル)です。
平成30年(2018年)にはリニューアルし、白を基調とした美しい外観に生まれ変わりました。
タートルは溶岩窯を使って焼き上げた、外はサクッとして内はシットリとしたパンが特徴。
また店内には、140種以上のパンが陳列されています。早朝からタートルのパンを求めて多くのお客さんがやってくる、地域に根差したパン屋です。
老舗のパン屋・タートルの歴史やおいしさの秘密に迫っていきましょう。
タートルは大正8年創業の老舗パン屋
タートルは福山市中部・三吉町南にあるパン屋です。
創業はなんと大正8年(1919年)!
100年以上の歴史がある老舗なのです。
タートルは、平成30年(2018年)にリニューアルしました。
白い外壁が美しい、オシャレな店舗に生まれ変わっています。
朝の6時から営業をしており、早朝から続々とおいしいパンが焼かれ、陳列されていきます。
取材時にも次々とお客さんが訪れ、とてもにぎわっていました。
タートルは老若男女、幅広い世代に愛されている、地域に密着したお店です。
140種以上のパンが並ぶ店内
令和6年(令和6年)12月時点の情報。価格は消費税別・税込併記
タートルの店内には、たくさんのパンが陳列されています。
その数はなんと140種以上!
食パンや、バゲット・バタールなどのハード系といったパンもたくさんラインナップしています。
定番の菓子パンから惣菜パン、サンドイッチなどもたくさん。
カメの形をしたメロンパン「カメさんのメロンパン」は人気商品のひとつ。
カメさんのメロンパンは、とくに子供に大人気です。
「ねじりパン」も、昔からある人気のロングセラー商品。
「カレーパン」は、若者を中心に人気があります。
懐かしいコッペパンもあります。
コッペパンはクリームやジャムなど、いろいろな種類がありました。
タートルのパンは、「溶岩窯(ようがんがま)」というめずらしい窯を使って焼かれています。
この溶岩窯が、タートルのおいしさの秘訣だそうです。
溶岩窯については、インタビューで詳しく話を聞いています。
タートルの人気・おすすめのパンを紹介
たくさんあるタートルのパンのなかから、お客さんに人気の商品、お店イチオシの商品を紹介します。
「ししまる」は子供から大人まで人気!タートルの長年の看板商品
「ししまる」(税別 190円 [税込 205.2円])は、タートルを代表する人気商品。
約40年前に先代が考案した、タートルのオリジナルパンです。
「ししまる」は惣菜パンで、カレーパンと同じ揚げたパンの中に、チクワとチーズ、カレーソースが入っています。
「ししまる」の大きさは、長さ13.5センチメートル、幅5.5センチメートル、厚さ3.5センチメートルほどの大きさです。
割って見ると、チクワの穴の中にチーズとカレーソースが入っていました。
揚げられた生地はとても香ばしく、フンワリとした食感。
そして中のチクワのプニプニとした弾力ある食感と味わいとチーズの風味、カレーのスパイシーな味わいがしてきます。
カレーの風味はあまり辛くありません。
チクワとチーズとカレー、そして生地の香ばしさのハーモニーがクセになります。
さらにオーブンで温めてみると、生地の表面がサクサクとなって香ばしさが倍増するのでおすすめです。
現在でも昔を懐かしむ大人のかたが「ししまる」を買うことも多く、子供から年配まで幅広い人気のあるロングセラー商品となっています。
「クロワッサン」は発酵バターの香りとサクサク食感で店のイチオシ
「クロワッサン」(税別 200円 [税込 216円])はお店イチオシの商品で、ファンの多いパンです。
食べる前からおいしそうな香りが漂ってきます。
表面はとてもサクサクとしていて、軽やかな食感です。
食べる前に想像していたよりもサクサク感があって、驚きました。
いっぽう、中の生地はフワッとしていてシットリ。
そして発酵バターの芳醇な風味が、口の中いっぱいに広がっていきます。
軽く温めると、発酵バターの風味がよりいっそう楽しめます。
クロワッサンは2個食べたのですが、パクパクとあっという間に食べてしまい、まだまだ欲しくなりました。
「ルヴァンバタール」は溶岩窯の強みが生かされた一品
「ルヴァンバタール」(税別 300円 [税込 324円])はハード系のパンで、長時間発酵のフランスパンです。
生地にはレーズンを使った自家製の天然酵母を使い、長時間発酵させています。
ルヴァンバタールの大きさは、長さ45センチメートル、幅8センチメートル、厚さは5センチメートル。
大きいので、切り分けて食べるのがおすすめです。
ルヴァンバタールの表面はガシガシとシッカリとした歯ごたえで、香ばしさが感じられます。
いっぽう中の生地はモッチリとしていて、シットリとしていました。
噛みしめていくとじょじょにうまみが広がっていっておいしいです。
軽くオーブンで焼くと、表面はカリッとして香ばしくなります。
また生地はサクサクと軽やかな食感になり、焼く前とは違った味わいが楽しめました。
「パンドミ」は湯ごね製法でモッチリとした食感の食パン
「パンドミ」はタートルを代表する食パンです。
価格は一斤が税別 310円(税込 334.8円)、半斤は税別 155円(税込 167.4円)。
パンドミは「湯ごね製法」という最初に粉を熱湯で合わせていくつくり方をしています。
まず焼かずにそのまま食べてみました。
フンワリとした食感で、それでいてモチモチとした感じもあります。
またほどよくシットリ感もあって、風味が豊かです。
ほんのりと甘味も感じられ、そのまま何も付けずに食べても十分においしいと思いました。
オーブンで焼くと、サクッとした軽やかな食感で香ばしくなります。
焼いても香ばしさとほんのりとした甘味があり、そのままでもとてもおいしかったです。
「ベーグル」は注目の人気ベーグル店の味!(販売休止中)
令和6年(2024年)夏季よりベーグルは販売を休止しています(再開時期未定)。
「ベーグル」は、タートルのパンの中で注目の商品です。
それまでもタートルではベーグルを扱っていましたが、令和4年1月中旬からベーグルをリニューアルしました。
タートルには、ベーグルが大好きなスタッフがいます。
そのスタッフは週に1回、「リトル セトウチ」というシェアキッチンに自分で「MINORI BAGEL +(ミノリ・ベーグル・プラス)」というベーグル店を出していたほど。
そして令和4年1月より、タートルでMINORI BAGEL +のベーグルを出すことになったのです(リトル セトウチへの出店は終了)。
取材時(令和4年1月)にあったベーグルは「プレーン」「さきイカクリチ」の2種類。
ベーグルの大きさは、どちらも直径10センチメートルで厚さは4センチメートル。
掌より少しはみ出る程度の大きさで、見た目よりややズシッとした重さでした。
表面は、プニッと弾力を感じる味わいです。
そして中の生地はフカフカとした食感で、シットリしています。
噛みしめるごとに、豊かな風味が広がります。
また、温めるとフカフカ感と風味がよりいっそう楽しめました。
もうひとつの「さきいかクリチ」は、さきいかクリームチーズの略です。
名前のとおり、ベーグルの中にさきいかとクリームチーズが入っています。
さらに枝豆も入っているのです。
MINORI BAGEL +時代にも人気があった商品です。
さきいかクリチの表面には、黒コショウがまぶされています。
さきイカクリチはチーズの塩味と風味に、さきいか特有の食感と風味、枝豆のコリコリとした食感、黒コショウのピリッとした風味がベーグルの味わいと一体となり、とてもクセになります。
100年以上の長きにわたり地域に愛されているタートルのパン。
タートルを運営する有限会社 タートルの取締役社長でシェフの山本昌弘(やまもと まさひろ)さんにインタビューをしました。
タートルのシェフ・山本 昌弘さんにインタビュー
100年以上の長きにわたり地域に愛されているタートルのパン。
タートルを運営する有限会社 タートルの取締役社長でシェフの山本昌弘(やまもと まさひろ)さんに話を聞きました。
インタビューは2022年2月の初回取材時に行った内容を掲載しています。
創業は大正8年、はじめはパンの卸専業だった
──タートルの開業の経緯や歴史を教えてほしい。
山本(敬称略)──
タートルは大正8年(1919年)に、現在地で創業しました。
創業したのは私の曾祖父で、私は四代目です。
当初は「山本昌栄堂(やまもと しょうえいどう)」という名前で、パンの卸の専門でした。
近くの東中学校などの学校をはじめ、企業や病院・施設などにパンを卸していたんです。
その後昭和50年代前半に、私の父である三代目がパンの小売店も始めました。
このときに店名を「焼たてのパン タートル」としたんです。
やがて時代の変化でパンの卸業務を終え、小売専門になりました。
──店名の由来は?
山本──
当店のすぐ南にあり、かつて当店がパンを卸していた福山市立東中学校に由来しています。
東中学校の校章が、カメの甲羅に似た形をしているんです(参考:福山市立東中学校ホームページ)。
地元に愛される店を目指して、地元に由来した名前にしています。
──山本さんが店を承継した経緯は?
山本──
もともと家業を継ぐという考えはもっていませんでした。
大学時代に祖父(二代目)が亡くなったことがキッカケで、地元に根付いた長く続いている店を残していく必要性を感じるようになったんです。
そして横浜のパン屋に就職し、家業を継ぐことを目標にパンづくりの修業をしました。
約10年間横浜のパン屋で働いて、平成30年(2018年)に福山へ帰郷して家業を継ぐことにしたんです。
そのタイミングで店をリニューアルすることになり、同年9月に新装オープンしました。
ちょうど翌年で創業100周年という節目だったんですが、これは偶然ですね(笑)。
こだわりは福山周辺でもめずらしい「溶岩窯」でパンを焼くこと
──タートルのこだわりを知りたい。
山本──
当店のパンはすべて溶岩窯で焼いていることです!
溶岩窯は名前のとおり、窯の内側の全面が溶岩でできています。
おそらく福山市内のパン屋では当店しか導入していないのではないでしょうか。
広島県内でも、ごくわずかだと思います。
もともと修業先の横浜のパン屋で導入されており、溶岩窯で焼かれたパンのすばらしさを感じていました。
だから私が帰郷し店をリニューアルするタイミングで、溶岩窯を導入したんです。
──溶岩窯には、どんな特徴がある?
山本──
内側の溶岩の壁によって遠赤外線が強くなり、パンの外と内の両方同時に熱がとおります。
それによって、高温で短時間にパンが焼き上がるのです。
高温・短時間で焼けるので、パンに適度な水分が残ります。
だからパンの外側はサクッと、内側はフワッとしながらシットリとした味わいになるのが溶岩窯の特徴です。
導入当初は、同じタートルのパンでもそれまでのタートルのものとつくりかたが違うので、お客様が敬遠しないかどうか不安でした。
しかしどのお客様にも、前よりおいしくなったと言っていただけ、安心しましたね。
種類はたくさんあっても、一つひとつ思いを込めてていねいなパンづくりを
──ほかに特徴やこだわりはある?
山本──
パンの種類の多さも、当店の売りのひとつです。
全部で約140種類あります!
何かのついでにパンを買うのではなく、パンを買う目的で当店に来ていただくので、パンを選ぶ楽しさを体験してほしいと思うんです。
パン屋は子供からご年配、男性から女性まで幅広いお客様がやってきますから、好みも千差万別。
どんなお客様が来ても楽しめるよう、たくさんの種類をつくっています。
いつ来ても欲しいパンがあるとうれしいですしね。
気をつけていることは、たくさんの種類があっても、1個1個思いを込めてていねいにパンづくりをすること。
お店から見たら140種類のうちのひとつのパンですが、お客様から見たら自分が選んだ1個のパンですから。
これからも「地元の味」として地域に根差した店を長く続けていきたい
──今後の展望ややってみたいことを教えてほしい。
山本──
三吉町で100年以上の長い歴史がある当店ですから、これからも長く店を続けていくのが目標です。
親子三代で当店に来ていただいているお客様もいます。
「地元の味」として、よりいっそう地域に根差していきたいです。
今子供のお客様が大人になって、フッと「タートルのパンはおいしかったな」と思い出してもらえるような店でありたいですね。
長きにわたり地元に愛される、地域に根差したパン屋・タートル
白を基調とした美しい外観のパン屋、タートル。
なんと100年以上の歴史があるとは、驚きです。
長きにわたり地元で愛され続けているタートルですが、溶岩窯を導入したり、ベーグル好きのスタッフのベーグルを出したりと、新たな試みも取り入れて進化しています。
そして140種以上あるというたくさんの種類のパンを見ると、ワクワクしてパンを買うのが楽しいです。
ぜひタートルでたくさんのパンを選び、溶岩窯で焼かれたパンを味わってみてください。