「魚なのに水が無くても生きられる?」独特すぎる進化を遂げたサカナたち
魚心あれば水心というように、魚と水は一体のものと見られていますが、実は水がなくとも生きていけるという魚たちがいます。
「一時的な水たまり」に生きる魚
南米大陸中央部、アルゼンチンの北部にあるチャコ州。アンデス山脈の風下にあり、一年中乾いた風が吹く乾燥したこの地域で、とてもユニークな魚が発見されました。
Titanolebias calvinoiという学名がつけられたその魚は、一年に何度も干上がるような、池というよりは水たまりのような場所に棲息しています。
彼らは水がなくなると死んでしまうのですが、その前に産卵を行います。その卵は水が干上がっても死ぬことはなく、地中に埋もれて再び水がやってくるのを何年も待つことができるのだそうです。
雨が降り、水たまりが復活すると卵は孵化し、再び魚が姿を現すといいます。
「木に登る魚」とは
とはいえ、この魚は「魚の状態」では水がないと生きていくことはできません。しかし世界には、水がなくても死なない魚も存在しています。
そのひとつが「キノボリウオ」。名前の通り木に登る……とまではいきませんが、水のない地上を歩いて回ることができる不思議な魚です。
彼らは鰓の付近に「ラビリンス器官」という細かく入り組んだ組織をもちます。この器官は表面積がとても大きく、そこに通る毛細血管を使い、空気から直接酸素を取り込むことができるのです。
肺呼吸可能な魚も
キノボリウオは空気から酸素を取り込むことができますが、空気を吸い込む「空気呼吸」ができるわけではありません。肺を持たないからです。
しかし、魚の中には肺を持ち、空気呼吸そのものが可能なものもいます。それが肺魚です。
肺魚はオーストラリアやアフリカなどの乾燥した、乾季には水がなくなってしまうようなところに棲息しています。彼らは水がなくなると土中に隠れ、肺呼吸をしながら再び水が来るのを待つのです。
肺魚にはいくつかの種類があるのですが、中には「空気がないと窒息死してしまう」ものもいます。それほどに「水がないことに適応した」魚なのです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>