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【浜松市美術館の新収蔵品展「風景の旅」】浜松市天竜区ゆかりの洋画家原田京平の風景画。日本画の大家と重なるモチーフ

アットエス

静岡新聞論説委員がお届けするアートやカルチャーに関するコラム。今回は浜松市中央区の浜松市美術館で7月19日に開幕した新収蔵品展「風景の旅」を題材に。

「大ガラス絵展-波濤をこえ、ガラスにきらめくファンタジア-」開催中の浜松市美術館の小展示室で、2023年度に寄贈を受けた洋画家原田京平(1895~1936年)の作品を中心にした、風景画の小展覧会が開かれている。

豊田郡上阿多古村(現・浜松市天竜区)に生まれ、旧制浜松中(現・浜松北高)を中途退学した原田は、洋画家になるため上京。1922年には、岸田劉生や中川一政らが名を連ねる美術団体春陽会に所属した。千葉県我孫子市を拠点とし、歌人としても知られた。

「岡山縣神の嶋」(1934年)

今回展に出品されている「岡山縣神の嶋」(1934年)を見て、ちょっとした既視感があった。「岡山」「神島」というキーワードを最近どこかで見たような。

キャプションによると、この絵は第12回春陽会展に「島の村」として出品されたもの。展覧会目録には「原田和周」名で記録されている。パッキリとした色彩や筆の勢いは、どことなくセザンヌやゴッホらの「ポスト印象派」を思わせる。

そんなことを考えながら絵を眺め、もう一度キャプションに目を移すと、昭和9(1934)年に神島(現在の岡山県笠岡市)を訪れた原田が詠んだ短歌19首が、遺歌集に収録されていて、この絵はそこに添えられているとのこと。

笠岡市で気がついた。日本画家の小野竹喬(1889~1979年)の故郷ではないか。今年4~5月に静岡市美術館で回顧展が開かれていた。画家としての人生の大半を京都で過ごした竹喬だが、「島二作(早春・冬の丘)」(1916 年)という笠岡市神島を描いた作品がある。静岡市美術館で見た。

二つの作品は洋画と日本画というスタイルの違いもあり、共通点を見いだすのは難しい。斜面に緑が張り付いたような畑のありさまや、かやぶきとみられる民家の屋根の描写に似たにおいを感じるぐらいだ。

ただ、渡欧経験を踏まえて日本画に西洋絵画の技法を取り入れた竹喬が、自分と同じモチーフの洋画をどう見たかは気になる。6歳下の洋画家原田京平の名は、届いていただろうか。東西の隔たり、洋画と日本画の壁があるだけに、望み薄だとは思う。だが、そんな「IF」を持ち込みたくなるほど、原田の「神島」は精彩を放っている。

(は)

<DATA>
■浜松市美術館「風景の旅」
住所:浜松市中央区松城町100-1 
開館:午前9時半~午後5時
休館日:毎週月曜 (祝日の場合は翌日休館)
観覧料(当日):無料(同時開催の「大ガラス絵展-波濤をこえ、ガラスにきらめくファンタジア-」の入場料が必要)
会期:10月5日(日)まで

「雪」(1931年)

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