【東京街角クイズ】この写真、どこの路地裏でしょう?
問題。1996年に刊行された雑誌『散歩の達人』の創刊号は、何の特集だったでしょう?正解は「路地裏の誘惑」と「極上お花見散歩術」。はい、話の全貌がわかりましたね。今回のクイズのテーマは路地裏です。もはや説明不要、散歩の醍醐味が詰まった場所。広々とした道やきれいに整備された土地にはない、一歩入り込んだ先にある魅惑の空間。渋くていい店がひしめきあっていたり、曲がりくねった形に複雑な歴史や地理が垣間見えたりする。「路地」「路地裏」の定義は諸説あるが、今回は東京23区内の「表通りではない」「いい感じの道」すべてを出題範囲にさせてもらったため、車も通行する通りや「横丁」と呼ばれる場所も含まれる。散歩の達人を目指す者が最初に履修するであろう(?)テーマとあって難易度は易しめ。ぜひとも全問正解を目指していただきたい。【ご注意!】各出題画像のすぐ下にヒント、さらにその後矢印の下に解答・解説を記載している。勢い余って答えが見えちゃうことのないよう、ゆっくりとスクロールしながら挑戦されたし。では、行ってらっしゃい。
第1問
正解は……神保町
これはもはや第1問というよりは例題かもしれない。ご存じ、神保町は『書泉グランデ』裏の路地。名店の『ラドリオ』や『兵六』があり、月刊『散歩の達人』の神保町特集では過去2回表紙を飾った。
そして“達人”の方はすぐに気づいたかもしれないが、写真は2020年頃に撮影したものでちょっぴり古い。手前に写っている『ミロンガ』は路地を抜けた先に移転し、この場所は別の店になっている。
これ以降はすべて2024年の秋に撮影されたものなのでお見知り置きを。
第2問
ヒント
有名な「お⚫︎⚫︎横丁」の1本北。
正解は……鳥越
鳥越神社の西側にある鳥越本通り商盛会、通称「おかず横丁」。写真は、その1本北側の通りだ。このあたりの地図模様は、大名屋敷があった頃の名残や関東大震災後の区画整理がもとになった碁盤の目状。長屋や看板建築もちらほらと残っていて、かつては町工場が多かったエリアでもある。写り込んでいる判断材料も少なく、難易度が高かったかもしれない。
第3問
ヒント
近くにある場所と併せてこの街の二大小路と呼ばれることも。
正解は……大井町
大井町駅の北東側にある東小路飲食店街。大型商業施設がいくつも立ち並ぶ駅南側とは一転、その道はすれ違うのも気を遣うほどの狭さだ。戦後の闇市がそのまま取り残されたような風情で、より東にある平和小路とともに新旧の飲食店が連なっている。
写真はまだこの路地裏が本気を出す前の時間帯に撮ったものだが、陽が暮れると看板が煌々(こうこう)と光りはじめて仕事帰りの飲んべえを手招きする。
第4問
ヒント
撮影場所は橋の上。
正解は……西新宿
地下鉄西新宿五丁目駅から北に向かって、暗渠化した神田川支流が細い道となって続いている。写真は、その川跡と細い道が交差する地点で柳橋という橋の跡に立って撮っているもの。奥に見える都庁が最大のヒントであることは言わずもがな、暗渠好きならその手前の景色も含めて見覚えのある人が多かったかもしれない。少し歩けば新宿の超高層ビル群に突入するこの界隈では、こうした穏やかな路地の向こうに高層ビルが見える場所も多い。
第5問
ヒント
路地の入り口には銭湯がある。
正解は……神楽坂
神楽坂の路地といえば石畳が美しい兵庫横丁やかくれんぼ横丁が有名だが、こちらも負けず劣らず! 神楽坂通りの南側にある見番横丁と小栗横丁をつなぐこの道は、途中にクランクもあって一見しただけでは通り抜けられるのかどうか不安になる入り組みよう。映画やドラマのロケ地にもなっていて、「熱海湯階段」やら「芸者小路」やら、いくつか呼び名があるようだ。小栗横丁側の入り口脇には宮造りの銭湯『熱海湯』がある。
第6問
ヒント
そばに神社がある。
正解は……新橋
ニュー新橋ビルの裏手でSL広場からもすぐの烏森宮脇通り。写真は、烏森神社の鳥居前から西側を見た風景だ。付近はどこも酒場の看板がにぎやかな路地だが、なかでもここは割烹や小料理屋が連なるザ・新橋といった雰囲気。
烏森神社の参道も細い小径(こみち)のような趣で、繁華街のど真ん中に神社があり、ほろ酔いで歩いていたら突如鳥居が現れて身が引き締まる立地なのもなんだかおもしろい。
第7問
ヒント
近くには名曲喫茶がある。
正解は……渋谷
渋谷駅西口から道玄坂をのぼり、百軒店(ひゃっけんだな)に分け入ってすぐ左折したところの路地。完全なる裏道で、ヒントになる目印もないので推理が難しかったのではなかろうか。
この近辺の住所は道玄坂で、もう少し神泉駅側へ進むと円山町になるが、もともとは百軒店のあたり一帯も円山町だった。地形図で見てみるとこのあたりは台地の縁の岬のような場所で、ちょっとした小山にも見える。実際にこの路地を歩くと、写真左手はがくんと低くなっているのがわかる。
第8問
ヒント
狭くて急な坂を下りてきたところ。
正解は……根津
谷中・根津・千駄木、いわゆる谷根千エリアも趣ある路地裏の宝庫。なかでも根津は下町風情のある景色が多く、家や店が軒先で植物を育てる「路上園芸」がモリモリと繁る道ばかりだ。写真は三浦坂を下ったあたりの道。道の先には『ねづくりや』、付近には動物をかたどったコッペパンの店『Bonjour mojo2』や家族経営の老舗旅館『澤の屋』などお散歩スポット目白押し。全ての道をくまなく歩きいて、お気に入りの路地を探したくなるようなエリアだ。
第9問
ヒント
名物ストリートから見た景色。
正解は……月島
明治25年(1892)に「月島一号地」として造成された月島は、かつて石川島造船所(現IHI)に関連する鉄工所や町工場が数多くあり、その名残で今も格子状の町割と長屋や細い路地が残っている。タワマンがそびえ立つ印象も強いかもしれないが、漁師の島だった佃とあわせて下町の香りが残る地域だ。写真は「月島もんじゃストリート」そばの路地で、観光地然としたにぎやかな通りから入り込むと、その風情にますますシビれる。
第10問
ヒント
かつての宿場町。
正解は……北千住
北千住駅の西口は、日光街道の千住宿としてにぎわった歴史の名残りを残す、活気ある商店街や横丁が連なるエリア。なかでも「飲み屋横丁」と呼ばれる通りの近辺はよき路地の宝庫で、名酒場と名高い飲食店がひしめき合う。写真は大正時代の蔵をリノベした『喫茶 蔵』につながる通りだ。
この一角で30年ほど前から商いを続ける店の店主いわく「当時はもっと薄暗くて怪しい通りで、こんなに若い人がたくさん歩いてなかった」。昼も夜も活気あるエリアだが、うねうねと絶妙に折れ曲がった通りの様子にはディープな雰囲気も色濃く残っている。
全10問、完了。おつかれさまでした。
判断材料が極端に少ないイジワルな写真もあったが、改めて振り返ると路地裏にもそれぞれ個性があると感じたのは筆者だけだろうか。
勝手知ったる街でも、実はまだ通ったことがない道が案外あったりするもの。筆者は谷中に住んで2年目のときに、カメラマンが何気なく撮ってきてくれた路地の写真を見て「これどこ⁉」と大いに焦った経験がある。慌てて現地に赴いてみると、散々うろついていた場所なのにたまたま入ったことがない道だった。今ではすっかりお気に入りの場所だ。
今回のクイズが全然わからなかったよ!という方は、路地裏の誘惑に積極的に屈していくといいかもね。
文・撮影=中村こより
中村こより
もの書き・もの描き
1993年東京生まれ、北海道育ち。中央線沿線に憧れて三鷹で暮らした後、坂のある街に憧れて現在は谷中在住。好きなものは凸凹地形、地図、路上観察、夕立。挑戦したいことは測量と東海道踏破。