「いい国作ろう」のゴロ合わせは使えない!実は変わっている学生時代の常識15選
日常で何気なく使う言葉も、実は本来の意味とは違う捉え方をされていることがあります。書籍『けんたろ式"見るだけ"ことば雑学辞典 図解とクイズで広がる教養』(KADOKAWA)では、人気インフルエンサーけんたろさんが、そんな意外な言葉の常識やおもしろい雑学を分かりやすく解説。誤解しやすい言葉の本来の意味、知っていると一目置かれる難読漢字、普段目にしているモノの意外な正式名称などの豊富なテーマを、図を使って丁寧に紹介しています。今回はこの本の中から、言葉の知識が楽しく、そして深く広がること間違いなしの豆知識を抜粋して掲載します。
※本記事はけんたろ著の書籍『けんたろ式"見るだけ"ことば雑学辞典 図解とクイズで広がる教養』から一部抜粋・編集しました。
実は変わっている教科書の内容や表記
教科書の内容は4年に1回更新されます。新事実や解釈が採用されると学ぶ内容も変更。そのため、学生時代必死に覚えた常識が、今では「あれ?習ったことと違う...」ということが起こります。
問題:鎌倉幕府成立は西暦何年?
答え:【昔】1192年 【今】1185年
「いい国作ろう鎌倉幕府」で年号を覚えた方も多いのではないでしょうか? 実は今は「いい箱作ろう鎌倉幕府」となっています。これは何をもって鎌倉幕府成立とするかの議論があるためです。時系列で見てみると、1180年に源頼朝が鎌倉に侍所を設置。1183年に朝廷が頼朝による東国支配権を公認。1185年に壇ノ浦の戦いで平氏を滅亡し、全国に守護と地頭を設置。1192年に頼朝が征夷大将軍に任命。こう見ると解釈次第でどこでも鎌倉幕府成立と見なすことができます。実際、1180年説や1183年説もあります。現在は実質的な支配権を得て、朝廷から頼朝に権力が移行した1185年が学者の中で最有力であるため、1185年となっています。しかし、これもまた今後変わる可能性はあります。
問題:世界文化遺産にも登録されている、大阪府堺市にある国内最大規模の古墳は?
答え:【昔】仁徳(にんとく)天皇陵 【今】大仙(だいせん)陵古墳
2019年に「百舌鳥(もず)・古市古墳群- 古代日本の墳墓群」としてユネスコの世界文化遺産に登録されたかつての仁徳天皇陵ですが、現在は大仙陵古墳に変更されています。理由は簡単で、仁徳天皇が埋葬されていない可能性が出てきたためです。第16代仁徳天皇は生没年すらはっきりしておらず、また宮内庁もここ数年でようやく堺市とともに調査を行っているものの本格的な発掘は行っていないため、本当に本人を葬ったものなのか怪しいのです。そのため、この地域一帯の地名である「大仙」が使われるようになりました。
問題:江戸時代の身分制度は?
答え:【昔】士農工商 【今】記載なし
かつては職業ごとに明確な上下関係があり、武士が一番偉く、次に年貢を負担している農民、そして銭を扱う商人は一番下に置かれていたと習いました。しかし、現在はこれを記載している教科書はありません。なぜなら歴史の研究が進むにつれ、この身分制度はなかったことが明らかになったからです。武士が支配していたのは事実ですが、農工商は対等な関係であったそうです。そのため現在の教科書では、武士と百姓・町人の大きく2つに分けて説明しています。
問題:江戸時代にキリスト教信者を見つけるために行った、イエス・キリストや聖母マリアが描かれた絵を踏ませる行為を?
答え:【昔】踏絵 【今】絵踏
キリスト教の信仰を禁じられていた時代に、それに背く者を見つけるために行われたものですが、昔と今では漢字が逆転しています。これは表現方法が昔のままだとおかしくないかと議題に挙がり変更となりました。踏ませる行為は「絵踏」であり、踏まれる絵が「踏絵」であるとするもので、確かにその方がスッキリしますよね。現在はそれぞれを区別して掲載されています。
問題:日本最古の貨幣は?
答え:【昔】和同開珎(わどうかいちん) 【今】富本銭(ふほんせん)
707年に元明天皇が即位した際に、武蔵国秩父郡から朝廷に和銅(精錬を必要としない自然銅)が献上され、天皇はそれを大変喜び年号を「和銅」に改めました。その際に発行した貨幣を「和同開珎」と以前は学びました。しかし、現在は1999年に奈良・飛鳥京跡で日本最古とみられる貨幣「富本銭」が発見され、この富本銭が日本最古の貨幣と学びます。和同開珎は708年に発行されたもので、富本銭は683年頃に発行されたものとされています。『日本書紀』には683年4月に天武天皇が「今後は必ず銅銭を用いよ」との詔があったという記述があり、これが富本銭だと考えられています。ただこれがどの程度流通していたのかは定かではありません。
問題:アメリカの第16代大統領は誰?
答え:【昔】リンカーン 【今】リンカン
南北戦争での「人民の人民による人民のための政治」演説でも名高いエイブラハム・リンカーンですが、現在ではよりネイティブの発音に近い「リンカン」表記に統一されています。
問題:アメリカの第26代大統領は誰?
答え:【昔】ルーズベルト 【今】ローズベルト
日露戦争の講和条約であるポーツマス条約の仲介を行い、後にノーベル平和賞も受賞したアメリカ第26代大統領セオドア・ルーズベルトですが、こちらもリンカーン同様でネイティブの発音に近い表記となっています。同様に、世界恐慌後のアメリカでニューディール政策を行ったアメリカ第32代大統領フランクリン・ルーズベルトもローズベルト(ローズヴェルト)となっています。
問題:世界最古の人類は?
答え:【昔】アウストラロピテクス 【今】サヘラントロプス・チャデンシス
以前は約200万~100万年前に出現した人類を「アウストラロピテクス」と習いましたが、その後「アルディピテクス・ラミダス」の化石が発見され約440万年となります。そこからさらに2001年に中央アフリカのチャドで「サヘラントロプス・チャデンシス」の化石が発見され、約700~600万年前の最古の人類と現在考えられており、一部の教科書で紹介されています。愛称の「トゥーマイ猿人」と記載されていることもあります。
問題:狭い湾が複雑に入り込んだ沈水海岸は?
答え:【昔】リアス式海岸 【今】リアス海岸
リアスとはスペイン語で"rias(入り江)"を意味します。スペイン北西部のガリシア地方には入り江が多く、「リアスバハス海岸」と呼ばれているため、そこに由来して山地や丘陵が海水に削られてできた入り江が連なる地形を英語で「rias coast」と呼ぶようになりました。昭和にこの言葉が「リアス式海岸」と訳されて日本に入って来たことから定着しました。しかし、学術的には「リアス海岸」が正しいため2008年からこちらに表記変更されています。
問題:日本で工業の盛んなエリアは?
答え:【昔】四大工業地帯 【今】三大工業地帯
以前は東京・神奈川を中心とする「京浜工業地帯」、名古屋市を中心とする「中京工業地帯」、大阪・神戸市を中心とする「阪神工業地帯」、北九州市を中心とする「北九州工業地帯」の4つを「四大工業地帯」と習いました。京浜工業地帯は機械工業・化学工業・印刷業、中京工業地帯は自動車を中心とした機械工業や重化学工業、阪神工業地帯は機械工業・金属工業・化学工業・食料品製造業などさまざま、北九州工業地帯は鉄鋼業がそれぞれ盛んでしたが、現在の北九州工業地帯は石炭産業の衰退などにより生産額が減少したため、四大工業地帯からは除外され、「三大工業地帯」と習います。
問題:遺伝の2つの型は?
答え:【昔】優性遺伝/劣性遺伝 【今】顕性遺伝/潜性遺伝
遺伝子の2つの型のうち特徴が現れやすい遺伝子を優性、現れにくい遺伝子を劣性と昔は習いましたが、今はそれぞれ顕性・潜性と習います。表記変更の理由は、遺伝子に優劣があるという誤解を避けるためです。ただ個人的には漢字から意味を捉えづらくなったなと感じます。
問題:太陽系の惑星の数は?
答え:【昔】9個 【今】8個
太陽系の惑星は以前は、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星・冥王星でしたが、2006年に惑星の新定義が決まり冥王星が外されました。その定義は、(1)太陽の周りを回っていること、(2)十分重く、重力が強いため丸い形であること、(3)まわりに同じような大きさの天体が存在しないこと、です。冥王星は(3)に引っかかり、準惑星となりました。
問題:リットルの表記は?
答え:【昔】ℓ 【今】L
以前は筆記体で表記されていましたが、現在は大文字での表記に変更となっています。その理由は、国際度量衡委員会が決める国際ルールに則ったためです。ただ、このルールが少し複雑で、基本的には人名由来の単位(ワットやニュートンなど)は大文字なのですが、リットルはラテン語の"litra"という重さの単位に由来するため本来であれば小文字での表記になります。さらに国際ルールでは単位表記に筆記体を使わないことになっています。そうするとここで問題が生じます。Lの小文字lが数字の1と非常に紛らわしいということです。そのためリットルに限っては大文字表記OKということになりました。
問題:松尾芭蕉の代表作は?
答え:【昔】『奥の細道』 【今】『おくのほそ道』
江戸時代初期に俳人の松尾芭蕉が江戸から奥州・北陸を巡った紀行文を以前は「奥の細道」と漢字で表記していましたが、現在は道以外はひらがなで「おくのほそ道」と表記されています。理由は、原文の表紙に松尾芭蕉の自筆で「おくのほそ道」と書かれているため、これを正式な表記としました。
問題:英語で自己紹介する時は?
答え:【昔】My name is ○○ . 【今】I am ○○ .
英語の授業で最初に習う自己紹介ですが、教わるフレーズが変わっています。昔は「My name is ○○.」と習いましたが、現在は「I am ○○.」と教わります。もちろん「My name is ○○.」が間違っているわけではないのですが、「I am ○○.」の方がカジュアルな場面でよく使われるためです。「My name is ○○.」は仕事のプレゼンやスピーチなどフォーマルな場面でよく使用されるようです。また、姓(ラストネーム)と名(ファーストネーム)の順番も今は「I am 姓 名.」になっています。これは日本の名前の順序を生かしたためです。ただし、英語圏では「I am 名 姓.」の順が伝わりやすいのでややこしい話です。