円周角の定理を使えば集合写真で全員を納める方法もわかる⁈ “数学のお兄さん”が解説。【3か月でマスターする数学】
NHK出版刊『3か月でマスターするMOOK 数学「あ、わかった!」の爽快感をもういちど』は、“数学のお兄さん”こと横山明日希さんが日常生活に潜む「数学的要素」についてわかりやすく、かつ楽しく解説するオトナの数学読本です。
今回ご紹介するのは、「円と多角形」について。大工さんが直角の定規を持っている理由も、集合写真で全員がきちんとフレームに納まる方法も、実は「円と多角形」が関係しています。
円と多角形
円と多角形が組み合わさると何かが起こる
円には何やら不思議な性質があることは、古代から知られていました。正確な円を描くのは、それほど難しくありません。必要なのは、ひもとそれを止めるピン、筆記用具だけ。それなのに円周と直径の比すら正確に求めることは難しく、人々を悩ませてきました。
円の不思議さは、多角形と組み合わさることで、さらに深まります。円周の上に2点(A、B)を取り、さらにもう1点(P)を取り、できた角の角度を考えましょう。このもう1点が円周上のどこにあっても、その他の2点とつくる角「円周角」は一定なのです。また、点を中心に取ったときにできる「中心角」は円周角の2倍になります。これを「円周角の定理」といいますが、2点を直径の両端に取ったときには、円周角は90度になります。大工さんが使う直角に曲がった定規「曲尺(かねじゃく)」は、丸太の直径を簡単に測るために、この性質を利用しています。
ところで、図のように丸っこい多角形の掃除機や食器などを見たことはないでしょうか? この丸っこい多角形は、単なるデザインではなく、数学的にもとても興味深い性質を持っています。
どこから撮ればみんなが写る?
集合写真や学芸会などの写真は、全員がちゃんとフレームに納まる、できるだけよい位置から撮りたいものです。学芸会ともなると、親御さんが押し合いへし合いしてポジション取りをすることになりますが、「円周角の定理」を使うことでもっと平和に撮影ができるかもしれません。
まず知ってほしいのは、カメラのレンズには「画角」というものがあるということ。画角とはレンズで撮影できる範囲の角度を指し、レンズの焦点距離(レンズから撮像素子までの距離)によって変わってきます。焦点距離は、比較しやすくするため、昔のフィルムカメラで一般的な「35㎜判換算」で表示されます。およそ焦点距離が50㎜前後が画角45°、35㎜以下が画角60°以上の広角レンズ、70㎜以上が画角30°以下の望遠レンズになります。スマホの標準レンズを使うなら、画角はおよそ45°になると考えればよいでしょう。
さて、ある位置から画角45°で撮影対象全員がきっちりフレームに納まったとします。同じように、フレームに納まる位置というのは、図に示した円周上ということが円周角の定理からわかります。
撮影者が横一列に押し合いへし合いしている場合、円周上に立って撮影するよう誰かが誘導してあげれば、もっとゆったりと撮影できるのです。ぜひ試してみてください。
問題に挑戦!
星形多角形の角の和は?
図は、円周上に5つの点を打ち、1つおきに結んだものである。この図において、印をつけた5つの角の和は180°になりますが、その理由を答えよ。
解答
複雑そうな問題ですが、解く鍵となるのは「円周角の定理」です。
印をつけた5つの角というのは、それぞれ弧AB、弧BC、弧CD、弧DE、弧EAに対する円周角です。すべての弧を1つにまとめると360°の中心角に対する円周角ということがわかるでしょう。「1つの弧に対する円周角は中心角の半分の大きさ」という性質より、5つの角の和は180°になります。
横山明日希(よこやま・あすき)
数学のお兄さん。株式会社math channel代表。早稲田大学大学院数学応用数理専攻修了。公益財団法人日本数学検定協会認定幼児さんすうシニアインストラクター。日本お笑い数学協会副会長。才教学園小学校・中学校STEAM教育アドバイザー。大学生時代から老若男女問わず幅広く数学・算数の楽しさを伝える「数学のお兄さん」として活動。2017年、科学技術振興機構主催のサイエンスアゴラ賞を受賞。著書に『文系もハマる数学』(青春出版)、『10歳からのおもしろ!フェルミ推定』(くもん出版)など。NHK Eテレ「3か月でマスターする数学」講師。
『NHK 3か月でマスターするMOOK 数学「あ、わかった!」の爽快感をもういちど』は、横山明日希さんが小学生の算数から一部高校数学の内容まで幅広く、「図形」「計算」「関数」の3ジャンルに分けて解説。大人の学び直しとしてはもちろん、これから数学を学ぶ小・中・高生にも数学の魅力を伝えています。
各単元の数学の歴史や日常とのつながりなどの話から、厳選した良問、数学を身近に感じる思考法、そして手を動かして楽しむ実践シートも付いています(電子版には「実践シート」はありません)。
◆『NHK3か月でマスターするMOOK 数学 「あ、わかった!」の爽快感をもういちど』
◆著者 横山明日希
◆イラスト 雉○/Kiji-Maru Works
◆図版 坂巻治子
◆写真 岡田ナツ子
※トップ画像はイメージです。