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生活リハビリとは? 介護のプロが教える実践ポイントと効果的な取り入れ方

「みんなの介護」ニュース

内藤 かいせい

介護の現場で注目を集めている「生活リハビリ」。

「リハビリ」というと、理学療法士や作業療法士による専門的な訓練や、特別な機器を使用する、病院でのリハビリテーションをイメージする方が多いかもしれませんが、実は私たちの日常生活の中にも、効果的なリハビリの機会が数多く存在しているのです。

食事、入浴、排泄、着替えなど、毎日繰り返される基本的な生活動作の一つひとつが、実はリハビリテーションの絶好の機会となります。特に高齢者介護の現場では、できる限り自立した生活を送れるようにすることが重要な課題となっています。

今回は、生活リハビリの基本的な考え方から、具体的な実践方法、そして安全に実施するためのポイントまで、体系的にご紹介します。

生活リハビリとは?意味と特徴を解説

生活リハビリの基本的な考え方

生活リハビリとは、対象者の残存能力を正確に見極め、最大限活用する生活をすることで、「普段の生活そのものがリハビリになること」を目指す取り組みです。

日常生活上の動作すべてをリハビリと捉え、自分でできることをできる範囲で行います。

例えば、体の一部が不自由になったからと言って一日中テレビの前で座って過ごしたり、ほとんどベッドに横になって過ごしたりする生活が続くと、体の他の部分の筋力が退化したり、体力が低下していき、徐々に日常生活でできることが少なくなってしまう可能性があります。生活リハビリでは、このような状態を防ぎ、日常生活に必要な動作や身体機能を維持することを目的としているのです。

病院リハビリと生活リハビリの違い

病院でのリハビリは、理学療法士や作業療法士といった専門職が、特定の機能回復や改善を目指して集中的に訓練を行います。

一方、生活リハビリは、専門家が関わる以外の普段の生活時間にもリハビリの概念を取り入れ、トイレや入浴、食事などの日常生活動作をできるだけ自分の力で行うことを目指します。

生活リハビリを行うメリットと注意点

生活リハビリを意識した介護を行うことで、被介護者にとっては、身体機能の維持、生活動作の維持、生活意欲・尊厳の向上、そして日中活動量の増大による生活リズムの改善につながります。

また、介護者にとっては、介護負担の軽減(過剰な介護を抑制する効果)や、被介護者の的確な身体状態の把握ができるようになります。

ただし、生活リハビリを進める上では、いくつかの重要な注意点があります。

まず第一に、専門家による残存能力の適切な評価が不可欠です。この評価に基づき、専門家と連携しながら具体的な実施内容を決定していく必要があります。

次に重要なのが、環境の整備です。福祉用具や自助具を適切に活用することで、過度にマンパワーに頼ることなく、安全な生活動作を実現することができます。これにより、介護する側の負担軽減にもつながります。

また、安全面への配慮も欠かせません。特に誤嚥や転倒などの身体的危険が生じないよう、細心の注意を払う必要があります。日常生活の中でのちょっとした不注意が、重大な事故につながる可能性があることを常に意識しておきましょう。

さらに、最低限介助が必要な範囲は介護を行い、あくまで余剰な介護を減らしてその分被介護者の残存能力を活用することが生活リハビリの要点となります。そのため、「被介護者の身体機能の的確な評価」がベースとなり、それができていない場合は逆に過剰な負担を本人や家族に強いてしまう可能性があることに十分注意が必要です。

生活リハビリのポイントと注意点

生活リハビリを効果的に行う方法

生活リハビリを効果的に進めるためには、まず「できる動作を把握する」ことが重要です。そのためには専門家による適切な評価のもと、その人の残存能力を正確に把握し、できることとしていることの差を生活環境の中で埋めていきます。

例えば、入浴という一連の動作は以下のように細かく分解することができます。

浴室まで移動する
更衣(服を脱ぐ)
洗体・洗髪
シャワーや浴槽に浸かる
身体の水分を拭く
更衣(服を着る)
髪を乾かす

このように動作を細分化したうえで、それぞれの過程に対し、できる部分とサポートが必要な部分を明確にすることで、より効果的な生活リハビリが可能になります。

生活リハビリにおける福祉用具の活用

生活リハビリを安全に実施するためには、福祉用具の適切な活用が欠かせません。例えば、排泄動作の中で実施する場合、便器の周りに据え置き型の手すりを設置することで、立ち座りの動作が安全に行えるようになります。

入浴時には、洗面所への椅子の設置や浴室内の手すりの活用により、自立度を高めることができます。これらの福祉用具は、マンパワーに頼り過ぎない環境整備の重要な要素となります。

ただし、福祉用具の導入に際しては、専門家による適切な評価と指導を受けることが重要です。不適切な用具の使用は、かえって危険を招く可能性があります。

安全面での配慮と注意点

生活リハビリを実施する上で、安全面への配慮は最も重要な要素です。特に誤嚥予防、転倒予防、過度な負担の防止について、細心の注意を払う必要があります。

また、過度な負担を防ぐために、体調の日内変動には特に注意を払いましょう。朝・昼・夕と、一日の中でも体調は大きく変化することがあるため、その都度状態を観察し、活動量を調整します。必要に応じて動作の途中でも休憩を取り入れ、決して無理な継続を避けてください。

定期的なバイタルサインのチェックも重要で、疲労感や痛みの訴えがないかどうかもこまめに確認します。室温や湿度の管理も欠かせず、特に入浴時や運動時には注意が必要です。適切なタイミングでの水分補給も重要で、一日を通じて必要な水分量が確保できるよう管理します。

これらの安全面での配慮は、生活リハビリを継続的に実施するための基盤となります。一つ一つの注意点を丁寧に実施することで、より安全で効果的なリハビリ活動が可能となるのです。

生活リハビリで実践できる具体的な取り組み例

食事時の生活リハビリ実践方法

食事の際には、姿勢の維持(座る能力の維持)、箸の使用、噛む、飲み込むなどの動作を鍛えることができます。

ベッドで背もたれを上げて食事を取れるのであれば、歩行器や車椅子を使用し、食卓まで移動して食べるようにすることで、より残存機能を活かすことができます。

また、食事の際に、自助具を使ったり、座る姿勢を飲み込みがしやすいように調整しながら、できるだけ自分で食事が取れるようにすることも大切です。普段介助している食事の動作を介助なしで行う場合、飲食物をこぼしてしまったり、いつもより時間がかかったりすることも多いですが、以下のような工夫で対応することができます。

食事用エプロンを使用する
周りにあらかじめビニールを敷いておく(タオルも用意しておく)
時間の余裕を持って食事を始める

入浴の生活リハビリの進め方

入浴における生活リハビリでは、一連の動作を効果的なリハビリの機会として活用することができます。特に更衣動作は、上肢の可動域訓練や姿勢保持の練習として重要な機会となります。介護の現場では、この機会を最大限に活用することが推奨されています。

自分で立って更衣ができない場合でも、工夫次第で自立度を高めることができます。

例えば、洗面所に適切な高さの椅子を設置することで、座位での更衣が可能になります。この際、安定性の高い椅子を選び、必要に応じて手すりなども併用することで、より安全に動作を行うことができます。

また、上着を脱ぐ際は肩や腕の可動域訓練に、ズボンの着脱は体幹の前屈や骨盤の動きの訓練にもなります。

洗体動作においても、できる部分とできない部分を明確に分けることが重要です。

確かに背中を洗ったり、足先を洗ったりすることは難しい場合が多いものの、胸やふともものような手が届きやすい場所は自分で洗えることがあります。このような部分的な自立も積極的に促すことで、上肢の可動域維持や筋力維持につながります。

また、洗体の際の身体の捻りや前屈などの動作は、関節の柔軟性維持にも効果的です。

さらに、入浴自体が優れた運動効果を持っていることも知られています。

温かい湯に浸かることで体温が上昇し、それに伴って心拍数も適度に上昇します。これは軽い有酸素運動と同等の効果があるとされ、全身持久力の向上にも寄与します。

ただし、高齢者の場合は温度や時間の管理に特に注意が必要で、必ず体調を確認しながら実施することが重要です。

排泄時の生活リハビリの進め方

排泄に関する生活リハビリは、移動能力の維持・向上に役立ちます。

トイレまでの移動、便器への移乗、立ち座りなど、一連の動作には下肢筋力やバランス能力の維持に効果的な要素が多く含まれているためです。

これらの動作をより安全に行うために、福祉用具の適切な活用が欠かせません。手すりや歩行器、杖などの補助具を使用することで、自立度を保ちながら安全に移動することができます。

特に、便器の周囲に設置できる据え置き型の手すりは、立ち座りの動作を安全にサポートする重要な用具となります。これらの用具を活用しながら、できる範囲でトイレに行く習慣を維持することが推奨されます。

おむつを使用している場合でも、おむつ交換の際に体位変換を促したり、お尻を上げる動作を自分で行ってもらったりすることで、体幹筋力の維持や骨盤周りの可動性維持につながります。この際、必ず声かけを行い、本人の意思を確認しながら進めることが大切です。

また、トイレでの排泄動作自体にも重要な意味があります。

排尿や排便の際は腹圧がかかるため、やや前かがみの姿勢を維持することで行いやすくなります。この姿勢保持自体が体幹筋力の維持につながるとともに、適切な排泄姿勢を学ぶ機会にもなります。さらに、定時での排泄習慣を維持することは、生活リズムの確立にも効果的です。

移動・家事動作における実践のポイント

移動能力の維持は、生活の自立度を保つ上で非常に重要です。可能な限り自力での移動を促すことで、下肢筋力やバランス能力の維持を図ることができます。必要に応じて福祉用具を使用し、安全を確保したうえで実践してみましょう。

また、掃除や洗濯などの家事動作も、生活リハビリの重要な機会となります。

座ってできる範囲の拭き掃除や、洗濯物を畳むなど、負担が少なく安全に行える作業から始めることで、上肢機能の維持や日常生活での役割意識の向上にも繋がります。

まとめ

生活リハビリを成功させる鍵は、「できることは自分で行う」という基本的な考え方を維持しながら、安全面に十分配慮することです。そのためには、専門家による適切な評価に基づいて、個々の状況に合わせたプログラムを作成することが重要です。

また、生活リハビリは日常生活全般を通じて行われるため、介護に関わるすべての人が同じ認識を持って取り組むことが大切です。誰かひとりの認識が欠けているだけでも、重大な事故につながりかねません。

生活リハビリの実施にあたっては、デイサービスやデイケアなどの地域の介護サービスも積極的に活用することをお勧めします。これらの施設では、専門職による適切な指導のもと、より効果的な生活リハビリを行うことができます。

要介護1~5の認定を受けている方であれば、介護老人保健施設や通所リハビリテーション、デイサービス、特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、訪問介護などのサービスを利用することができます。施設によって特徴や対象となる方が異なりますので、担当のケアマネージャーに相談しながら、適切なサービスを選択することが推奨されます。

最後に重要なのは、短期的な結果にとらわれすぎないことです。生活リハビリは、日々の生活の中で継続的に行うものであり、すぐに大きな効果が表れるとは限りません。しかし、継続的な取り組みによって、身体機能の維持・向上だけでなく、生活への意欲向上や自信の回復といった精神面での効果も期待できます。

介護する側もされる側も無理なく続けられる範囲で、できることから少しずつ始めていくことが、長期的な視点での機能維持・向上につながります。専門家による定期的な評価と指導を受けながら、安全で効果的な生活リハビリを継続していきましょう。

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