出演者の85%に「実際の元収監者」を起用した理由とは?監督が明かす『シンシン/SING SING』制作秘話
『シンシン/SING SING』絶賛公開中
NYにある“シンシン刑務所”の元・収監者とオスカーノミニー俳優という異色のキャストアンサンブルが紡ぐ、感動の実話『シンシン/SING SING』が、TOHOシネマズシャンテ他にて全国順次公開中だ。
世界が喝采!実在の刑務所で生まれた感動の実話
映画『シンシン/SING SING』は、米ニューヨークに実在する最重警備のセキュリティを誇る<シンシン刑務所>で行われている収監者更生プログラムに取り組む収監者たちの、友情と再生を描いた感動の物語。主要キャストの85%以上が実際にシンシン刑務所の元収監者であり、演劇プログラムの卒業生および関係者たちで構成されている。
あのA24が全米配給権を獲得し、本年度アカデミー賞で3部門ノミネートを果たすという快挙を成し遂げた映画『シンシン/SING SING』。本作で2年連続オスカー候補となった名優コールマン・ドミンゴが主演するほか、同演劇プログラムの卒業生でもある元収監者クラレンス・マクリンが本格的に映画俳優デビューを果たし、世界各国の映画賞で助演男優賞や新人賞を獲得したことでも注目を集めている。
誰も観たことのないキャストアンサンブルが織りなす演技を越えたリアリティと、ラストに待つ大きく深い<感動>が観るものを包み込む――。このたび、そんな本作の監督を務めたグレッグ・クウェダーのインタビューが到着。実際に刑務所を訪れたエピソードからキャストとの出会い、そして映画に込めた熱い想いを語ってくれた。
「彼らは“学ぼう”と待ってくれていた」
『シンシン/SING SING』は4月11日に公開されるや、SNS上では「心で観るべき感動作」、「涙が止まらなくなってしまった」、「痛みも温もりも魂を感じる名作」と感動の声が多く寄せられている。そんな映画を9年の月日をかけて作り上げ、長編2作目にしてアカデミー賞®脚色賞にノミネートを果たしたグレッグ・クウェダー監督だ。
ドキュメンタリー制作者やプロデューサー・脚本家としても長いキャリアを持つクウェダー監督。本作を作るきっかけとなったのも、刑務所内のドキュメンタリーを撮影していた時に収監者の更生者プログラムを知ったことだと振り返る。
部屋の中で若い男性と保護犬が遊んでいるのを偶然、目にしました。収監者と犬が互いに癒しを得ている様子に心惹かれ、他にはどんなプログラムがあるんだろうと調べたところ、<RTAプログラム>を見つけました。
<RTA>を映画の次の映画の題材として決めたクウェダー監督は、そこから猛烈にリサーチを開始。自らプログラムのボランティアとしても参加するようになり、収監者たちへ映画製作を教えたこともあったという。
そこの人たちは“学ぼう”と待ってくれていたんです。好奇心に満ちて生き生きとして、人とつながりたいという期待をオープンに見せてくれて。そうした感覚や感情に直接触れ合ったことは、それまでの私たちのどんな経験とも異なるものでした。
「臆することなく自分たちの過去を共有し、誠実な瞬間に私たちを導いてくれた」
そうして、収監されている人々の本質をとらえた脚本を書きはじめたクウェダー監督。さらに、主要人物のモデルとなったジョン・“ディヴァインG”・ホイットフィールドとクラレンス・”ディヴァイン・アイ”・マクリンと出会い、すぐさま彼らに魅了された。
彼らはそれぞれ独自の魅力があって、すぐに心を打たれました。
ディヴァインG には強さと集中力があります。自分の人生を一秒たりとも無駄にしないタイプの人です。クラレンスには滲み出るカリスマ性と、苦労して教訓を得た人生からの深淵な知恵があります。
ふたりともとてもオープンで、臆することなく自分たちの過去を私たちに共有してくれて、誠実な瞬間に私たちを導いてくれたんです。
さらにクウェダー監督は、舞台俳優として名を馳せ、高校で演劇指導をした経験もあるコールマン・ドミンゴを主人公ディヴァインG役に、ドミンゴのプライベートでも親友であり刑務所などで演劇のワークショップを行っていたショーン・サン・ホセをディヴァインGの親友マイク・マイク役に、長年刑務所のボランティア活動を行い演劇指導も行っていたポール・レイシーを演出家ブレント・ビュエル役に抜擢するなど、演劇に造詣の深いキャストを集めた。
また、本作のキャストの85%以上は元シンシン刑務所の実際の収監者たちで、<RTAプログラム>の経験者たちがそれぞれ本人役を演じている。
それは最初からの展望でした。この作品には数名はプロの俳優がほしかったのですが、キャストの大半は実際のプログラムの卒業生である必要がありました。その点について、私たちには自信がありました。才能ある人々がそこにいると分かっていたからです。
<RTAプログラム>の経験者がもつ実力と演劇愛へのただならぬ信頼を語るクウェダー監督。実際に映画を観た人からも「元収監者たちが本人役を演じていることに驚いた」、「演技初心者とは思えない深い演技が素晴らしい」と、彼らの演技に対して称賛の声が届いている。
グレッグ・クウェダー監督が多くの時間と対話を費やし、各々のプロセスを信頼してリアリティを追求して完成した映画『シンシン/SING SING』。人権などないような扱いを受ける収監者たちを一人の人間として捉え、彼らの心の内を見つめ続けた監督の実直な想いを画面いっぱいに浴びてほしい。
『シンシン/SING SING』はTOHOシネマズシャンテほか全国順次公開中