大迫力の観光放水 「黒部ダム」 電気バスで向かう”天空の絶景”への乗り物探訪から歴史・ダムカレーまで見どころ【完全ガイド】
毎秒10トン以上の水が、地響きと共に純白の水煙を上げる。目の前に広がるのは、北アルプスの大自然に抱かれた日本最大のアーチ式ダム「黒部ダム」の圧巻の姿。中部山岳国立公園を流れる黒部川の最上流部に建設された「黒部ダム」は、日本最大級のダムとしてその名は広く知られているものの「まだ行ったことがない」という人も多いのではないでしょうか。かつて「世紀の難工事」と呼ばれたこの巨大建造物は、今や多くの観光客を魅了する絶景スポットとなっています。
今回は、黒部ダムの歴史や見どころから、多彩な乗り物を乗り継ぐアクセス方法、大迫力の観光放水を120%楽しむためのベストシーズン、ご当地グルメまでを紹介します!
「世紀の難工事」黒部ダムの歴史
黒部ダムは、戦後の経済復興にともなう関西の深刻な電力不足解消を目的に建設されたダムです。1956年8月に黒部峡谷で着工。1963年の竣工まで7年間の月日と513億円(現在の幣価値で1兆円超え)の総工費、延べ1,000万人の人手を投入して完成しました。
くろよん(黒部ダムと黒部川第四発電所の総称)建設で最大の難所となったのが、大破砕帯(地下水を溜め込んだもろい地層)との遭遇。軟弱な地盤で摂氏4度の冷たい地下水と土砂が大量に噴き出すなか、昼夜を問わぬ掘削工事懸命が続けられました。困難を極めたことから「世紀の大工事」とも呼ばれています。
【参考】未公開エリアの見学も!「黒部ダムで自然の恵みを五感で体験する1日ツアー(アサヒ飲料×かんでんエルファーム×関西電力)」レポート
未公開エリアの見学も!「黒部ダムで自然の恵みを五感で体験する1日ツアー(アサヒ飲料×かんでんエルファーム×関西電力)」レポート
黒部ダムのベストシーズンは?
中部山岳国立公園内にある黒部ダムは、四季折々でさまざまな表情を見ることができます。観光期間は、4月15日から11月30日で、5月下旬頃までであれば残雪を、雪解け後は新緑を、9月中旬から10月下旬頃には紅葉を楽しめます。
なかでも多くの観光客が訪れるのが、観光放水期間である6月26日から10月15日の期間。毎秒10トン以上の水が放水される様子は圧巻のひとこと。水しぶきや豪快な音を感じながら、黒部ダムを眺めることができます。
黒部ダムのアクセス
東京都内から黒部ダムに向かう場合、JR東京駅から北陸新幹線で長野駅へ行き、特急バスで扇沢駅へ向かうルートが最も短時間でアクセスできます。
長野駅ルート
松本駅ルート
電車の旅を楽しむなら、JR新宿駅から特急あずさで松本駅に行き、松本駅と新潟県の糸魚川駅を結ぶ大糸線に乗り換えて信濃大町駅へ。ここから路線バスで扇沢駅へ向かうルートもおすすめです。
また、1日1本の運行ですが、大糸線に直通する8:00新宿駅発の特急あずさ(白馬行き)に乗車すれば、乗り換えなしで信濃大町駅まで行くことが可能です。
扇沢駅から黒部ダム駅は電気バスで移動!
長野ルートと松本ルートのいずれで行く場合も、扇沢駅から電気バスに乗り換えて、黒部ダム駅へ移動します。
移動手段は2018年11月30日まで、54年間もの長きにわたり「トロリーバス」が担っていましたが、2019年からは車載パンタグラフ方式で超急速充電を行う「電気バス」に切り替わりました。どちらも、CO2を排出しない環境に優しい乗り物であるとともに「完全無事故」のバトンも受け継いでいます。
扇沢駅~黒部ダム駅間の大部分(約5.4km)を占めているのが、関電トンネル。平均10度、最大13度の急勾配で、夏でも気温は10度前後となっています。道中には長さ80メートルの破砕帯(割れた岩のなかに地下水を含んだ地層)があり、青い照明で照らされている様子を車窓から観ることができるほか、「貫通点」では電気バスとすれ違う体験も。あっという間の16分です。
黒部ダム駅に到着したら、左手の階段を60段下りると「ダムえん堤」へ、右手の階段を220段上ると、黒部ダムを一望できる「ダム展望台」へ行くことができます。
足を延ばして乗り物を満喫! 立山黒部アルペンルート
時間に余裕があれば、富山県と長野県を結ぶ世界有数の山岳観光ルート「立山黒部アルペンルート」を横断して黒部ダムに向かうルートもおすすめです。
電鉄富山駅から富山地方鉄道で約1時間の立山駅からスタートし、「立山ケーブルカー」で美女平へ。「高原バス」で火山湖のみくりが池などがある室堂に出ることができます。「立山トンネル電気バス」で大観峰へ移動したら「立山ロープウェイ」で黒部平へ。「黒部ケーブルカー」で黒部湖駅まで行き、約15分歩けば黒部ダムに到着します。
【参考】トロリーバスと電気バスの新旧共演! 立山黒部アルペンルート「のりものデイズ」夏篇・秋篇を開催
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黒部ダムの3つのビュースポット
1.ダム展望台
前述の通り、黒部ダム駅に到着したら、「ダム堰堤(えんてい)」ルートか「展望台」ルートのどちらかに進むことになります。2つのコースも外で繋がっているため、自由に行き来できます。まずは展望台を紹介しましょう。
黒部ダム駅で降りて右側に歩き、220段の階段を上がった先には「ダム展望台」があります。標高1,508メートルと最も高い位置から黒部ダムを一望でき、立山連峰をはじめとする北アルプスの大パノラマも楽しめます。
2.放水観覧ステージ
ダム展望台から他のビューポイントに行く際は、コンクリートの壁に沿って設けられた外階段を下りましょう。「放水観覧ステージ」は外にせり出す踊り場のような形になっていて、堰堤と同じくらいの高さから観光放水を眺めることができます。
3.レインボーテラス
さらに階段を降りると「レインボーテラス」が見えてきます。観光放水と同じくらいの高さにあり、最も放水に近づけるスポットです。虹を見たければ、ここでチャンスを待ちましょう。
新展望広場 特設会場
ダム堰堤もチェック!
黒部ダム駅から展望台方面と反対の道を進むと、堰堤に出ることができます。堰堤の高さは186メートルで日本一! 長さは492メートルで、総貯水量は約2億平方メートル以上! ひと目見れば、スケールの大きさを実感できるでしょう。
ご当地グルメ「ダムカレー」とは? お土産もチェック!
食事をするなら「黒部ダムレストハウス」へ。その名の通り、ダム湖をモチーフにした名物「黒部ダムカレー」(1,600円)を楽しみましょう。ほうれん草でエメラルドグリーンの湖面を表現したカレールーはなかなかの辛口で、大人向けの味でした。中辛の「アーチダムカレー」(1,300円)や、甘口の「お子様ダムカレー」(1,300円)もあり、好みの味を選べます。
黒部ダムでしか買えないオリジナルグッズをお土産に
黒部ダムレストハウス1階の売店には、ここでしか買うことのできないお土産がずらりと並んでいます。黄色いヘルメットがデザインされたお菓子やグッズ、黒部ダムカレーグッズなど、旅の思い出になること間違いなしです!
アクティブ派なら、遊歩道の散策もおすすめ
黒部湖沿いには整備された湖畔遊歩道があり、高低差が少ないため、子ども連れでも気軽にトレッキングを楽しめます。
ブナやダケカンバの林など緑あふれた道を歩き、森林浴を満喫しましょう。展望休憩所(東屋)が見えたら折り返し地点。トレッキングコース最大の見どころ、巨大クロベをじっくりと鑑賞してから戻りましょう。
黒部ダム観光の所要時間は1時間程度が目安ですが、余裕をもって2~3時間程度見ておけば、ダムカレーなど食事を味わったり、周辺を散策したり、より黒部ダムの魅力に触れることができそうです。是非一度、足を運んでみてはいかがでしょうか。
※本記事の掲載内容は執筆時点の情報に基づき作成しています。最新情報は公式サイトなどでご確認ください。
文/注釈のない写真:斎藤若菜
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