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舞台『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花戯曲~』開幕、遮那王と知盛の宿命が動き出す【ゲネプロレポート】

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舞台『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花戯曲~』

舞台『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花戯曲~』が11月15日(土)、東京・飛行船シアターにて開幕した。原作はIDEA FACTORY(オトメイト)×RED Entertainmenの恋愛アドベンチャーゲーム『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花夢想~』。

遮那王役を演じる川崎愛香里のほか、平賀勇成、栗原航大、永島龍之介、小沼将大、大海将一郎、松本ひなた らが出演。さらに荒一陽、杉咲真広、白石康介、平岡映美が脇を固める。同タイトル初の舞台化となった本作のゲネプロの様子をお届けする。

知らぬうちに背負っていた宿命に飲み込まれるのか、それとも抗い新たな道を切り拓くのか。刀を握り戦うたくましいヒロインの成長と決断、そして大切な人たちとの絆に胸打たれる作品に仕上がっていた。

時代は平治の乱で源氏が敗れてから15年後。後の源義経となる遮那王は、鞍馬寺にて静かに幼馴染の春玄(大海将一郎)と日々、鍛錬に励んでいた。ところがある日、平教経(永島龍之介)と出会ったことをきっかけに、僧兵・武蔵坊弁慶役(小沼将大)が遮那王の従者となり、そして平清盛の長男である平知盛(平賀勇成)と出会いを果たす。遮那王の戦う姿を見た知盛は、遮那王に興味を抱き――。

遮那王は男として振る舞うが、実は女性というのが本作の見どころの一つ。作中でもっとも多くの殺陣をこなしていたのが、遮那王役の川崎だろう。腕の立つ武将として噂が立つほどの遮那王を、男性キャストに混ざりながらも見劣りせぬアクションで好演。細かな所作にも、男として生きてきた強さと覚悟を滲ませた。遮那王は新たな出会いの中で、葛藤を抱いていくことになる。それでも挫けず常に前を向き、立ち上がろうとする遮那王の芯が、川崎のまっすぐな視線から伝わってきた。

本作は原作の知盛ルートを描く。知盛を演じる平賀は、序盤から終盤にかけての表情の移り変わりが見事だった。序盤では、自分を慕う弟の平重衡(松本ひなた)や身内への態度から、決して冷たい人間ではないことは伝わってくるが、どこか達観した雰囲気が漂う人物像を立ち上げる。そんな知盛が、遮那王と出会い、次第に纏う空気が変わっていく。心の内を射抜くような瞳の奥に宿る感情が、興味や好奇心から明確な想いへと変化していく瞬間をお見逃しなく。

知盛は平家の陣営と行動を共にすることが多い。弟・重衡を演じる松本は、大好きなお兄ちゃんとその他に向ける言動のギャップに注目を。知盛の従弟にあたる平教経役を演じるのは永島龍之介。血気盛んな立ち居振る舞いで、平家の場面にぐっと躍動感をもたらしていた。また、平家紅一点の平徳子役を演じるのは平岡映美。物語のクライマックスを支えた、終盤での鬼気迫る熱演には鳥肌が立つほどだった。

対する源氏も2.5次元作品を中心に活躍する実力派キャストが集結。遮那王の幼馴染の春玄を演じる大海は、友愛と慈愛に満ちた瞳で遮那王を見つめていたのが印象的。同じく遮那王のそばに控える武蔵坊弁慶を演じるのは小沼。2人が遮那王の“一番”を巡って小競り合いをしたり、遮那王の秘密を守ろうと奮闘したりする姿は微笑ましく、戦の気運高まる緊張感ある作中において、ふっと肩の力が抜ける瞬間を作りだしていた。

さらに、佐藤継信役の荒一陽と佐藤忠信役の杉咲真広、佐々木高綱役の白石康介が加わることで、物語に軽妙さと勢いが生まれていた点も特筆しておきたい。猪突猛進な忠信と、それを制御する冷静な継信、一気に相手との距離感を詰める高綱と、三者三様の個性が物語を軽やかに動かしていた。

遮那王の兄・源頼朝役を演じたのは栗原。要所で登場しては威厳たっぷりな芝居で存在感を示した。彼も原作では攻略キャラクターの1人。表情を変えぬ彼は、どんな素顔を持つのか。本作では多くが語られないキャラクターだっただけに、静かな佇まいの裏にある素顔への興味が高まった。

ゲネプロでは恋愛ENDが上演された後、分岐後の悲恋ENDも上演された。まったく違った余韻を楽しめるうえ、撮影可能シーンの演出も異なる。両ルートの観劇をおすすめしたい。

シンプルなセットによって、キャラクターの魅力がより引き立っていた本作。武将として刀を振るうかっこいいヒロイン遮那王、そして彼女と“ある宿命”に生きる知盛はどんな結末をたどるのか。劇場で見届けてほしい。舞台『ビルシャナ戦姫 ~源平飛花戯曲~』は11月15日(土)から24日(月・祝)まで上演。

取材・文=双海しお

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