県高校総体 バレーボール男子 仲間との絆で栄冠をつかんだ大分南 【大分県】
大分県高校総体 バレーボール
6月2日 サイクルショップコダマ大洲アリーナ
男子決勝
大分南2(25-20、20-25、25-15)1大分工業
県高校総体のバレーボール男子決勝は、昨年と同じ大分南と大分工業が対戦した。フルセットにもつれ込む激戦の末、大分南が大分工業を下し、2年ぶり4回目の頂点に立った。
宿命のライバル対決は第1セットから互いに火花を散らした。均衡が崩れたのは中盤。高さとパワーに勝る大分南が主導権を握り、セットを先取した。続く第2セット、大分南は序盤こそリードを奪ったもののサーブミスやイージーミスが続き、徐々にリズムを崩す「負けパターン」に。流れを取り戻すことができないまま連続得点を許し、セットを落とした。
運命を決める第3セットは、試合前にあらゆる展開を想定していた選手たちに動揺はなかった。「想定内だから大丈夫。これまでやってきたことに自信を持とう」。互いに声を掛け合い、安定したプレーで再び流れを引き寄せると、粘る大分工業を突き放した。柿原茂徳監督はサーブレシーブなど課題を挙げながらも「3年生はプレッシャーもあったと思う。その中で結果を残せたのは大きい」と評価した。
決戦の舞台では、キャプテンであり、エースとしてチームをけん引した井手平夏和(なお、3年)と並び、ひときわ存在感を放ったのが宮永晃宏(3年)。真面目すぎるゆえにプレッシャーに弱い部分があったが、ブレーン(メンタル)トレーニングを経て覚醒。殻を破り、得点源として堂々の活躍を見せた。試合後には「プラス思考で臨めば自分は伸びると信じていた。まずは楽しもうと決めて試合に入った。プレッシャーに打ち勝てたのが一番の収穫」と語った宮永。全国ではさらに成長した姿を見せてくれるに違いない。
一方、決勝では本来の力を出しきれなかった井手平も「全国での目標はベスト4。みんな同じ方向を向いているが、全国で勝つには自分たちの甘いところをなくし、さらに努力を重ねる必要がある。個人としては気持ち的に攻め切れない弱さが出た。もっと点数が取れるエースになりたい」と前を向き、全国での飛躍を誓った。
攻守で勝利に貢献した宮永晃宏
コートの外にもう一つのドラマがあった。3年の久下慶也の引退だ。久下はこれまでレギュラーとして出場したことはない。1年時は応援席で見守り、2年時はマネージャーとしてチームを支えた。そして最後となった今大会。再び選手登録され、大好きな仲間と同じ舞台に立った。応援席からは「慶也!慶也!」の大声援。井手平や宮永ら苦楽を共にしてきた仲間も「劣勢になっても慶也のために絶対優勝しよう」「絶対胴上げして送り出そう」と気合を入れた。いつにも増して気持ちが一つになった。
試合後、宣言通り宙を舞った久下。「選手として活躍できたわけではない。でも仲間の想いや声援を聞いて逃げ出さないでよかったと思った。勝てたことはもちろん、みんなの笑顔を見られたことが本当に幸せでうれしい。これからも心は一緒にいる」と目に涙を浮かべながらも、悔いのない顔で語った。
消防士という夢を追いかけるために一足早くチームを去るが、その心は離れることはない。全国高校総体ではメンバー全員、久下の思いも背負い戦い抜く覚悟だ。
今大会で部活を引退する久下慶也(5番)
(甲斐理恵)