SCANDAL 結成20周年を見据えた新たなチャレンジ、新作EP『LOVE, SPARK, JOY!』に込めた想い、モード変化の理由とは
楽しくはじける明るいSCANDALが久しぶりに戻ってきた。来年に迎える結成20周年を見据えて、2025年は年開けからNEWモードで活動を展開中。お正月からリスナーをワクワクさせた3カ月連続の新曲リリース、それらをまとめたNEW EP『LOVE, SPARK, JOY!』にはカバーとして「Oh, Pretty Woman」を収録。この新作を掲げて全国13都市14公演を巡るツアーは、バンド初となるホールとライブハウスを組み合わせたデュアルツアーに挑戦し、さらにこのツアーでは好きな会場、好きな場所でSCANDALを楽しんでもらうために様々な券種を発売するという新しい試みにもトライする。SCANDALにいった何があったのか。このモード変化について、メンバー4人にいろいろ話を聞いた。
――最新EP『LOVE, SPARK, JOY!』では久々に楽しくはじける明るいSCANDALが戻ってきたと感じます。この変化は、アルバム『MIRROR』(2022年1月)、『LUMINOUS』(2024年3月)の制作の流れがあったからだと感じています。なので、まずこの2枚のアルバムがSCANDALにとってどんな存在だったのかを改めて聞かせてもらえますか?
HARUNA(Vo&Gt):『MIRROR』がコロナ禍に作った作品で、わりとバンドとして曲作りに苦戦することが多かったんですけど、そういう時期を経て、『LUMINOUS』はSCANDALとして新たな曲作りの仕方をしたりして。そんななかでも光を見つけて、より明るい気持ちで制作に取り組めた作品でした。あと、一人の女性としても、しっかりとそのときの気持ちを作品に落とし込むということがバンドを長く続けていくためには大事なんだなって。そこを知れた作品でしたね。個人的には、歌に関して『LUMINOUS』のときは自分のなかで迷いも感じたんですよね。いろんなジャンル、いろんな曲調のものが『LUMINOUS』で出てきたので、そこに対してネガティブな気持ちではなく、もっと自分は歌でチャレンジできるところがあるんだなっていう、意欲みたいなものが高まった作品でもありました。
RINA(Dr&Vo):『MIRROR』はその期間を閉じ込めたような楽曲ばかりが並んでるなと、いま聴き直しても思います。制作がコロナ禍で、状況的に大変だった時期なんですよ。ライブもいろいろ制限されて自由に音楽活動ができないっていう状況のなか、作品を制作するというのは初めてだったので。こんなにもライブとかお客さんと会うことが制作のエネルギー源になっていたんだなというのをすごく実感しました。ライブのために新曲を作って、みんなの笑顔を想像しながら音楽に変換してたんだなって思いましたね。それができない窮屈さだったり、どうしようもないやりきれない気持ちをそのまま歌詞やサウンドにしたりというトライができたので、あの期間がなかったらできなかった作品だなと、いまは思います。『LUMINOUS』はそういう暗闇から抜け出したいっていう気持ちがすごくあった時期に制作したアルバムなので、次に向かう出口、入り口を探してるような気持ちで制作した思い出があります。だから『LUMINOUS』を作っているときも悩みゼロ、完全に晴れきってるという気分ではなくて、そういう場所に行くために、自分たちがそのときにできる明るい表現を一生懸命探していたようなイメージですね。それが今回のEPで、やっと新しい世界を見つけたなという感覚なんです。だから、ちゃんと一枚ずつ前進してきたなって思います。
TOMOMI(Ba&Vo):『MIRROR』は2人も言ってた通り、コロナ禍での制作で。その直前に行なっていたツアーがコロナの影響で中止になったり、そういうのがあったなかで『MIRROR』というアルバムを完成させたので、やっぱり明るい気持ちではなかったんですよ。この先どういうふうに音楽業界が変わっていくのかもまだ見えてない状況だったから、無責任に“未来はある”みたいなことも言えないし。ライブがなかったから“みんな”に向けてでもないし。この状況でどんな風にエネルギーを発信したらいいのか。そもそも何を表現するべきなのかっていうのが分からなくて。じゃあその分からないままを作品にするのがいいんじゃないか、いまの自分たちはそれしか表現方法がないよねっていうことで『MIRROR』ができたんです。で、その次のアルバム『LUMINOUS』は私の中では繋がってるような感覚で。この先、自分たちが進んでいく先が真っ暗だとしても、自ら発光していれば大丈夫だよねっていう願いを込めて、アルバムに『LUMINOUS』というタイトルをつけたんですね。だから『MIRROR』の前から『LUMINOUS』を作るまでは、自分たちでもどうなるのか分からないという不安定な中にいたんだと思います。その前まではできるだけ明るい自分たちでいたいという思いもあったし、実際SCANDALにはそれが似合ってた。
――そうですね。そこが『MIRROR』以降大きく変わった訳ですよね。
TOMOMI:ああいう不安定な時期や私たちも年齢を重ねたからこそ、痛みとか苦しみも表現していいんだなと思えるようになった。この作品たちは2作とも、表現に大きな変化があった時期だったなと思います。
MAMI(Gt&Vo):『MIRROR』は出し切ったアルバムで、『LUMINOUS』はやり切ったアルバムだと思ってて。みんなが言ってるみたいに、世界的にライブができなくなって、自分たちが活動する場所が制限されて、どうしたらいいのか分からない状況で。そんな状況だから曲もできないしってなったんだけど、なんとかしなきゃって。そうやって自分たちを奮い立たせて、絞り出して曲を作ったっていう感覚があって。だから、もうその時点で、自分の中のインプットは空っぽだったんです。なので、次に『LUMINOUS』作るってなっても、どうやっても自分から新しいものが出てこなくて、過去のボイスメモとかめっちゃあさって。これだったらいまの自分たちの気分に合ってるかもって思えるものをなんとか選んで。それは、自分のなかの最後の一滴みたいなものを絞って、出し切ったような感覚だったんです、本当に。だから、この2枚を作った自分を褒めてあげたいっていう感じの2作品ですね。頑張ったなって、本当に思います。
――SCANDALの歴史の中でも、めちゃくちゃ踏ん張って作った2作。
MAMI:そうですね。個人的には。
――そうしてこの2作のアルバムを経て今回のEP『LOVE, SPARK, JOY!』。EPを出す前に、1月から3ヵ月連続リリースというのを軽やかにはじめた訳ですけど、この狙いは?
RINA:来年でバンドが20周年なんですけど、ミーティングのなかでもその話がちらほら飛び交うようになったとき、20周年に向かって楽しいことを積み上げていって、いい自分たちでその日を迎えたいなっていう思いがみんなにあったんです。それで、なんかワクワクするようなリリースの仕方、いつもとは違う新鮮な楽しみをお届けできるスタイルはないかなって探したときに、毎月リリースがある、みたいなのをお正月からやっちゃおうっていうアイデアが出て。みんなのなかで「それいいね!」ってなったから、レーベルにもそのことを話したら、レーベルのスタッフは私たちが制作でとことん苦しんでいたのをそばで見てたから「自分たちからこういうのはどう? とは言えなかったけど、今回メンバーからこういうことをやりたいと言ってくれたのがなによりも嬉しい」と言ってくれて。私、それがすごく心に刺さって嬉しかったんですよ。だから、なおさらこれはやろうと思って。そこからいろいろ話し合って。まず、制作で悩んで苦しんで音楽をなんとか頑張って生み出すっていうところからいったん離れようってなったんです。
――前作、前々作のような制作はやめようと。
RINA:はい。それで、誰かのアイデアを取り入れていいから、とにかく音楽を、バンドを楽しみながら作りたいよねってところに行き着いたんです。さっきお話を聞いてもらったように、2枚のアルバムの制作期間は結構大変だったんですけど、と同時に「2枚ともいいアルバムを作れたよね。もう十分頑張ったよね」と自分たちを認めることができた。
――踏ん張って、頑張ったよね、私たち、って。
RINA:そう。だから、苦しむばっかりじゃなくて、誰かのエッセンスをもらって、遊ぶようにもう1回バンドをやりたいねっていう気持ちがすごく強くなったんですよね。長くやってると、バンドがどんどん大切になっていくからこそ「SCANDALは手を抜けない」、「1回でも失敗は許されない」みたいな気持ちになるんです。だから、誰かに何かを「お任せします」みたいなのが、何に対してもできなくなるんですよ。
――全部自分たちの発信じゃなきゃダメ、みたいな感じで。
RINA:そうです。すごく自分たちで責任をもって音楽をやってるし、せっかくバンドなんだからこの4人で完結させたいよねっていうのがずっとあったから。初期の頃、いろんな方に楽曲提供してもらっていて、そこで「本当なら自分たちでできたらいいのにな」って思ってたから、その経験も影響していると思うんですけど。せっかくできるようになったんだから全部自分たちで頑張ろうよ、みたいなのでずっとやってきてたんですよ、これまでは。だけど、どっちもできるのが自分たちの良さだよねと思えるようになって。全員が作詞・作曲・ボーカル、すべてができるようになったいま、もう1回ワクワクする人と曲を作るのは、過去にやってたやり方とは違うだろうから新しいトライになるなと思えたので、今作では自分たちはすごく前向きな気持ちで作家さんとコミュニケーションをとりながら作業しました。今回書いてくれた方は2人とも初期のSCANDALにたくさん曲を書いてくれた人たちなので、久々に再開してすごく楽しく制作ができて生まれた曲たちなんです。
HARUNA:これまでも、例えば2023年にギネス世界記録を取るっていうこととかも、自分たちで決めてやってきて。そうやって自分たちは自分たちでいいんだって認めるポイントを、これまでいろいろ積み上げてきたから、「ここはもう楽しいことやろうよ」って自然と思えたんです。自分たちって、バンド活動はこのSCANDALしかやってないから。
RINA:人生すべてがSCANDALですから。
――ここまで頑張ってきたんだから、シンプルに楽しいことやろうよ、と自然と思えたと。
HARUNA:はい、そうですね。
TOMOMI:それで『LUMINOUS』で、友達と一緒に曲を作るとかやってみたら、それが単純に楽しくて。それを聴いてくれたファンの反応もすごくよかったんです。自分たちは勝手に「自分たちは自分たちで曲を作らなきゃ」っていう決まりみたいなのを知らない間にいっぱい作ってて。
――そういう決め事があったんですか?
TOMOMI:あったっていうか、作れるようになったなら作り続けないとって思っていたんです、バンドだから。それより前は、歌詞は自分たちで書いてたけど、曲を提供してもらうのが当たり前だったから「バンドじゃないでしょ」って言われることとかもあったし。
――そうなんですか?
TOMOMIO:はい。年齢的にも幼かったので、その言葉に傷ついて、トラウマみたいになってた時期が長くあったんです。
――ああ~。だから「作れるなら作り続けなないと」という思いによけいになっていたと。
TOMOMI:はい。それで、知らないうちにその「作らなきゃ」というのにがんじがらめになってたんだと思うんです。そういうときに、友達とやってみたら「自分たちが演奏したらSCANDALになる」っていう自信がついたというか。
――『LUMINOUS』でのトライがそこに繋がっていった訳ですね。
TOMOMI:はい。「自分たち以外のエッセンスが入ったとしても自分たちだから」って。自分たちのサウンドに自信が持てるようになった。だから「もう大丈夫、やるなら楽しい方がいいじゃん」って。それで、20周年を迎えるにあたって、今一度SCANDALの初期を形成してくれた人たちと一緒にやってみよう、と。自分たちのなかで自分たちを盛り上げるプロジェクトが始まったんです。
――自分たちで自分たちを盛り上げるプロジェクト、というのがいいですね。なんか、楽しそう!
TOMOMI:はい。それぐらい肩の力を抜いて、20周年、できるだけ明るく楽しく迎えたいなという願いでもあります。
――SCANDALはそんなに肩に力が入るぐらい気を抜くことなく、気持ちが張り詰めた状態でずっとずっとやってきてたってことですよね?
MAMI:はい。
TOMOMI:いまも頑張ってるんですけどね。でも、バンドとはそういうものだと思ってずっと活動してきたから。改めて今思えば、っていうことですね。
――なんか沁みますね、発言が。
RINA:歴史がありますから。長いことやってきたなと思います。人生の中でSCANDALをやってるほうが長いですから。でも、こうして続けられているのも、本当に聴いてくれてる人たちがいるからだから。コロナ禍にも思いましたけど、だから自分たちは頑張ることが当たり前だし、一生懸命頑張ることが楽しいんですよ。だけど、人間だから疲れちゃった、みたいなところもあったんでしょうね。
――『MIRROR』、『LUMINOUS』の頃は。
RINA:そうそう。だから、エネルギーチャージする期間もあっていいよね、という感覚もあったんだと思います。
――それが今回だ!
MAMI:はい。だから、私は今回この作家陣と一緒にやるってなったとき、めっちゃ楽になりました。救世主みたいな感じで「引き受けてくれてありがとうございます!」って。作家さんたちには逆に、「一緒にやれるのが嬉しい」と言ってくれたのも、私達は嬉しかったし。本当に救世主だった。あのまま作詞作曲の作業を自分たちでやらなきゃいけない、これをこの先何年も続けていかなきゃいけないってなったら、私は無理だって思ってたので。
――えっ!
MAMI:そうですよ。だから『LUMINOUS』を出した時点で「私はもう書けません」って言ってたんです。「もう無いです」って。なので、今回、こうして自分たちが楽曲提供してもらってた頃の人たちとまたできるっていうのはSCANDALの強みだと思いました。
――無理して書かなくてもこの手が使えるじゃん、私たちって。
MAMI:そうそう。だから、原点回帰のような感覚もありつつ、でも、作家陣の方々には「いまのSCANDALに曲を書くとしたらどんな曲を書いてもらえますか?」ということも話したので、原点回帰だけではない新しさも入れてもらって。なによりも、人に作ってもらうと勉強になることがめっちゃあるんですよ。自分たちじゃ絶対に作れない曲が出てくるのも楽しみだし。だから、どんな曲を書いてくれるんだろう?って、めっちゃワクワクしながら待ってた記憶があります。
――作家さんに曲を頼んだことで、MAMIさん自身の気持ちは楽になりましたか?
MAMI:めっちゃ楽になりました。出てきた曲も全然違うアイデアで、もうやっぱ「さすがだな」、「お手上げです」って感じでした。師匠たちは凄かったです(笑)。そこでまた勉強させてもらえてる気持ちになってるから、それが新しいインプットになればいいなって思ってます。
――では、そこで誕生した曲を3ヵ月連続でリリースしていくというアイデアに続いて、この3作のミュージックビデオを同じ場所で撮るというアイデアは?
RINA:最初いろんな話があったんですけど、3ヵ月連続リリースという楽しい企画性を伝えるためには、ビデオやアートワークすべて関連するような見せ方をしたいなと思ったので、アートワークも連続性があるものに、ということでお願いして。ミュージックビデオについてもそういう話をしていたら、じゃあ同じ衣装、同じシチュエーションのなかで、自分たちの表現を変えてったりして、違う曲の見せ方をしていくのもいいかもね、ということになりました。今回初めての監督さんにお願いしたのもあって、どれも新鮮な気持ちでワクワクしながら撮影に取り組めました。
――同じ白いホリゾントのスタジオというシチュエーションだから、1日で3曲分撮影したのかなと思ったんですが。
RINA:正解です。そういうのも初めてで。
――大変だったんじゃないですか?
TOMOMI:全然、思ったより早かったです! 丸1日かかるかなって思ってたけど、1曲につき多分2~3時間とかで、めっちゃスムーズに進んで。
RINA:健康的な撮影だったよね?
HARUNA:うん。監督がよかった。
RINA:初めてだったけど相性バッチリだった。
TOMOMI:今回なんかね、ファンの人たちのなかには「懐かしい」って言ってくれたりする人もいて。それは、初期に支えてくれてた作家さんたちとやってるからっていうのもあるけど、実はこの3ヵ月連続リリースって、私たちがインディーズの頃にやってたんですよ。しかもその頃のミュージックビデオも、同じ白ホリのスタジオのなかで、自分たちがただただ演奏するというものだったんです。
――そんな繋がりがあるとは知りませんでした。
TOMOMI:それを「懐かしい」と思ってくれているファンは、きっと私たちと同じ年月を過ごしてきてくれてるのかなって思いました。
――ファンにも歴史あり、というのを感じるエピソードですね。それではここからは収録曲について1曲ごとにお話を聞いていきたいと思います。1曲目の「Terra Boy」のタイトルにはどんな意味が?
RINA:意味とかないんです。この曲は(笑)。でも、意味のない曲を自分たちで作るのって、めちゃくちゃ難しいことだから。
――え! そうなんですか?
RINA:はい。何10時間もかけて1曲を作っていくと、どんどん思いもこもっていくし、言葉も意味がついてくるんです。どんなに遊んでる曲がやりたいと思って、それを狙って書こうと思っても、自分たちじゃ難しかったんです。とくに、責任感が。
HARUNA:強いタイプなんです、4人とも。それぞれ。
TOMOMI:だから、バンドに向けての曲を書いちゃう、書きがちなんです。そうやってきてたから、そういうのじゃなくて、なんでもない曲。別に歌詞はあるけど、意味はない、ぐらいのもの。そういうのが、いまの自分たちには足りてなかったから、そういう曲が欲しいっていう発注の仕方をしたんです。
――SCANDALは責任感に加え、自己分析能力も凄いんですね。
RINA:みんな、ずっとSCANDALのことを考えてますから。ホントに。だから、そんな自分たちにとっては「Terra Boy」のこの遊びの効いたサビとか最高でした。本当にいま欲しかった曲だなって感じで、みんなで「これいいね!」ってなって。「これは1曲目だね」っていうところまで意見が揃ってた。4人ともこういう気分で2025年をはじめたかったんだなって思いました。
――なるほど! いい話だ。
RINA:クレジットはヒデ(田中秀典)さんの名前だけになってますけど、めちゃくちゃ話し合いをしたし、電話もメールもいっぱいして、細かいところまでつめて整えていきました。例えば、歌詞の《茶沢通り》って、最初は違う名前だったんですけど、「もっとフィットする通りがあると思うんだ」って話をして。とくに、2番のAはめちゃくちゃ変わりました。だから、楽しいものを5人で一緒に作ったという感覚なんですよ。遊びが効いてるし、書いてもらってるけど、ちゃんと4人の、SCANDALの曲だっていう感覚がある。
――SCANDALらしさがはじけたこの曲には、サビにキャッチーな振り付けもついています。あれはみんなで考えたんですか?
HARUKA:監督が考えてくれました。
――嘘でしょ!?
RINA:ホントです(笑)。監督、めっちゃ若い男性ですよ。まだ20代で。それで、監督が考えたものを撮影日当日に見せてもらったら、それがめっちゃ可愛くて(笑)。
TOMOMI:当日振り入れしてやりました。だから、間違ってるシーンも入ってる(笑)。でも、それぐらいの感じがいいねって言って。
――これ、ライブではお客さんもやったほうがいいんですよね?
TOMOMI:うん。やってもいいし、やんなくてもいい。自由に。
――では2曲目の「どうかしてるって」は?
TOMOMI:この曲もヒデさんなんですけど。これも、自分たちでは書けないような、無責任に楽しく明るい曲を、と言ってお願いしたら、まさにという曲が上がってきました。ただ、だいぶ演奏が難しくなってて。
MAMI:そこはアレンジしてもらった川口(圭太)さんのせい(笑)。
TOMOMI:初期からずっとお世話になってるんですけど、どんどん私たちに求める技術が高くなってきてて。
RINA:でも、それがカッコいいんだよなぁ~。
TOMOMI:そう! このアレンジでやんないと曲にハマらないよねっていうぐらい、完璧なアレンジをしてくれるんですよ。それが、自分たちもかなり成長してないと追いつけないクオリティーだから、そういう部分で「どうかしてるって」の演奏はだいぶ難しかった。でも、めっちゃ楽しかったです。勉強になりました。
――ホーンは最初から入ってたんですか?
TOMOMI:はい。でも、入り方が初期の曲とはまた違ったので、同じ人とやっても全然違うものができるんだなと思いました。
RINA:歌詞もヒデさんがフルで書いてきてくれたんですけど、それがちょっと乙女で、甘い世界観だったんですよ。レーベルのスタッフとかは「このままでも十分だよ」って言ってたんですけど、これは多分メンバーにしか分からない感覚で「もうちょっと頑張った方がいいな」って自分は思ったので。自分たちのリアリティー、もうみんな自立して、カッコよく軽やかに生きてる、そのニュアンスをどうしても入れたいなと思ったから、私も頭からフルで歌詞を書かせてもらったんです。で、その歌詞を2人で見て、2人の強いパーツを合体させて作ったんです。そういう作業も久々すぎて超楽しかったし、私が書いた歌詞を見て、ヒデさんが「こんなの書けるようになったんだね」って言ってくれたのも泣きそうになるぐらい嬉しかったです。なんか、創作を一緒にやってるっていう幸福感があって、すっごくいい時間でした。するっと聴くとラブソングにも聞こえるんですけど、バンドの曲になってるというのが私的にはいい塩梅で。これはヒデさんと共作したからこそ、そういう仕上がりになっているんです。《あの日よりたしかな手触りで 届くと思うんだ》という一節があるんですけど、そこは、ものすっごくいまのバンドの本音が出てる気がしてて。それを4人で演奏して、ハル(HARUNA)が歌ってくれてることが、めっちゃ幸せすぎて好きな曲ですね。
――MVではこの曲、クラップを入れてましたよね?
TOMOMI:全曲同じシチュエーションだし、同じ演奏シーンだから、曲ごとにキャッチーな部分があったらいいなと思って。この曲のクラップはサウンドのなかでも抜けて聞こえる場所だから、画でも見せられたらいいなと思って「手とかどうですか?」って言ったら採用してくれたんです(笑)。
RINA:TOMOMIがアイデアを出してくれて、監督がそれを盛り込んでくれた。あれも可愛くて大正解だった。
――それでは3曲目の「Soundly」。これはバンドのことを歌った曲ですよね?
RINA:はい。田鹿(佑一)さんと制作前に5人で話をしたあと、『MIRROR』のドキュメンタリーの映像(『SCANDAL”Documentary film MIRROR“』)」を渡して見てもらって。仕上がってきたのがこれだったんです。だから、バンドのいいときも大変なときも見て知ってくれた上で、こういうことを歌ったらいいんじゃないかって書いてくれたから、なんかすごくグッときちゃって。めちゃくちゃ素敵な曲に仕上がりました。それこそ、ここまでの道のりがなかったら、これは歌えなかったかもしれないなって思います。
――知ってるとよけいに沁みてくる曲ですよね。
RINA:「Soundly」というタイトルは、耳馴染みのない言葉だと思うんですけど、1曲通して聴いてもらうと、これになった理由が分かってもらえると思うんです。コーラスで《今しかできないsoundに~》っていうところがあるんですけど、すごい歌詞だなと思って。自分だったら書けないようなワードで。そこをくみ取って書いてくれたので、気持ちがスッキリしました。ただ、歌詞の表記に関しては、漢字をひらがなにしたりとか、よりシリアスに、より大人っぽくなる表記に変えて、全体を引き締めました。ちょっと細かすぎて申し訳なかったんですけど。歌詞の見た目って、めっちゃ大事だから、提供してもらったとは言え、そこまで詰めて作業してよかったなと思ってます。
――この曲のMAMIさんのギターがいいんですよ!
MAMI:これもめっちゃムズいんです。難しくて難しくて。ずっとハイポジでフレーズを弾き続けるみたいな感じは、いままであんまりなくて。これも私的には「修行になります」って感じでした。
――そうして、4曲目が初のカバー「Oh, Pretty Woman」。
RINA:最高でした。めっちゃ可愛くできた!
MAMI:楽しかった!
TOMOMI:これ、インディーズのときにカバーっていうか、コピーしてたんですよ。当時、木村カエラちゃんがカバーしてて。「タイムマシンにお願い」もそうだけど、当時はカエラちゃんの曲をよくコピーしてたんですね、私たち。
――「Oh, Pretty Woman」をやってたのは知らなかったです。
HARUNA:ライブではやってないんですよ。
TOMOMI:自分たちがスタジオで練習してただけで、ストリートでもやったことはなかったんです。
HARUNA:最後まで完成できなくて。
TOMOMI:1コーラスぐらいまでやって諦めた。
HARUKA:挫折した曲です。
TOMOMI:めっちゃ簡単そうに聞こえて、意外と動きが複雑だったので1コーラスで諦めてたものが、今回19年越しにやっとフルコーラスでできた。しかも、コピーじゃなくてカバーで。ちゃんと自分たちのニュアンスを入れて、カラーを組み込んで仕上げることができたのでよかったです。
――オリジナル曲ではなくカバーを入れた理由は?
RINA:EPになったときのバランスで、オリジナル3曲が原点回帰とアップデートみたいなテーマでまとまってるなと思ったので、だったら「Oh, Pretty Woman」がめっちゃハマるんじゃないか?っていうのがみんなで一致したので入れました。
――そうして、このEP盤をひっさげて全国13都市14公演のツアー『SCANDAL TOUR 2025「LOVE, SPEAK, JOY!」』が始まります。こちらはどんなツアーにしたいと考えてますか?
RINA:超ハッピーな楽しいツアーにします。いいムードを全国にお届けして、元気の出るツアーにしたいですね。今回、小さいライブハウスとホールがあって、会場も遊びが効いてるから、1本のツアーの中でいろんな見せ方ができるんじゃないかと思ってます。
HARUNA:お客さんがすごく幅広くなったのと、コロナ禍以降、ライブを観る環境も変化して。自分たちの年齢が上がってくるのとともに、2階席のほうが観やすいとか、ライブハウスでも座って観たいいよね、という気持ちも分かるから。そういうことも考えて、今回、会場によってチケットの券種をいろいろ分けて販売するんです。そういう新しい試みにも挑戦するツアーなんです。
RINA:ライブハウスを指定席でとか、チケット券種をいろいろ作って、というのは初めてなので、これがうまくいったら、観に来てくれる人もさらに増えて、ライブに行くというハードルも下がるのかなと。もっとみんなが自由気ままに、気楽にライブに行ける環境をツアーで作りたいなって思っているんです。
TOMOMI:そもそもホールとライブハウスが混ざってるツアーは初めてやるんです、私たち。自分たちのライブって、Zeppみたいなホールは2階の椅子席から売り切れるんですよ。一緒に年齢を重ねてきた方々や、お子さんと一緒に来てくれる人は椅子がある方が安心だったりするので。そうなると、ライブハウスでギューッてなっちゃうのはちょっとな、ってなっちゃう。でも、そういう風なところで楽しみたい人もいるのも分かってるから、どっちの人も来られる環境を作りたくて、今回いろんな券種を考えました。詳しいことはSNSとかで見てほしいんですけど、ホールを選んだら椅子が自動的につくし、ライブハウスでも、後ろの方に段差をつけて席を置いたり。そういうやり方で、自由に会場、場所、席も選べるようにしたので、自分が1番楽しめるなっていうチケットを選んで、楽しんでもらいたいなと思ってます!
取材・文=東條祥恵 撮影=菊池貴裕