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『ボニー&クライド』開幕、柿澤勇人×海乃美月「発するエネルギー量は一緒」の伝説的ギャング・カップルーーオフィシャルインタビュー到着

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『ボニー&クライド』

3月10日(月)に東京・シアタークリエにて開幕したミュージカル『ボニー&クライド』。クライドとボニーを演じる柿澤勇人、海乃美月へのオフィシャルインタビューが到着したので紹介する。

世界恐慌下の1930年代アメリカで、銀行強盗や殺人を繰り返したクライド・バロウとボニー・パーカーの疾走感溢れる物語を、フランク・ワイルドホーンのジャジーかつポップな音楽に乗せて描くミュージカル「ボニー&クライド」。2025年3月10日(月)~4月17日(木)に東京・シアタークリエ、4月25日(金)~30日(水)に大阪・森ノ宮ピロティホール、5月4日(日・祝)~5日(月・祝)に福岡・博多座、5月10日(土)~11日(日)に愛知・東海市芸術劇場大ホールで上演される。


日本では12年に初演、23年には宝塚歌劇団雪組でも上演され、今回は瀬戸山美咲の新演出版。アメリカ・ニューシネマの名作『Bonnie and Clyde』(邦題「俺たちに明日はない」)でも有名な伝説的ギャング・カップルを熱演中の、クライド役・柿澤勇人(矢崎広とのWキャスト)、ボニー役・海乃美月(桜井玲香とのWキャスト)に、開幕後の貴重なタイミングで、作品への想いやお互いについてなど話を聞いた。

柿澤勇人

■大きく感情を突き抜けないと演じられない役柄

――今、東京公演にご出演中ですが(取材時)、改めて感じる本作の魅力は?

海乃美月(以下、海乃):稽古場ではクライドとボニー、メインの物語を意識していたのですが、世界恐慌の厳しい時代の中で、何かを変えようともがいていたふたりの周りの人たちも、いろいろな想いがあることが作品に散りばめられているのを感じ、この時代に生きた様々な人たちのことがよく分かる作品だなと、舞台にきてから思います。

柿澤勇人(以下、柿澤):やはり劇場にお客様が入ることで、「ここで笑ってくれるんだ。ここで泣いてくれるんだ」と、日々違う空気を感じられてモチベーションが上がります。演じていて気づいたのは、実在したカップルだけど、「ロミオとジュリエット」のような純粋な愛だけでは語れない、少し次元の違うカップルの話だということ。大きく感情が突き抜けないと演じられないし、きちんとエネルギーを放出して演じないと伝わらない。ワイルドホーンさんも言っていたけど、歌っていて「疲れないとダメ」。ミュージカルの場合はペース配分を考えてしまうこともあるけど、考えた時点で負けだな、ギリギリのところを攻めないとおもしろくならないな、というのを日々感じています。

――昨年主演された『ハムレット』も相当ハードな舞台だったと思うのですが。

柿澤:ほんとよく生きのびました(苦笑)。演出の吉田鋼太郎さんは「これ、1日2回やったら死ぬと思う」と言っていて、本番が終わると一歩も歩けなかったけれど、舞台をやっていると筋肉が覚えてくるんですよ。

海乃:(頷く)。

柿澤:徐々にラクにはなってくるんですけど、少しでも力を抜いたら自分が一番分かりますからね。これではだめだと。『ハムレット』で得たものはとても大きいです。ワイルドホーンさんの曲はキーが高いし、圧をかけないと歌えない。ブロードウェイ版やウエストエンド版と比べると僕はまだまだなので、少しでも巧くなって終わりたいなと思っています。

――海乃さんは昨年宝塚歌劇団を退団されましたが、新たにボイストレーニングなども?

海乃:そうですね、今回の作品の歌唱指導の長谷川開さんのところに、お稽古に入る前からずっとレッスンに通いました。

柿澤:へー、そうだったんだ!

海乃:今までは頭声がメインで、ミックスで歌うことはあっても地声は本当に使ってこなかったので、地声の発声から教わりました。私はこの作品に参加が決まる前から、ワイルドホーンさんの『ボニー&クライド』の楽曲が大好きでよく聴いていて、もし自分が歌うならブロードウェイ版みたいにきちんと地声を使った発声で歌いたいと思っていました。稽古の後半、自分の中でポジションをつかめてきた感覚はあったのですが、まだまだ日々研究中で、さらに進化していけたらと思って公演しています。

柿澤:海ちゃん(海乃)は稽古でも素晴らしかったんだけど、通しになったら100%を超えてくる!みたいに違っていて、すごいなと思った。

海乃:やっぱり通しのように、繋げてやるほうが気持ち的にも流れて、すんなり歌えました。その歌だけ練習してもできなかったことが、通すとできることがあります。

柿澤:それはあるよね。

――クライドとボニーを演じるうえで、大切にしていることを教えてください。

海乃:ボニーはクライドと最後まで一緒にいるという執着心があり、「この人とだからここまできた」というボニー像をつくりたい、とお稽古の最初から思っていました。ダブルキャストなので、おふたり(柿澤と矢崎広)の演技をずっと見て、この人の隣ではどういう風に存在したらいいのか、とすごく考えました。クライドは怒りから沸き上がるエネルギーが人一倍あり、さらに儚さや弱さも持ち合わせていて、その歯車がボニーにピタリとハマるからこそふたりが動き出す、みたいなイメージが生まれたので、最終的にボニーがクライドの精神的な支えになっていた、というように演じられたらと思っています。

柿澤:実在のクライドがどうだったのかは分からないけれど、戯曲の中では、怒るときは全力で怒る、落ち込むときはめちゃくちゃに落ち込む、笑うときは本当に楽しく笑う、と振り幅が大きく、躊躇なく突き進む人物。そういったものが全てエネルギーになっていて、ボニーにそれを委ね、ぶつけようと思って演じています。

――実際演じるうえで、おふたりでどのような話をされましたか?

海乃:何も話さずに合わしていましたよね?

柿澤:そうだね。「ここはこうしよう」とかは一切なかったかも。(ボニーとクライドを演じる)4人とも、演出の瀬戸山さんというリーダーがいるので、従って理想に追いつこう、という稽古でした。

――舞台上ではお互いについて、どんなことを感じていますか?

海乃:カッキーさん(柿澤)は本当にすごいです! クライドの社会に対しての怒りやエネルギーが、カッキーさんのもともと持ってらっしゃるものとマッチしていて、ボニーもその熱量がないと一緒に生きていけないと、舞台にきてからより思いました。そういうエネルギー量がある一方で、すごくナチュラルに、そのときに生まれるものをキャッチしてお芝居をされる。私は宝塚のときの“型”でやっていたお芝居みたいなのが、時々出てしまい、「今かみ合ってないな」と分かるんです。でもカッキーさんが、「日常会話でいいんだよ」とお稽古中に言ってくださり、今も舞台が始まる前に「日常会話!」(胸に手を当てて)と自分に言い聞かせて、舞台に出ていってます。

柿澤:(笑)。いや、海ちゃんは大変ですよ。隣に男役じゃなくて本物の男がいて、ラブシーンもたくさんあって。2幕の半分ぐらいクライドは上半身裸だし。(笑)

海乃:最初、お稽古場ではこう(目を覆うしぐさ)……!(笑)

柿澤:そんな作品を(退団後)一発目にやるのはすごく勇気のいることだし、それに順応していく海ちゃんはすごいなと思います。僕が劇団四季を退団したての頃は蜷川幸雄さんに毎日しごかれました(苦笑)。瀬戸山さんと稽古場で穏やかにディスカッションし合えるこの現場は、ちょっとうらやましいな、なんて思っていましたね。

海乃:はい、ありがたかったです。

■現状から抜け出せないふたりを、鳥かごに見立てたセットで表現

海乃美月

――今回の新演出版について、過去の『ボニー&クライド』を観た方も気になっていると思うのですが。

柿澤:僕は12年の初演を観ているけど、今回は前回とは大きく違う鳥かごに見立てたセットになっていて、そこから飛び立ちたいけど飛び立てないふたり、みたいな意図があるみたいです。

海乃:瀬戸山さんがそのように創ってらっしゃって、このセットによって、「ふたりは幸せそうなのに、ここから抜け出せないんだ」と、ただふたりだけを見ていたら気づけない愛が、見えてくるおもしろさがあります。

――好きなナンバーやフレーズはありますか?

柿澤:やっぱり、2幕のボニーのソロが好き。「短くても悪くない」という歌は、ボニーのすべてを表すような曲で。
クライドと出会ったことによって心境の変化があり、こんな境地に辿り着いたと歌う……究極ですよね。難しいだろうけど、聴いていていつも感動します。

――開幕してからも、じっくり聴いてらっしゃるのですか?

柿澤:そうですね。でも自分だったら絶対歌いたくない!

海乃:え、どうしてですか!?

柿澤:みんなが「キター!」って聴くやつじゃん(笑)。

海乃:そうですか? 歌っている側としては、意外と気にしてないです(笑)。

柿澤:ほんと? それはいいことだね。

海乃:ピークはその後だと思っていて、あまり構えて歌ったことがなかったです。

柿澤:そうなんだ!!

海乃:本来なら誰にも見えてないですし、独り言みたいに……。私は「ボニー」が好きです。クライドがバスタブに入って、ウクレレを弾きながらボニーのために作った歌を歌ってくださるんですよね。

柿澤:正真正銘のラブソングです。

――ボニーとクライドは似ているところもあるのでしょうか。

柿澤:ボニーは映画スターになるのが夢で、クライドはアル・カポネのようなギャングの大物になって金を稼ぎたいと思っている。夢は違っても、たぶん発するエネルギー量が一緒。ここから抜け出したい、変わりたい!と強く思っている、という共通点があります。ふたりは一目惚れなのか。触れ合ったときの体温など、言語化できないものがあるのか。

海乃:本能的なところで惹かれ合っているみたいな感じなのかなと思っています。でも性格的には似てないじゃないですか。

柿澤:そうだね。

海乃:むしろ足りないものを補い合っているからこそ、ふたりとも思い切って前へ進めるのかなと思います。

――刹那的に生きたカップルですが、エンターテインメントとしてこの作品をどのように楽しんでほしいですか?

柿澤:強盗や殺人、やってはいけないことばかりしているけど、ふたりでいることがすごく楽しくて、ケンカしながらも愛し合っていて。ふたりはたぶん幸せだったんだろうな、という部分を、観ている方々にも一緒に楽しんでもらえる作品かな。銃の撃ち合いをはじめ、グロテスクなイメージもあるかもしれないけど、ある意味ではその真逆のエンターテインメントだなと思いますね。

海乃:そうですね。あとは1曲の中でそれぞれ違う想いを歌う女性同士のデュエットもあるなど、映画と違ってミュージカルだからこそ、ふたりの思いが同時に飛んでくる、感じられるという醍醐味があります。

――柿澤さんは昨年、第49回菊田一夫演劇賞などを受賞され、海乃さんは月組トップ娘役を務められた宝塚歌劇団を卒業後、第2章へ。柿澤さんから今の海乃さんはどのように見えますか?

柿澤:海ちゃんは芝居が本当に好きなんだろうなと。

海乃:お芝居は観るのもやるのも好きです!

柿澤:僕はミュージカルも大好きなんだけど、ミュージカル一本にはなりたくない、という人で。海ちゃんも今後大海に飛び込む人なのかなと勝手に思ってるんです。ミュージカルがすべてというのではないほうがいいのかな、なんて(笑)。

海乃:励みになります! 機会があればいろいろ挑戦してみたいです。私は宝塚を辞めて1作目がこの作品で、とても恵まれているなと思っています。瀬戸山さんは本当にお芝居を愛してらっしゃる方。もし“ザ・エンターテインメント”みたいな作品だったら、こんなに真摯に芝居に取り組めなかっただろうし、歌のことばかり考えたり、見え方ばかり気にしていたかもしれません。そうではなく取り組めたのは、カッキーさんをはじめ皆さんのおかげだと思うので、ご縁に感謝しています。

取材・文:小野寺亜紀

東京公演は4月17日(木)までシアタークリエにて上演中。その後は4月25日(金)~30日(水)に大阪・森ノ宮ピロティホール、5月4日(日・祝)~5日(月・祝)に福岡・博多座、5月10日(土)~11日(日)に愛知・東海市芸術劇場大ホールへと巡回する。チケットはイープラスにて販売中。

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