「ひとりっ子はかわいそう」?親子遠足で見えた“保育園のこうちゃん” に胸がいっぱいになった日【室谷香菜子のいっくじ日記#9】
HBCアナウンサーの室谷香菜子(むろや・かなこ)が、息子「こうちゃん」の“一言”と、一緒にしたためる一句で、小学校入学までの1年間を”一句”(育)児日記につづります!
保育園に参観日はないから…
この秋も、息子・こうちゃんの保育園ではさまざまなイベントがありました。
「今日はじじとばばにお手紙書いた!」と教えてくれた敬老の日。
中秋の名月にはお月さまの絵本を先生が読み聞かせてくれて、「今日はお月見だよね、お月様は見えるかな…」
この間は、園の屋上で採れたさつまいもでのお楽しみの焼き芋会では「焼き芋美味しかった!こうちゃん、おかわりしたんだよ~!」とにこにこ。
大きくなるにつれて、そんな季節の行事を息子なりに感じ、伝えてくれることが増えました。
振り返ると私の母はそういった行事をとても大切にしながら育ててくれたなと思います。
が、私はすっかり忘れてしまっていることも多々…反省。
だからこそ、息子の保育園生活の中で日々先生方に感謝することはたくさんありすぎますが、こうした節目の行事をとても大切にしてくれるのもその中の1つです。
そして、そんな秋の行事の中で、「年長さん」だけの特別なイベントが「親子遠足」。
保育園は参観日のようなものはないので、こうちゃんが伝えてくれることが増えたとはいえ、基本的に日中どんな風に先生やお友だちと過ごしているのかは分かりません。
うちの子はどんな風にハサミやのりを使って工作しているんだろう?
きちんと座っておとなしく絵本の読み聞かせを聞くことができているかな?
でも、この特別な「親子遠足」でそんな普段の様子もよく分かり、私にとっても忘れられない1日となったのです。
楽しく食べてほしい…いつもその一心で
遠足当日。
私は朝6時前に起きて、「お弁当作り」からのスタートです。
普段は毎日給食が出ますが、息子の通う保育園では月に1度か2度「お弁当の日」があります。
だけど、何度やってもお弁当作りは慣れません。
実は私自身、小さい頃は食が細く食べるのもとても遅くて、幼稚園のお弁当の時間が苦手でした。
そんな自分の経験から、たまにやってくるお弁当の日にはなるべくこうちゃんの好きなものをつめて、楽しく食べてほしいなという思いがあります。
キャラ弁のリクエストにも1度だけがんばって応えましたが、それだけはギブアップ…。
その代わり…ではありませんが、毎回手紙(メモ用紙に簡単な一言)を必ず添えることにしています。
一緒に遠足に行くこの日も変わらず、こうちゃんへのメモをお弁当箱と一緒にいれました。
リュックの中にはお弁当のほかに水筒、レジャーシート。
そして、遠足のこの日だけ特別!「300円まで」とお約束のおやつをつめました。
駄菓子屋さんに行き、一緒に計算しながらこうちゃんが自分で選んだおやつです。
さあ、朝8時。
雨の中登園すると、まずは「朝の会」。
ホールで体育座りをして、先生のお話を聞く子どもたちの姿が、すでに新鮮です。
みんなドキドキわくわく、でもこうちゃんはちょっと緊張した顔をしていました。
そして実は、私も内心少しドキドキしていました。
親にとっても初めての遠足…!
何年も通っている保育園ですが、お迎えの時間はそれぞれのお家でバラバラ。
挨拶はするけれど、それ以上のコミュニケーションはとったことがない親御さんもたくさんいます。
バスの中の席順はどうなっているんだろう?
お昼はどんな風にお弁当を広げて食べるのかな?
自分の学生時代のことも思い出したりしていました。懐かしい感覚です…。
ですが、始まってしまえばそんなドキドキも吹っ飛ぶほど、すべて子どもたちのペース!
バスの中でのクイズ大会で、こうちゃんはあの緊張顔はどこへやら!
張り切りすぎてずっと叫んでいるので、「騒ぎすぎ!」と注意している間に、あっという間に目的地の「おたる水族館」に到着しました。
実は、「暗くて怖い~!」と大泣きされた時以来のおたる水族館です。
あれは確か2歳か3歳の時?
海の生き物に興味があるようだったこうちゃんを張り切って連れて行ったのに、入ってすぐに泣かれてしまい、結局、隣接の遊園地『祝津マリンランド』で遊んで帰ってきました。
今回はお友だちと手をつないで、上機嫌でぐんぐん中へ入っていきます。
まずはタッチプール。
張り切ってヒトデやウニなどをつかみあげる子がたくさんいる中、こうちゃんは怖くて触りたいのに触れません…。
「前は触れたのに、今日はなんか怖くて触れないよぅ…」
すると、お友だちが優しく声をかけてくれました。
「こうちゃん、こうやって触るんだよ!がんばれがんばれ!」
そんな様子を少し離れたところから見守ります。
みんなおそろいの黄色い帽子。
3歳のころはかぶってもあんなに余裕があったのに、今はきつくなってきている子も増えていました。
「大きくなったなぁ。来年はもう小学校かぁ」と、少し寂しくなります。
全力の子どもたちと先生から見えるもの
水族館の本館を出て坂を下っていくと見えてくるのが「海獣公園」。
ここは私も大好きな場所で、初めてテレビ番組のロケで行ったときには大興奮しました。
海を仕切っただけの豪快なプールで、アザラシやトド、セイウチなどがのびのびと暮らしています(冬季間はお引越し中)。
中でも子どもたちが盛り上がって黄色い声援を送っていたのがセイウチ館。
間近で見るセイウチの体や牙の大きさに最初はみんな少し戸惑っていましたが、セイウチが水に飛び込むと「水しぶきがかかりそう~!」と大喜び。
子どもたちのすぐ目の前まで近づいてきて手を振るような仕草を見せてくれる、それはそれは愛らしい姿も。
サービス精神旺盛なセイウチたちに夢中です。
アザラシショーに、トドの食事、次はペンギン!と思ったところで、子どもたちから「おなかすいたー!つかれたーー!!」の声。
楽しくて夢中になれることに全力、やりたいことへも全力。
そんな子どもたちの声を聞いて先生たちは「よし!予定変更!もうお弁当にしよう!」と
言ってくれました。
子どもたちは「やった~~~~!」と急に元気に。
子どもたちの要望に、臨機応変な対応をしてくれる先生の姿にも安心して過ごしている保育園生活が垣間見えて、頭があがりません。
さあ、希望通りのお昼のお弁当の時間。
レジャーシートを広げて、仲のいいお友だちとくっつけて…
「おててを合わせてください!いただきます!!!」
みんなニコニコでお弁当を開け始めました。
ここで私は、あることに気が付きました。
こうちゃんの顔がたまらない…
「今まで何度もお弁当を作ってきたけど、実際に食べている姿を横で見るのは初めてだ…」
心の中でそう思っていると、隣に座っていたママ友も「お弁当、食べてる姿見るのって意外と初めてだよね」と。みんな考えることって同じなんだなぁ。
こうちゃんはお弁当箱を出すと、まず私の手紙を読んでニヤニヤ…。
声に出して1文字1文字一生懸命読んでくれていました。
ちょっと恥ずかしいけどうれしい。
「サンドイッチから食べるのかな?おかずからかな?」
相当お腹がすいていたのか、のぞいている間にサンドイッチをパクパク口に入れ、おかずもかきこむように食べていました。
あっという間に、お弁当箱はピカピカの空っぽに!
早起きしてよかった。
勝手に今までプレッシャーを感じてきたお弁当作り。
「キャラ弁を持ってきているお友だちの隣に座ったら、比べてガッカリされるかな?」なんて考えたこともあったけれど、どの子も自分のお弁当箱の中身に夢中!
華やかで栄養バランス抜群なお弁当じゃなくても、みんな楽しそうだしうれしそうでいい顔です。
力が抜けた瞬間でした。
おやつ交換会で見えたこと
お弁当のあとは、大盛り上がりのおやつ交換会。
こうちゃんは、一番最初に私におやつを差し出してくれました。
「ママ、お菓子どうぞ!お弁当作ってくれたからお礼だよ」
自分で選んだ300円分のおやつ。
「みんなと交換できるお菓子がいいよね」
そう言いながらこうちゃんが選んだのは、いつも買うお菓子ではなくてみんなでシェアできるものでした。
クラスのお友だちが次々に小さなおやつを「どうぞ」と持ってきてくれて、それに応えるようにこうちゃんも「じゃあこれどうぞ」とプレゼント。
「先生が好きなヤングドーナツ、僕も買ってみた!一緒だね」と見せに行っている子も。
なんだか私はその”おやつ交換タイム”を見つめながら、少し泣きそうになっていました。
子どもたちが積み重ねてきた関係に
この保育園で毎日一緒に過ごしたお友だちとの時間も、あと数か月。
日々の生活の中で子どもたちの優しい心が確実に育まれてきたんだな…。
感謝と安堵感でいっぱいになりました。
『ひとりっこはかわいそう』
こうちゃんがもっと幼いころ、何度か周囲から言われたことがありました。
「きょうだいがいないとわがままで自分勝手な子に育つのかな」
私自身悩んだ時期もありました。
でも、保育園生活で年上の子の後を追いかけたり、年下の子のお世話もしたり。
私の見えないところで子どもたちの大切な関係はしっかりと構築されていたんだな。
そんなことに気がつけた一日。
「今日参加できてよかった」と心から思いました。
卒園まであと約5か月。
『保育園最後の〇〇』を私も後悔のないよう楽しんでいきたいと思います。
ここで一句!
「弁当を かきこむ姿に 一安心」
「連載|室谷香菜子の「いっくじ」日記」
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文|HBCアナウンサー 室谷香菜子
青森県出身。2009年HBC入社。HBCラジオ「アフタービート」、「美香と香菜子のおさんぽ土曜日」などを担当。2018年第1子(男の子)を出産。趣味は寝かしつけ後のドラマ鑑賞と、美味しいお酒。息子(こうちゃん)との日常はInstagramでも発信中。
編集:Sitakke編集部あい