「こころが男性なのに妊娠?」自分に偏見はないと思っていたけれど… こころが男性どうしのふうふに出会って【したっけラジオ】
「こころが男性どうしのふうふが、結婚、そして妊娠」。
そう聞いて、あなたはどう感じますか?
HBCラジオで日曜午後7時半から放送している「したっけラジオ」。
WEBマガジン「Sitakke」のお悩みコラム連載でもおなじみのインテリ女装家・満島てる子と、HBCアナウンサー森結有花がMCを務める、30代コンビによる脱力系おしゃべり番組です。
2024年11月17日OA回では、Sitakkeの連載「忘れないよ、ありがとう」を執筆したHBC報道部の泉優紀子記者をゲストに迎えて語り合いました。
「こころが男性どうし」のふうふ・きみちゃんとちかさんが、新しい命を授かり、家族として歩んでいく様子を追った連載です。
こころが男性どうしのふうふ
きみちゃんは、からだは女性、こころは男性。
ちかさんは、からだは男性、こころは男性ですが、日によって女性寄りの日もあって、好きになるのは男性だけです。
現在日本では同性どうしで結婚することはできません。
2人は戸籍上「男性」と「女性」であるため、法律上の「結婚」をすることができます。
きみちゃんは男性として生きていきたいと思っている一方で、好きな人の子どもを妊娠して出産することを選びます。その道のりには、葛藤や、社会の壁がありました。
ちかさんは長らく、てる子さんが店長の「7丁目のパウダールーム」のスタッフとして働いていました。てる子さんも、ふうふの歩みを近くで見てきたひとりです。## 取材のきっかけは?
森アナ)なぜこの連載を?
泉記者)4年前にてる子さんのお店に取材をしに行ったとき、23時くらいに、きみちゃんがちかさんを迎えに来たんですよね。その迎えに来てくれてるっていうのが…「いいな~!!」って(笑)
てる子)初めて聞いた(笑)
泉記者)ちかさんは「パートナーなんです」と。てる子さんが「この店で出会った2人だから」って紹介してくださって。
2人が帰るのを見送ったんですが、その後ろ姿がすごく仲睦まじくて、「素敵だな」って思ったんですよね。
「素敵だな」という気持ちを自分の中でも大事にしたいなと思っていたんですが、普段のニュースやドキュメンタリーは長さが決まってしまっているので、私の感じた気持ちの機微や好きなシーンも出せていなくて。
そういう部分がたくさんあるから、それを伝えればより深く伝わるかなと思って、記事にする相談をしました。
自分に偏見はないと思っていたけれど…
森アナ)私も連載を読んだんですが、まずはやっぱりちょっとびっくりしちゃったんです。本当に失礼だと思うんだけど、「こころが男性どうしのふうふって、いるんだな」とか、「こころが男性なのに妊娠をするってどういうことなんだろう」って、私はちょっとびっくりしちゃったの。
でも何にびっくりしたのかっていうと、私の中で自分はそういう差別とか偏見っていうのは持ってないと思っていたので…。
そういうふうに自分がびっくりしたっていうことは、「恋愛っていうのは、こころの性別が違うものどうしのものだ」っていう偏見とか、「こころが男性の人は妊娠をしない」っていう勝手な思い込みが自分の中にあったんだなと思って、まず最初にそういうショックが自分に対してあったかな。
てる子)私もこの連載の中で記事を書いているんですけど、書いたときには「1人でも人の目が開かれればいいな」っていうふうに思ってたので、森ちゃんはそういう経験をしたっていうことだよね。
森アナ)「そういう方々がいらっしゃるんだな」って最初は思ったんだけれども、連載を読み進めていくうちに、2人が一緒にオムライス食べていたりだとか、クリスマスにプレゼント交換をしたりだとかがすごく微笑ましくって、いつの間にか性別を全く考えずに、なんか2人の物語としてすごく見ていたんだよね。
誰もが平等な社会なら、抱えなくてよかった悩み
てる子)私は妊娠の話以前に、2人の結ばれ方に関してすごく考えたところがありました。
2人は法律婚を選択して、男性と女性で戸籍を入れて夫婦になるっていう選択したわけなんだけど、札幌市にはパートナーシップ制度っていう、夫婦として同性カップルも一種同じポジションにありますよ、っていうのを自治体が証明する制度がある。
最初それを使おうかって2人で話し合ったっていうのも聞いたのよ。
だから何かパートナーシップ制度にするか、それとも結婚にするか…
でもやっぱり結婚っていう形が、法のもとの庇護を受けれる、っていうところでそっちにしようっていうふうになったみたいなんだけど。
たとえば2人が生きている社会が、同性でも誰でも結婚が平等にできるような社会だったら、こういう悩みを2人は抱えなかっただろうなって。
出発点の時点からいろんな葛藤があったろうし、自分もLGBTQの当事者の1人として、他人ごとではなかったなっていうふうに思って。
スタートから「壁」じゃないんだけど、いろんな課題を感じながら見守っていました。
本当に、本当に違う人ですか?
泉記者)一番最初に2人についてテレビで放送して、それをインターネットニュースに上げたときに、コメントで2人に対する批判がすごい多かったんですよ。
「気持ち悪い」だったり、見るとすごい傷つく言葉。
自分とこの人たちは違うっていう価値観があるからこそ、そういうことが言えちゃったりすると思うんですよね。
ただ、私が伝えたかったのは、「本当に、本当に違う人ですか?」って…。
2人が喜んで、悲しんでだったりだとか、具体的なところだと迎えに来てもらってとか、クリスマスのデートをしてとか…。
私も取材していて「同じ部分はあるな」と、社会の中で生きてく上の大変さの数はもちろん違うかもしれないけど、でも人として、同じ部分も共通点もある。
「自分はできてるのに、できない人がいる」っていうのは平等じゃないよね、というようなことを感じてほしいなと思っていました。
そういう気づきを色々な人が感じて、少しずつ気持ちが変わっていって、まわりが2人を見る目線を変えていかなくちゃいけないなと私は思います。
動画で見る
今回のテーマはとても大切なお話です。それぞれが熱い胸の内を打ち明けながらも、いつも通りの気張らないトークが繰り広げられました。
YouTube動画もぜひご覧ください。
森アナは「びっくりした」と言っていましたが、てる子さんも泉記者も、最初からすんなりすべてを理解したわけではなかったといいます。
それぞれの感じたことや、取材の裏話を、放送に入りきらなかったおまけトークも含めてたっぷりお話しています。
収録前にも印象的な会話が…
Youtubeにも入っていない、こぼれ話です。
Sitakkeでは以前、「LGBT」という言葉について考える座談会を開催し、記事で公開しました。
この記事を読んだ森アナは、収録前の打ち合わせで、「今回はどんな言葉を使うべき?」「自分がそんなつもりはなく使った言葉でも、聞いている人が傷つかないようにしたい…」と切り出しました。
てる子さんと泉記者と、「言葉そのものよりも、『そういう人たちもいるよね』と遠ざけて線引きをするような使い方に傷つくのでは…」「性自認や性的指向を表す言葉をメディアが使っていくことの意味もあると思う」など、真剣に語り合いました。
簡単に答えは出ませんが、森アナは「収録中でも、あれ?と思う発言があったら言ってほしい」と伝えて、ラジオブースに入りました。
座談会でも、人によって考え方が違うことを知りました。話すテーマによっても使うべき表現はさまざまで、一つの正解はないのかもしれません。
だからこそ、いろいろな人の考え方を聞いて、こうして話し合うことが第一歩なのかも…と思う回でした。
ラジオの放送後の反応からも、リスナーのみなさんもそれぞれに考えてくださったんだなあと伝わりました。ありがとうございます。
これからもいろいろな話題について、読者・リスナーのみなさんと一緒に、ゆるっとおしゃべりしながら考えていけたらと思っています。
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連載「忘れないよ、ありがとう」
「したっけラジオ」の内容は、Sitakkeのこの連載と、Youtubeでもご紹介していきます。
したっけラジオMC・満島てる子
オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。
したっけラジオMC・HBCアナウンサー・森結有花
HBCテレビ「あぐり王国北海道NEXT」「グッチーな!」「SitakkeTV(ナレーション)」、ラジオ「気分上昇ワイド ナルミッツ!!!(月・火)」を担当。「HBC演劇エンタメ研究会」のメンバーとしても活動中!
※掲載の内容は、「ひとりの夜にあなたとあたしのしたっけラジオ」2024年11月17日放送時の情報に基づきます
編集:Sitakke編集部IKU