シュレーディンガーの犬 ならく、いち、ふうか[インタビュー後編]新強犬が目指すもの「アイドルだけどアーティストな枠になれたなら、この人生に悔いなし!」
前後編合わせて15,000字に及ぶシュレーディンガーの犬のロングインタビューの後編。
今回は、新体制となってからのファンとの関係やライブの盛り上がり方、また今後について3人にじっくり話を訊いた。
グループとして強靭さが増した彼女たちが、これから向かおうとしているところとは?
撮影:河邉有実莉
これまでとは違う新しいシュレ犬として、何かを作りたくて新体制を始めた(いち)
ーーそんなメンバーのさまざまな想いが詰まったシュレーディンガーの犬に入った、ふうかさんですが。名も歴史もあるグループに加入した、そういうプレッシャーはありました?
ふうか:
プレッシャーかぁ……。それはありますよね、もちろん。でも、前のグループもそうだし、私、今まで全部新メンで入ってるから、なんだかんだ自分的にはパフォーマンス面を含めて、入ってから考えようと(笑)。これまでの感じと違いすぎて、入ってから考えようと思ってました。細かい悩みはありますけど、大事なのは楽しいメンバーと、楽しくやりたいのが1番だと思っていて。それってステージにも出ると思うんですよ、メンバーの関係性って。
ーー確かに、見ている側もわかりますよね。
いち:
シュレはこれまでめっちゃ困難があって。この新体制の直前まで大変なところでやり続けてきたから、新メンバーがプレッシャーありそう、守り抜いてきたからこそ、プレッシャーがのし掛かりそうって、見てる人たちからそう思われるかもしれないけど、自分個人としては、新体制になるタイミングで、一旦なんだろう? 終わったみたいな……。
ならく:
うん、わかる。
いち:
終わった感じがしました。だから今までこうこう、こうあったから、この気持ちを繋いで3人にもやってほしいというふうには1ミリも思ってない。
ーーなるほど。
いち:
1回終わりにしたつもりだったんですよ。今までやってきて、新体制への切り替え期間がここまで長かったのは初めてだったし。
ならく:
ちゃんと区切れた感じがする。今まではもう次の日から新体制っていう。明日からすぐに新しいことが始まるんだ、みたいに、そこまでちゃんと考えられてはいなかったんですよね。気持ち的にも切り替わる前に、もうライブがあってスタートしてたから。なんか新しい子たちと一緒にやってるな、みたいな気持ちだったんですよ。でも今回は違う、本当に。
いち:
この新しい6人で、これまでとは違う新しいシュレ犬として、何かを作りたくて新体制を始めたんです、自分は。だから入ってきた3人にも、過去のシュレ犬を引き継ぐというよりかは新しく、3人それぞれとしてのシュレ犬を作って行ってほしい、そういう気持ちで迎え入れたので。プレッシャーとか、過去にこういうことがあったっていうことは、まったく考えないでやってほしい。
ふうか:
新メンで入るからには、やっぱりグループにとってプラスにならないといけない。入って何も活躍しないとか、何も変わらないねって言われるのが1番嫌だから、っていうのは考えます。
いち:
プラスだよ、もう。
ふうか:
これからですよ。環境変わって、なんていうんだろう……やっと落ち着いてきた今、これからが自分は本当に頑張らないといけないと思ってる。ステージもそうだし、ファンとの関わり方も。
ーー確かに、そのリセット感っていうのはありますよね。昨年末の4人体制でのワンマンがあって、今年2月の3人体制があって、やれることを全部出し切ったからこそ、現在があるという。新体制については、長く見てきたファンからの声もいろいろあるかとは思うのですが。
いち:
この新体制、仲いいね、面白いね、とは言われます。
ならく:
今でもたまに言われるんですけど、“最初のメンバーが1番好きだった”とか、それが1番言われたくないことだから。どの時代のシュレも自信を持ってやってきたので、もちろん全部いいですし、その人にとっての推しメンがいた時代が好きだというのはわかるんですけど、それを全部通り越して、“今だろ!”と思わせたいです。考える余地も与えないくらい。あの頃もよかったけど、推しメンはもういないけど、でも今のシュレ犬が1番強いよね、って言われるようにしたいなって。新体制になるたびに毎回そう思ってはいたけど、今の体制が1番そういう想いが強いです。
ーーヲタクからすれば、自分が好きになった時代が1番思い入れがある。それを承知で、やってる側は最新の自分たちが1番いいと思って活動しているわけですからね。ファン層も変わってきていますよね?
ならく:
コロナ禍にデビューしたので、お客さんの層は変わってきてるなと思いますね。本当に時代とともに私たちも移り変わっていってるなっていうのは、客層を通じて感じるところです。最初は“インフルエンサーグループ”と言われていたので、お客さんも“アイドル全然知らないです。SNS見て、初めてアイドル現場に来ました”みたいな方が多かったんですね。だけど、どんどん“ライブを観て好きになりました”という、アイドルが好きな人が増えてきた気がしますね。昔よりライブ派なヲタクが多くなりました。
ーー新体制からの新しいファンも増えていますよね。ふうかさんの前のグループのファンがシュレに来たということも多いのではないかと。
ふうか:
いますけど、やっぱりなんだかんだ戻る人もいて。私のファンの方って、2種類いるんですよ。私のことが好きなファンと、グループが好きでついたファン。卒業の時にこの半分くらいはいなくなるだろうっていうのも込みの“さよなら”だったんで。本当に今、その通りになっています。私についてきた人もいれば、いなくなった人もいる。シュレで知ってくれた新規のファンも増えた気がします。でもシュレに入って、歌を含めて“合ってるね”と言われることが1番多いですね。
ーー“合ってる”と言われるのは嬉しいですよね。ふうかさん、特典会列もすごいじゃないですか。
ふうか:
どうなんですかね。今ちょうど初期からついてきた人が離れ始める時期っていうんですかね、そういうこともあるから、今ちょうど悩み期ですよ。
すごい潔癖症なんです。なのに、ステージダイブは行ける(ならく)
ーーライブの盛り上がり方、フロアの雰囲気も前のグループとは全然違うと思います。
ふうか:
前は、授業参観みたいな、発表会みたいな感じでしたけど、今はお互いが暴れるみたいな一体感。どっちも好きです。どっちも面白い。
ならく:
最近、難しいなって思ったところがあって。バンドのようなフロアのライブがあって、それを通して思ったんですけど。その昔、そういう暴れる現場が怖いです、みたいな方が、1年後とかにすごい前の方にいて、なんなら率先して暴れてる、みたいな光景を目にしたんです。“人ってこんなに変わってくれるものなんだ、応援しようという気持ちがあればついてきてくれるんだ”って嬉しくなった反面、“逆に王道アイドルが多いペンライト現場をどういうふうに見たらいいかわかんない”っていうことを、1人じゃなくて、けっこう言われたんですよ。自分もバンドが好きなんで、そういうアツいライブの方が楽しいには楽しいんですけど、ファンを楽しませるにはどうしたらいいんだろう……と、その時に思って。なんかライブを楽しませるっていうのが1番難しいっていう、原点に戻ってきちゃって。これが直近の悩みです。どうしたらいいんだろうと思って。
ーーそこは極論、メンバーが楽しそうにしているライブが、観ている方も楽しいと思うんですよ。
ふうか:
そのフロアの違いは、私も今ちょうど悩んでる。私のファンには“暴れる現場が怖い”みたいなタイプもいるから。でもそこはお客さんの性格だから、暴れる現場の時は暴れたい人が来てくれて、ペンライト現場の時はペンライトを振りたい人が来てくれたらいいんじゃないかなと思ったけど、何が正しいのかはわからないです。
ならく:
それができたらいいよね、両立みたいな。今、自分たちの方向性がきっちり定まってない。ロックに振り切ってるわけでもないし、可愛いに振り切ってるわけでもないから。それはいいとこでもあるんですけど。まあ、常に楽しめばいいということですね。
ーーせっかくアイドルなんですから。カッコいいにも可愛いにも両方振れるというのはアイドルにしかできないことですし、シュレは、そのバランスがいいと思います。全部が全部暴れられる現場じゃないわけですし、そのどっちもいけるという。そういった対バンによって、挑み方というかライブ運びも変わりますか?
いち:
王道の子たちが多い、暴れられないホールの時はアイドルっぽく煽ったり、歌い方とか、踊り方も観ていて綺麗に思われるよう、丁寧に踊ったりするんですけど、暴れの現場はもういかに観てる人たちのあの暴れ欲を煽るかですね。めっちゃ煽ります。踊りもちゃんと踊るっていうよりかは、一緒に踊ってる人がいたら“お前ウマいけど、自分には敵わんからもっと踊ってこいよ!”くらいの勢いで踊ってるので、そういうモチベーションは変わります。見せるか、一緒に参加させるか、っていう感じで全然違うステージにしてます……たぶん。
ーー意識はせずともそうなっていると。どっちが得意とかそういうのもないです?
ならく:
EDM×ROCKを掲げてるから、得意なのは元気な方だとは思いますね。盛り上がったり、新規のお客さんがついたりというのも、そっちの方の気はします。
いち:
でも、大暴れの日は歌が聴こえづらいんですよ。お客さん乗せようとして、お客さんに乗せられる。気持ちが昂りすぎて、音が聴こえなくなるんですよね。だからペンライト現場の時の方が落ち着いて音を取れて歌える。だからこそ今の自分の課題が、どんだけ大暴れでヲタクに煽られても歌を安定させるっていう、聴かせる歌にしなきゃいけないという。
ならく:
昂るのは人間らしいといえば、らしいけど。
いち:
観てる方も、音を外して変な歌い方してるくらいがライブらしくて面白いだろうけど、映像とか入った時は悲しいよね。それに、本当に知らない人にライブを観てもらう時に、そんなことで歌を外してたら目もあてられない。一応、人前に立って歌うことを仕事としてるわけだから。歌い方の表現としては、暴れの時は抑揚がちょっと違っていいなってなるかもしれないけど、下手になることはやっぱりよくないから、難しいですね。
ーーそういうことを考えられる余裕が出てきた、ということでもありますよね。
いち:
あ、出てきましたね。
ーーならくさんの飛ぶ(ステージダイブ)率が高くなってきていますが、あれは衝動的に飛んでいるんですか?
ならく:
衝動ですね。別に飛びたいわけではないんですよ。
ーーフロアへの信頼がなきゃできないことですよね。
ならく:
確かに! 自分、すごい潔癖症なんですよ。なのに行けるんですよ。
ーー躊躇なく。普通はちょっと怖いですもんね。
ふうか:
怖いです……。
ーーバンドマンでもあそこまで綺麗な飛び方する人、なかなかいないですよ。このあいだ、動画もバズってましたけど、WOMBLIVEでのジャンプすごかったですね。
ならく:
あれ、ちょっと失敗しました。危なかった。危ないですけど、あの形でダイブしないと届かなかった。
ーーそこで普通は一旦ステージから降りて、柵に昇ってから行くんですけど。
ならく:
それはダメ!
ーーあははは、ロックだ!(笑)
ならく:
あざはいっぱい増えたな。でもあざは消えるからいいです。
いい意味で挫折したい。それも成長するのに必要な過程かなって思う(ふうか)
ーーケガだけは気をつけてくださいね。そして、今後のシュレ犬ですが、目指すところや目標的なことをメンバーで話したりします?
ならく:
最近はないね。昔、目標は作ったりもしましたけど、難しいですよね。
ふうか:
どこに立ちたいとかよりも、ちっちゃいハコでも大きいハコでも人が集まってくれて、熱狂したフロアがどこでも作れるようにはなりたい。
いち:
うん、でかいところに立ってワンマンしたいっていうのはアイドルだから目標にはなるけどね。自分も大きいところには立ちたいけど、ただ立つ、運営の力で立つ、とかじゃなくて、立つにふさわしい状態になった上で立ちたい。そのライブを確実に楽しいものにできる、絶対に満足できるものにできるレベルになってから、安心して立ちたい。見合ってるのかな? 大丈夫かな?の状態では立ちたくない。せっかく今、いい形でリスタートできたから、無茶な状態で立つのではなく、確証を得て立ちたい。それが今のメンバーでできると確信しているからこそ、そう思います。でも限界はないですからね。見れば見るほど上はあるから。
ーー自分の成長に見合ってキャパを広げていくと。
ならく:
まずはメンバー全員が同じ方向を向いて、同じところを目指したい。なんか当たり前、めっちゃ初歩的なことなんですけど……。
ーー1番大事なことだと思います。1番大事だし、意外とみんなできてないところです。
ならく:
できてないですね。やっぱ、そういうグループが絶対に売れると思うから。まずどこそこのワンマンを目指す、の前に、うん、それが今1番大事で、1番やるべきことなのかと思います。なんだかんだ後回しにしてきたことでもあるので。
いち:
個々のポテンシャルが高い人が集まっているからこそ、安心しないようにしなきゃなと思います。どんだけ高くても、思ってること、目指しているところが違かったら意味がない。
ならく:
士気を揃えるみたいな、そういう意識的なものは大事なのかなって思いますね。いろんなメンバーと活動してきて気づきましたね。
ーーいろんなメンバーと活動してきたからこそ、重みがある言葉です。
いち:
直近はツアー<1st Asia Tour 2024『REBOOT』>ですね。ファイナルの東京に向けて各地を回りながら少しずつ意識を揃えられたらと思います。ファイナルの東京(12月22日(日)品川ステラボール)で集大成になるようなツアーにしたい。
ふうか:
これは予想ですけど、“やった! 楽しかった!”だけでは終わらないと思うんです。たぶんそれ以上に課題の方が多く出るツアーだと思うので。でも、それがちょうどいい。メンバーの意識が、なんて言うんだろう……1回そこで挫折したいなとも思っています。いい意味で。
ーー挫折し、失敗するからこそ大きくなれる。
ふうか:
はい。これも成長するのに必要な過程かなって思うんですよね。
ならく:
そこに全員が気づけたらいいよね。めっちゃ成功する可能性もあるにはあるんですけど。“もっと頑張ろう!”って思える、次に繋がるライブにしたいね。
ーーグループとして、個人で考えていることでもいいので、こういうふうになりたいという理想像みたいなものはありますか?
いち:
自信が欲しい。なんだろう……ずっと悔しいんですよね、自分に対して。歌も褒められるし、ダンスも褒められるし、煽りも褒められるし……でもそれは褒める前提でみんな見てくれてるから、褒めるところを探してくれてるから、褒められてるわけで、自分ではまったく満足できなくて。グループの中でキャラっていうか、個性をちゃんと確立して、私はこれがグループの中で1番の強みで、初めて観た人に“あ、この子はここが1番できる子なんだ!”って思われるものを確立したいんです。それを自覚した上での自信が欲しい。歌える子が入ってきたし、踊れる子が入ってきたし、煽りができる子が入ってきたし、歌が成長してる子もいるし、という状況だから、めっちゃ焦ってますね。みんなと同じくらいできればいいじゃなくって、飛び抜けて自信になるものが何か1つでもいいから欲しいですね。それを持った状態でグループにプラスになる人になって、グループの目標をこなしたいです。みんなでやってこなす、それでは自分が満足できない。自分が確実なものをグループに与えた上で、グループを成功させたいです。
ーーでも、そう思えるのはいいことでもあるとも思います。現状の自分に満足してない、まだ成長できると思っているということですから。
ふうか:
私も、それこそ強みがないタイプで……強いのは見た目くらい?
ならく:
うん。……うん、とか言っちゃったけど(笑)。
ふうか:
私、ある意味、よくも悪くも強みもなければ、弱みもないと思ってるんです。そのタイプが下手になればグループの雰囲気が一気に下がるし、上手になればグループは上がると思ってるから。中堅で1番鍵を握ってる。本当に自分が頑張らないとなっていうのは、ものすごく自覚してるんですね。
ならく:
そういうことを考えている時点でもうやる気があるから、大丈夫なんだよ。
ーーふうかさん、度胸がすごくあるっていうか、ステージでの自信をすごく感じるんですよ。それは前のグループに入った時から思っていました。
いち:
すごく華がありますよね。自分の見せ方をあまりにも理解してる。
ふうか:
前のグループで、そこは鍛えられたっていうか。
ならく:
やっぱり大きいグループから来る子はすごいんだなって思います。
いち:
前のグループのイメージが世間的にも大きく強くあったから。ふわふわですごい美人がシュレ犬に入って、犬の歌を歌ってみました……その前のまま歌うのかと思ったら、ちゃんと芯があって、落ち着いていてクールにカッコよく歌える。思っていたものと違う印象を植えつけられるから、あまりにも魅力的だと思う。
ーーでも、歌はクールだけど、ダンスは可憐っていう。
いち:
うんうんうん! わかります!
ならく:
こういう感じの子がロックやってるというのが、いいですよね。
ーーという、ふうかさんが思う、シュレ犬の理想は?
ふうか:
シュレはロックな枠だけど、でも本当に可愛い要素があるじゃないですか。私的にそれがかなり強みだと思ってるんです。キュートロック? なんて言うんだろうね。そこの強みをもっとわかりやすく出していきたいです。
ーーでは、最後にならくさんお願いします。
ならく:
動員面で言ったら、“やっぱりシュレ犬ってすごいよね”って言われたい。拭いきれてない過去が私にはあるので。昔のことを引きずってもよくないんですけど、でもやっぱり悔しいから、1番多く人を呼んでいた時より、人を呼べて、“あー、マジでやり切ったな!”って思いたい。グループとして“どうなりたいのか?”と訊かれると、せっかくロックもやってるし、ほかのアイドルが出れないようなバンドのフェスとかへ出させてもらったりもしてるので、もっと強くなって、PassCodeさんや我儘ラキアさんみたいな、とにかく強いグループになりたい。欅坂(46)さんとかロッキン(<ROCK IN JAPAN FESTIVAL>)に出てるじゃないですか。そういうアイドルだけど、アーティストみたいな枠になれたなら、もう死んでもいいです。“この人生に悔いなし!”って。そうなれる可能性はあると思っています。
【ツアースケジュール】 <1st Asia Tour 2024『REBOOT』>
9月21日(土)Banana Hall【大阪】
9月23日(月・祝)X-HALL【名古屋】
9月29日(日)杰克音樂 Jack's studio【台北】
10月5日(土)柏PALOOZA【千葉】
10月14日(月・祝)育音堂音楽公園(YUYINTANG PARK)【上海】
11月4日(月・祝)西川口Hearts【埼玉】
12月7日(土)Club JAMMER'S【群馬】
12月8日(日)HEAVEN'S ROCK Utsunomiya 2/3(VJ-4)【栃木】
12月22日(日)ステラボール(バンドセット公演)【東京/ファイナル】