<年収の壁、こえてみる?>税金に関する制度の変更は、働き方を変える機会でもある
「年収の壁」は働くママたちにも大きな影響を与えています。「年収の壁」には税金や社会保険、配偶者手当に関わるいくつかの壁がありますが、パートやアルバイトで働く人が壁をこえて働かないようにしようとする問題があることは共通しています。おそらく近い将来に「年収の壁」の金額は上がる、もしくは撤廃されるのでしょう。そうなったときにママたちの働き方はどう変わっていくのでしょうか。お金や経済に詳しい、なかのアセットマネジメント代表の中野晴啓さんにお聞きしていきます。
「年収の壁」の引き上げは、働き方をリセットできるタイミング
――「年収の壁」の制度が変わることで、ママたちの働き方はどう変わるのでしょうか?中野晴啓さん(以下、中野さん):「年収の壁」が引き上げられる、あるいは今後なくなったとしたら、今よりも「もっと働こう」と思うでしょうね。「年収の壁」があることで働く時間を制限していたわけですから、それがなくなれば自由に働けます。働くモチベーションも上がるでしょうし、当然収入も増えていくでしょう。「年収の壁」の引き上げは、働き方をリセットできるタイミングといえるのかもしれませんね。
――「年収の壁」があることで、女性が自分の能力を発揮できないともいわれていますが、その状況も変わりそうでしょうか?
中野さん:女性だから男性だからという考えはなくさなければいけないのが今の普遍的正義ですし、もちろん男女に能力差があるはずもないことです。もし自分の能力に気づいていなくても、仕事を始めたら意外な面が発見できるかもしれませんし、新しい自分を見つけるという意味でもスタートするいい機会かもしれませんね。仕事の向き不向きはありますが、高い能力があるのにそれを制限するのは明らかな社会的損失なのです。
――働いて収入が増えると生活に余裕が出ますし、「意外にたくさん働ける」という気づきがあるかもしれませんね。中野さん:1人ひとりのママさんが、様々な面でより豊かに充実した人生を実現させたいと気付くきっかけにもなると思います。今は子育てがあって仕事に時間が取れないとしても、また結婚前、あるいは出産前のように一生懸命働いて世の中のために役立ちたいと思うかもしれません。自分のやりたい仕事があって以前のように頑張りたいと改めて思うならば、「年収の壁」を一切気にすることなく働くべきだと思います。
年収の壁がなくなる可能性も踏まえて、将来に向けて働き方を考えよう
――年収の壁が変わるにあたり、ママたちは労働に対してどのような意識でいればいいでしょうか。
中野さん:社会構造として労働はなくてはならないものですが、そこに楽しさや喜びを見出していくことが、あたりまえの社会文化に変えていくことが日本の明るい未来への第一歩でしょう。 自分が働きたいだけ働くような文化がママさんたちに定着すれば、日本はどんどん変わっていくでしょう。好きな仕事を好きなだけしているママを見ていれば、子どもたちだって働くことに希望が持てるのではないでしょうか。年収の壁は今の時代にそぐわない制度といえますし、男女関係なく意欲がある人が働くことを阻害するような制度はあってはならないと思います。
日本の社会制度もそうですが、女性たちは人生を充実させるため、自分やお子さんの将来のためにも、ここで一度目先の納税や社会保険負担にこだわるよりも、長い人生軸で考えて、思い切り仕事をすることの意義を考えることが大切になってくるのではないでしょうか。
編集後記 ママたちが働くということは労働者を増やすことにつながり、この先の日本が直面すると考えられる大きな問題解決への足がかりになりそうです。また働くことで収入がアップすれば、生活水準を上げることにもつながるでしょう。「年収の壁」が議論されている今は、働き方を考えるいい機会といえそうです。
※取材は2025年3月に行いました。記事の内容は取材時時点のものです。