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新インボイス制度に対応|通勤手当・日当・交通費の会計処理ポイント

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出張イメージ

「インボイス制度によって交通費の精算方法が複雑化した」「日当や通勤手当の扱いの条件が分かりにくい」と、頭を悩ます経理担当者も多いのではないでしょうか。2023年10月から始まったインボイス制度によって、経理担当者や個人事業主の、日常的な交通費関連の処理が大きく変わりました。

さらに、仕入税額控除の要件が複雑化したことで、会計処理のミスや税務リスクを負う可能性も高まっています。

本記事では、通勤手当・日当・交通費の基本的な違いからインボイス特例の活用方法まで、経理の実務に必須の知識を分かりやすく解説します。自社制度の整備や従業員への周知まで役立つポイントを網羅しているため、ぜひ最後まで確認していきましょう。

通勤手当・日当・交通費とは?基本的な区分と支給方法

企業が従業員に支払う費用の中でも通勤手当・日当・交通費は、それぞれの支給目的や非課税限度額、経理処理方法が異なります。また、インボイス制度の導入によって、各項目の区分を正確に理解することが消費税の仕入税額控除を適切に行う上で一層重要となりました。

万が一、誤った区分での処理を行うと税務トラブルを招く恐れもあるため、正確な会計処理を行いましょう。
 

通勤手当と出張交通費の違い

通勤手当と出張交通費の性質は明確に異なります。通勤手当は、月ごとに計算し、給与に上乗せする形で支給されることが一般的です。

一方、出張交通費は営業活動や出張などで、従業員が立て替えて支払った後に領収書などを添付した上で精算します。

なお、通勤手当の非課税限度額は以下の通りです。

公共交通機関の場合:月額15万円

自動車通勤の場合:片道距離に応じた金額(例えば、10km以上15km未満は月7,100円)

上限を超える部分は給与所得として課税対象となるため、注意しておかなければなりません。会計処理上の区分を明確にしないと税務署から指摘を受ける可能性もあるため、清算方法の違いや従業員への周知を徹底しておきましょう。
 

日当・実費精算の取り扱いの違い

出張の際、交通費や宿泊費とは別に「日当」が支給されることもあるでしょう。日当は、出張先で発生する食事代や移動中の軽微な支出などを補填として、固定額が支給されます。日当の額は、役職や地域に応じて定められていることが多く、原則として領収書の提出は不要です。

一方、実費精算は実際に支払った費用を、領収書に基づいて精算します。主に、交通費や宿泊費などが対象となりますが「立替え」「仮払い」と、方法は2つです。

まず、立替えは従業員の資金で支払い、後日会社に請求します。次に、仮払いは概算額を受け取った上で、出張後に実際の支出額との差額清算が必要です。いずれにせよ、金額や支出したことが分かる領収書などを保存しておきましょう。

交通費に関するインボイス制度の適用範囲と特例

2023年10月から導入されたインボイス制度によって、消費税の仕入税額控除のルールが大きく変わりました。原則、適格請求書(インボイス)の保存が控除の要件となり、交通費の精算も例外ではありません。

一方、公共交通機関のようにインボイスの取得が難しいケースもあり、特定の取引では帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められる特例措置が設けられています。ただし、使用する交通機関によっては対象外となるものもあるため、交通費精算におけるインボイス制度の基本的な考え方や重要な特例の把握が必要です。
 

インボイス制度における交通費の基本的な考え方

交通費において仕入税額控除を受けるためには、基本的にインボイスの保存が必要です。とはいえ、すべての交通費にインボイスの取得を義務付けるのには無理があるでしょう。

例えば、自動券売機での切符購入やバス運賃の支払いなど、インボイスの交付が難しいケースも多いため現実的ではありません。そのため、一定の要件を満たす公共交通機関の利用、従業員への出張旅費等の支給はインボイス不要とし、帳簿の保存のみで仕入税額控除が認められます。

交通費の処理については、基本を理解した上でどのケースに特例が適用されるのかを正確に判断できることが大切です。
 

公共交通機関利用時の「インボイス不要」の特例とは

公共交通機関利用時の特例によって、インボイスが不要となるのは「公共交通機関特例」と「出張旅費等特例」の2つです。まず、公共交通機関特例では、1回の取引の税込価額が3万円未満の公共交通機関を利用した場合に適用されます。

船舶やバスなどの公共交通機関はインボイスの交付義務がないため、利用者はインボイスを受け取る必要がありません。そのため、仕入控除を受けるためには帳簿への記載に加え、摘要欄などに「公共交通機関特例」対象が分かるように記載しておきましょう。

次に、出張旅費特例では「通常必要と認められる」出張旅費や宿泊費、日当、通勤手当については特例が適用されます。特例は金額に上限がなく、3万円を超える場合でもインボイスの保存が不要となるため、帳簿への記載のみで仕入税額控除が可能です。

なお、企業が従業員へ支給することが前提であり、コーポレートカードなどで企業が直接交通機関等に支払う場合は適用されません。
 

タクシー・航空券などインボイスが必要なケース

交通機関の中でも、タクシーや飛行機は公共交通機関特例に含まれないため、原則として金額にかかわらずインボイスの交付を受けなければなりません。タクシーの場合、運賃や消費税額のみ記載された簡易インボイス、航空券の場合は適格請求書として必要事項をすべて記載した通常のインボイスが必要です。

ただし、個人タクシーなどインボイス登録をしていないケースでは、経過措置期間中(2023年10月~2029年9月)のみ一定の割合で仕入税額が控除できます。なお、海外出張で国際航空券を利用する場合は、もともと消費税がかからないため仕入税額控除の対象外です。

また、会社が直接航空券を購入する際には、領収書だけでなく搭乗券などの日付確認書類も合わせて保管するなど、方法が異なる点に注意しておきましょう。

通勤手当・日当などの会計処理と消費税の取り扱い

通勤手当・日当などの交通費は、会計処理や税務上の取り扱い、特に消費税の観点から注意しておかなければなりません。例えば、通勤手当における所得税の非課税枠や日当の出張旅費等特例の適用など、異なるルールの把握が必須です。

それぞれのルールを正確に理解することが適正な経理処理とコンプライアンスの遵守になるため、しっかりとポイントを押さえておきましょう。
 

通勤手当は課税対象?非課税?

通勤手当は会計上において費用計上される一方、所得税法上は一定の限度額まで非課税です。非課税限度額を超えて支給された分は従業員の給与所得として所得税・住民税の課税対象ですが、通勤手段によって異なります。

例えば、電車やバスなどの公共交通機関を利用する場合、合理的な経路や方法で計算された運賃等は1ヶ月あたり15万円までが非課税です。

また、マイカーや自転車などで通勤する場合、非課税限度額は片道の通勤距離に応じて以下のように細かく定められています。

片道2km未満は全額課税

2km以上10km未満は月4,200円

ただし、駐車場代は対象外であるため注意しておきましょう。なお、時給や日給に通勤手当分を含めて支給している場合、支給されるすべての金額が給与所得として課税扱いとされます。
 

日当の処理とインボイス要否の考え方

出張時に支給される日当は、旅費規程に基づき「出張旅費特例」に該当すればインボイスがなくても帳簿のみの保存で全額控除できる場合があります。ただし、日当額を高額にするなど、実態にそぐわないとみなされた場合は課税されるリスクがあるため注意が必要です。

そのため、実務面では地域や出張期間、役職に応じた妥当な金額を設定し、経理担当者が定期的に規程との整合性をチェックすることが望ましいでしょう。注意点として、役員・従業員全体を通じて妥当性のある社内規程に基づいたものか、同業種・同規模の他社と比較して高額でないかなどを考慮しておく必要があります。
 

実費精算の交通費と課税仕入の要件

実費精算では、従業員が立て替えた費用を領収書・レシートなどを添付することによって精算します。仕入税額控除を受けるための要件は状況によって異なりますが、基本的に会社は会社宛てのインボイスを保存しておかなければなりません。

仮に、従業員が受け取った宛名が従業員の個人名義であった場合、会社はそのままでは仕入税額控除を受けられないでしょう。ただし、従業員が作成した「立替金清算書」や「出張旅費精算所」など立替の事実が分かる書類と、従業員宛てのインボイスを保存しておくことで控除が可能です。

また、他にも以下の特例があります。

公共交通機関特例

入場券等回収特例

出張旅費等特例

これらの特例は、ルールを理解した上で清算方法に応じた適切な処理を心がけましょう。

インボイス制度対応で企業が気をつけるべきポイント

インボイスが制度化されて以降、企業は仕入税額控除を受けるための証憑管理や帳簿記載に注意を払わなければいけません。中でも交通費の処理は、複数の特例の存在や適用の判断など、管理が複雑化しているため、特に正しい知識を付けた上でルールを遵守しておく必要があります。

ここでは、企業がインボイス制度においてスムーズに対応でき、リスクを管理するための注意点として気を付けておく点について解説していきましょう。
 

経費精算書の保存と証拠書類の整備

インボイス制度によって、経費精算に関する書類の適切な保存は、仕入税額控除の適用や税務調査への対応において重要なポイントです。法人税法および消費税法に基づき、企業は経費精算に使用した総勘定元帳などの帳簿や根拠となる領収書、レシートなどの証憑書類を、原則7年間保存しておく義務があります。

保存対象となる書類は決算書類以外にも契約書、注文書、そして経費精算で提出された個々の領収書やインボイスなど、非常に広範囲です。また、欠損金の繰越控除を適用する場合は、帳簿書類の保存期間が10年間となるため、該当する企業はより長期間での保存が必要となるでしょう。

なお、保存すべき領収書などを紙で保管すると量が膨大になるため、電子帳簿保存法を活用し、スキャンしたデータを安全に管理する方法が注目されています。
 

従業員精算時の対応マニュアル整備

インボイス制度に対応するためには、経理担当者のみならず経費精算を行う全従業員が詳細なルールを覚えておかなければなりません。そのための最も効果的な手段の一つとして、インボイス制度に対応した経費精算マニュアルの作成、社内への周知徹底が重要です。

マニュアルを作成することで、従業員の疑問解消や申請ミス、経理部門の問い合わせを軽減することにもつながり、結果として内部統制の強化や業務効率化も期待できます。

記載しておくべきポイントは以下の通りです。

インボイスの要否判断

インボイスの宛名

領収書がない場合の代替手段

公共交通機関特例などの具体的な帳簿への記載方法

なお、マニュアルは研修の実施や社内ポータルサイトなどを通じて、全従業員がいつでも確認できるようにしておきましょう。

まとめ

通勤手当・日当・交通費の取り扱いは、インボイス制度の導入によって経理担当者の実務に大きな変化をもたらしました。仕入税額控除を受けるためには、原則としてインボイスの保存が必要なものの「公共交通機関特例」や「出張旅費等特例」などの例外措置も把握しておかなければなりません。

また、通勤手当には所得税の非課税限度額があること、日当は通常必要な範囲内での支給が求められることなど、それぞれの項目によって判断基準も異なります。さらに、適切な証憑書類の管理と保存も、税務リスクを回避する上で欠かせません。

これらの複雑なルールに適応するためにも、企業は明確な経費精算マニュアルを整備し、従業員への周知徹底を図ることが重要です。本記事で解説した各種費用の区分や特例の適用要件、会計処理のポイントを押さえ、インボイス制度での交通費関連業務を効率的かつ正確に進めていきましょう。

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