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キャリアにつながる「学び」とムダにしてしまう「学び」

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キャリアにつながる「学び」とムダにしてしまう「学び」【求人ボックスジャーナル】はたらき方やキャリアを考える機会を創出するメディア

新年度が始まるこの時期、個人でも転職や異動・昇進などで環境が大きく変わりやすいタイミングです。こうした節目に「新しいことを学びたい」「今度こそスキルを身につけよう」と考える人は少なくありません。環境の変化に合わせて、自分自身をアップデートしたいと思うのは自然なことです。

しかし一方で、はじめた「学び」をうまく活かせず、時間やお金ばかりがかかってしまった──そんな悔しい経験を持つ人も少なくないでしょう。

では、「学び」をこれからのキャリアにつなげられる人と、そうではない人の違いはどこにあるのでしょうか。そのヒントを、転職サイト「リクナビNEXT」の元編集長で、30年以上にわたり中途採用に携わってきたキャリアのプロ・黒田真行さんに伺いました。

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「学び」の前に、「To Be(なりたい自分)」を描くこと

新たな知識やスキルを得るには、「時間」も「お金」もかかります。つまり、「学び」とは、自分の資産を投資する行為です。投資である以上、リターンを見据えずにスタートを切るのは非常にリスクが高いことです。だからこそ、「学び」に取り組む前には立ち止まって考える必要があります。

そこでまず問うべきことは、「何のために学ぶのか?」ということです。たとえば、「英語を学びたい」と思ったとします。その背景に、「海外クライアントと直接やり取りができるようになりたい」「グローバル案件を担当したい」「外資系企業に転職したい」といった明確なビジョンがあるなら、必要なスキルやレベルは自ずと見えてきます。

一方、「周りが勉強しているから」「いつか使うかもしれないから」といった漠然とした動機だけで始めると、自分がどの場面で・何のためにその知識を活かしたいのかが明確にならないまま進んでしまいます。そのため、たとえTOEICでスコアが上がったとしても、それをどのように仕事に結びつけるかという視点が欠けているため、目指すべきキャリアに活かせず、結果として宝の持ち腐れに終わってしまうのです。

この差を生むのが、「To Be(なりたい自分)」のイメージを持てているかどうかです。自分がどんな仕事をして、どんな場面で、どんなふうに活躍していたいのか──その理想像が描けていれば、今の自分とのギャップが明確になり、そのギャップを埋めるために“何を学ぶべきか”が、自然と見えてきます。

このように、理想の姿から逆算して今やるべきことを考える思考法を 「バックキャスティング(逆算思考)」 と言います。将来像を明確にすることで、今の取り組むべき行動や優先順位が明らかになります。

バックキャスティング(逆算思考)の具体的なステップ

では、バックキャスティングとは、どのように進めていくべきか解説しましょう。

1. 理想の「なりたい自分」を描く(目的の明確化)

いつまでにどうなっていたいのか。未来における「なりたい自分(あるべき姿)」を描きます。このとき重要なのは、現在の制約やリソースにとらわれずに、自分が本当に望む姿(理想像)を具体的に言語化することです。

2. 現在とのギャップを洗い出す

理想の姿と今の自分を比較します。そのうえで、ギャップを明確にします。どんなスキルや知識が足りないのか、どんな経験や人脈が必要なのかを整理します。
たとえば、以下の観点を参考にすると、必要なリソースや課題がより具体的に把握しやすくなります。

必要となる新しいスキルや知識 取得すべき資格や経験 構築すべき人間関係やネットワーク 向かうべき課題や障壁 3. ゴール達成までのマイルストーンを逆算する

理想の未来から現在へと時間軸を逆算して、段階的な目標(マイルストーン)を設定します。たとえば、10年後の理想像がある場合は、7年後、5年後、3年後、1年後……と中間地点を設けましょう。それぞれの時点で「どこまで到達しているべきか」具体的に考えることで、長期目標が現実味を帯びてきます。

4. 実行可能なアクションプランに落とし込む

逆算して見えてきたマイルストーンをもとに、日々の行動に落とし込んでいきましょう。特に直近1年以内の行動計画は、なるべく具体的かつ測定可能な内容にすることがポイントです。

5. 実行とフィードバックを繰り返す

プランを立てたら、まずは実行。そして必ず定期的に振り返りを行いましょう。計画通りに進まなくても問題ありません。むしろ、進捗をみながら柔軟に軌道修正していく姿勢こそが、長期的な成長につながります。

「計画は書き換えていい」という前提を持つことが大切です。だからこそ、まず描いて、実行して、改善する。そのために前倒しで進行することをオススメします。そして、このサイクルを回すことが、人生の時間をより有意義に使うための鍵になります。

「学び」が価値ある出会いをつくり、人生を豊かにする

理想の未来に向けて学びを積み重ねること。それは単なるステップアップやキャリアアップのためだけではありません。本当に大切なのは「誰かと出会ったときに、その人の力になれる自分でいられるかどうか」にあると、私は考えます。

どんな知識や視点を持っているか。どんな言葉をかけられるか。どんな行動で相手を支えられるか。そうした 「できること」が備わっていれば、出会いの中で相手とより深く関わることができ、その関係性は、より豊かで意味のあるものへと深まっていきます 。

そして私は、人生の価値とは、そうした出会いの中で、どれだけ人の役に立ち、価値を生み出せたかで決まるものだと考えています。 肩書や財産ではなく、人とのつながりの中で育まれる信頼や感謝こそが、自分の人生の証になる のではないでしょうか。

だからこそ、自分にできることを増やしておくこと。それは、人生で出会う人との時間を、かけがえのないものに変えていくための、最も確かな準備だと思います。

プロフィール

黒田 真行

ルーセントドアーズ株式会社 代表取締役

1988年、株式会社リクルート入社。「リクナビNEXT」編集長、 リクルートエージェント HRプラットフォーム事業部部長、株式会社リクルートメディカルキャリア取締役を歴任した後、2014年にルーセントドアーズを設立。35歳以上向け転職支援サービス「Career Release40」を運営している。 2019年、ミドル・シニア世代のためのキャリア相談特化型サービス「CanWill」を開始。

代表著書 『35歳からの後悔しない転職ノート』『転職に向いている人 転職してはいけない人』

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