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一人がドリブルでゴールまで行くだけじゃなく、ワンツーなど連携を習得させたい。コンビネーションプレーを教えるおすすめメニューは?

サカイク

いまは低学年だからお団子サッカーでも良いけど、中学年以降は公式戦も始まるから1人でドリブルしてゴールまで行けることは少なくなるはず。

ワンツーとか、チームメイトとの連係プレーを教えたいが、おすすめの方法はある? というお悩みをいただきました。

今回も、ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミーダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた池上正さんが、5歳でもお団子にならずパスをつなげるスペインの例を挙げて、おすすめの教え方を紹介します。
(取材・文 島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

 

<お父さんコーチからの質問>

こんにちは。子どもが入団しているチームで指導をしています。(少年団)

お団子サッカーから抜け出してチームとしてサッカーをするために、周りとの連携を覚えてほしいのですが、どのように教えればいいでしょうか。

中学年以降は公式戦も始まり、相手の守備のレベルも高くなって、これまでのようにドリブルで前進してゴールまで行けることばかりではなくなる年代です。

ワンツー(壁パス)など、チームメイトとの連携を身につけさせたいのですが、コンビネーションプレーを教えるのにおすすめの方法はありますか?

拙い文章ですみませんが、よろしくお願いします。

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

団子サッカーを乗り越える、卒業させたいという悩みはここ数十年、何度もいただいた質問です。それを説明する際に私がいつもするのが、スペインリーグのビジャレアルに所属する佐伯夕利子さんが、アカデミーでプレーする子どもたちの映像です。

 

■スペインでは5歳児でも団子にならずパスをつなぐことができる

5歳児が見事にスペースに動き、ボールをさばきパスをつなぎます。日本でいえば、団子にならず、子どもたちが広がってパスしています。そういう映像を見せると、日本の指導者の皆さんはびっくりされます。

どうしてそうなったかというと、毎回そのプレーヤーたちにコーチが問いかけるのです。団子になっている瞬間にプレーを止めて「はい、みんな、今どうなってますか?」と尋ねます。

そうすると、みんな「団子になって固まっているから、うまくいかない」とか「固まっているから前に行けない」「離れているほうが得だ」などといろいろな意見が出てきます。

どうしたほうがいいかを、一方的に大人の言葉で説明するのではなく、子どもたちの言葉で納得させていくわけです。

 

■気づいた子たちが外に広がる、それでもパスが出なかったときにコーチが介入するようにしよう

そうやって考えてもらうと、1人、2人と外に広がってくれる子どもが出てきます。そういったプロセスを通って行くと、今度は外に広がった子どもにパスが来ないとか、やっぱり1人でドリブルで行きたい場面が出てきます。

そうすると、ほかの子どもが「せっかく広がったのに、どうしてパス来ないんだ」とか「パスしてよ」と言い出します。

そういう話が出てきたら、コーチが入って「では、そんな時はどうする?」といったことを聞いてあげます。そういったことの繰り返しで、あのビジャレアルの5歳の子たちは団子じゃなくなっていくわけです。

なぜそのように上達するのかは、佐伯さんの著書『教えないスキル』(小学館新書)に書かれているのでぜひご一読ください。

 

■コーチがアドバイスすればすぐに変われる魔法の言葉や練習メニューは無い

ただし、すぐにできるようになったわけではありません。3年ほどかかってあんなふうになるのです。

皆さん、コーチがアドバイスすればすぐ団子じゃなくなると思われるようで、最短で変われる魔法の言葉や練習メニューを探されます。しかし、特効薬みたいなものはありません。

団子サッカーを卒業していくには、まずは子どもたちが団子になっている自分たちをどんなふうに見ているか(受け止めているか)に注目してみてください。団子になっている自分たちを理解しているか。

団子になったままでは、いつもテレビで観ているJリーグとか日本代表とか大人がやっているようなサッカーとちょっと違う。それと比べると、人と人の間が近すぎるから広がろうとか、そういった理解をできるように促しましょう。

だから「今どう見えてますか?」と尋ねるのです。

 

■中学生年代でも「今、何を見たらいいの?」という質問に意見が出てこない理由

先日、中学生を指導した時「この練習で何が大事ですか?」と尋ねたら、「周りを見ること」と言った子がいました。中学生でもそんな表現になってしまいます。

「じゃあ、周りを見るってどういうこと?」と聞くと、「首を振る」と言う。自分たちが指導者に言われている言葉をそのまま言うのです。

そこで「じゃあ今、何を見たらいいの?」という質問に変えました。すると、何も意見が出てきませんでした。もっと聞いても「スペース」くらいです。一番最後に、ひとりの子が「味方」と言いました。

パスをするのは味方ですから、どこにいるかな?と探さなくてはなりません。でも「間に相手がいるからパスが出せないよ」とか「じゃあドリブルするか」になって、次に「違う味方を探そう」と考えて、そういう順番になってくれたらと思います。

つまり「認知・判断・行動」という順番です。

この点を考えると、間違いなく小学生の間に「認知・判断・行動」の流れがトレーニングで理解されていません。

練習や試合で「周り見ろ」とか「首を振れ」は言われてきたけれど、ただ首を振っているだけで、何を見て、その時にどう判断するかといったことを考えられない、感じられないようです。

 

 

■「認知・判断・行動」の流れを理解させるための練習

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

次に、そのための練習についてお伝えしましょう。

ご相談者様は4年生以下を指導されているようです。この年代で「味方をどう使うか」という話で言うと、2人から3人くらいまでの関係で十分です。

まずは2対1。2人で相手1人をかわすためには、2人が近い距離でいると相手は守りやすい。ところが、攻撃する2人が広がってしまうと1人で守るのは大変です。

このことを認知できるトレーニングをやる必要があります。

したがって、例えば2対1の練習では幅(グリッド)を決めて、「この幅から出たらダメよ」と指示します。その幅を狭い幅の時、広い幅の時と両方つくってやってもらいましょう。

そこで「さあ、どっちのほうがやりやすい?」「どっちのほうがいいかな?」と尋ねます。そんなことが体験として必要かもしれません。

コンビネーションプレーはワンツーを習得してほしいので、ミニゲームの際は「ワンツーからシュートを入れると5点ね」などと条件を付けます。そうすると、ワンツーをすることはいいことなんだと伝わります。

常に「どうすれば伝わるか?」を考え、さまざまな工夫をしてください。

 

池上 正(いけがみ・ただし)「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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