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『黒執事 -緑の魔女編-』声優・駒田航がドイツ語指導・監修としての関わりを語る|「役者でありながら、日本語だけでなく、英語とドイツ語の意味を理解し話せるからこそ、演出の方向性も伝えられるのだと思います」

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

2025年4月より放送中のアニメ『黒執事 -緑の魔女編-』で、ドイツ語の演技指導、監修をしていたのは、声優の駒田航さん。アニメでは演者としてクレジットされていましたが、実はキャラクターが話すドイツ語全てのガイド音声を録り、アフレコ現場ではドイツ語の指導をするなど、スタッフとしても大活躍だったそう。今回は駒田さんに、裏方での仕事にフィーチャーしてお話を聞きました。

 

 

【写真】『黒執事 -緑の魔女編-』声優・駒田航がドイツ語指導・監修として関わりを語る/インタビュー

-緑の魔女編-第1話の方言おじさんは自ら志願

──駒田さんが、アニメ『黒執事 -緑の魔女編-』で、ドイツ語の指導・監修をされているのを、本作のキャストインタビューで知りました。

駒田航さん(以下、駒田):メインキャストの皆さんが、ありがたいことにインタビューでよく僕の名前を挙げてくださっていたみたいなんです。僕も、その報告を方々から受けていたので、そんなに言ってくださっているんだ!と思いました。

──最初はどのようなオファーだったのですか?

駒田:『黒執事 -緑の魔女編-』は、舞台がドイツで、ドイツ語を使うシーンが多いらしいという話は聞いていて、最初は、その翻訳も含めてお願いできないかというオファーだったんです。ただ、僕は英語とドイツ語のセリフを巧みに表現することはできますが、セリフの翻訳はちゃんと専門の方にお願いすべきだと思っているので、それは正直にお伝えしました。

その結果、翻訳はドイツ人と日本人を両親に持つ僕の親友にお願いしていて、僕は、その翻訳を元に、キャストの方にお渡しするガイドを録り、アフレコ当日は、皆さんが演技をする上で言いづらいところがあったり、ニュアンスを調整したいかもと思った時に、こうすれば良いのではないかという提案をしたりしていました。

 

 

──翻訳は、専門の方に任せたほうがいいんですね。

駒田:そうですね。僕自身が、自分の力を過信していないというか。ネイティブに近い音を再現はできるけど、決してネイティブではないので、ネイティブのような表現が必要であれば、実際のネイティブの方に文章を作ってもらったほうが正解だと思うんです。

なので、僕を使っていただける理由としては、プレーヤー(役者)でありながら、英語とドイツ語の文章の意味がわかっていて、それを話すことができるからで、このシーンでは、こういうふうに演じるべきだという方向性もわかるし、それを伝えることができるからなんだと思います。ネイティブな方がしゃべって、それを「どうぞ、言ってください」と言われても、なかなか難しいと思うんです。しかも今回はセリフがどれも長かったので(笑)。

──方言指導も同じですよね。その地方の方のほうが正確かもしれないけど、その地方出身の役者の方が指導に入っている印象があるので。役者のことをわかっていて、伝え方がわかる方のほうがいいんでしょうね。ドイツ語と英語ができる方も少ないでしょうし。

駒田:もちろん役者で、外国語に長けている方は他にもいらっしゃるんですけど、ニュアンスを伝えたり、短い時間でセリフを言いやすくしたり、完成度を上げるためにその場で少し言葉をチェンジさせるのも、ある種のスキルだと思うんです。もう10年以上、そういう現場に携わってきたので、その積み重ねが、今、色んなところから声を掛けていただける土台になっていると思います。

 

 

──外国語指導の仕事も多いのですか?

駒田:昔から、毎年何件もそういったお仕事はあります。なんとなくですが、サブスクが主流になってきてからさらに増えた印象がありますね。NetflixやHulu、Disney PlusやAmazon Primeなどが出来てから、キャラクターが外国語をしゃべるシーンをそのまま再現するというのが増えたと思うので、僕の需要も増えているのではないかという気はしています。

──確かに、アニメが世界で見られるようになって、キャラクターが日本語以外を話すシーンが増えたかもしれません。今回の『黒執事 -緑の魔女編-』でも、異国に行った感じを、景色以外でも感じさせるように、最初はドイツ語をしゃべり、本当はこの言語でしゃべっているというのを認識させてから、日本語へシフトしていくような演出でした。

駒田:原作はずっと読んでいるのですが、かなりリサーチした上で情景などが描かれているのがわかります。世界観をすごく大事にされているんだなと感じていたし、その情熱はわかっていたので、今作では、その橋渡しができればと思っていました。

──第1話では、ドイツ語で方言をしゃべるおじいさんを演じられていましたが、あのおじいさん、めちゃくちゃしゃべっていますよね(笑)。

駒田:あれはものすごく難しくて、僕も別に訛ったドイツ語をしゃべれるわけではないんです(笑)。翻訳してくれた親友にも聞いたり、彼の伝手を辿って、本来はこう言うけど、この部分は濁すらしい、アクセントはこっちが強くなるらしいなどの情報を入れてから演じました。

 

 
幸い、このシーンでは、セバスチャンが「ドイツ南部の方言でございます」とシエルに教えるので、方言をしゃべっているんだなというのが視聴者に伝わるところまで持っていければいいなと思っていたんです。なので、本当にそこの出身の人が聞いたら、当然なんちゃってのニュアンスになるとは思うんですけどね……。

──セバスチャンとシエルが会話している裏でも、ずーっとしゃべっていたのが面白かったです。

駒田:他のキャラクターのガイド音声は、皆さんが演じやすいよう、おかしくない範囲で、少しゆっくりしゃべっているのですが、このおじいさんだけは、ゆっくりしゃべったとしても、絶対に誰も演じられないと思ったんです(笑)。なので、ガイドを録っている段階で、彼には僕を配役してくださいとお願いしました。収録時間中に終わらせるのであれば、駒田にやらせてくださいと(笑)。第1話のクレジットでは、冒頭で狩りの最中に人狼(ヴェアヴォルフ)の森に入ってしまう、ブリーゲルという男性キャラクターになっているんですけど、実はあのおじいさん役も僕がやっているんです。

 

 

何度リテイクを出しても雰囲気が悪くならない楽しい現場

──セバスチャンは、いろんな言語を操れると思うのですが、小野大輔さんのドイツ語はどうでしたか?

駒田:そもそもセバスチャンって、ドイツでもよく見る名前で、ヨーロッパ系の名前だと思うんです。そして、彼はこれまでもいろんな言語を話していて、どんな国の標準語もマスターしているだろうという前提があったので、一番ドイツ語っぽく聞かせなきゃいけないなと思いました。ただ、心配とは裏腹に小野さんの声自体が、震える、ディープな声をされていて、ドイツ語向きの音ではあったんです。すごく軽やかで気品のある音声ですけど、ピシッとハマったときの芯のある太い響きのニュアンスがとてもきれいだったので、いつも絶賛していました。

 

 

──セバスチャンは、どこか気品を感じました。ドイツ語はもっと強弱がある印象だったんですけど、それでも優雅だったのは、さすが執事だなと。

駒田:もちろん、さらさら〜っといかないように、アクセントを強くしてほしいところなどはお伝えしていました。逆に、ヴォルフラム役の小林親弘さんやヒルデ・ディックハウト役の渡辺明乃さんは、強めに張り上げる、怒鳴る系のドイツ語をやってもらっていて、それがドイツ語らしいドイツ語の張りになっていたと思います。逆にジークリンデ・サリヴァン役の釘宮理恵さんのかわいい声というのが、ドイツ語としては、一番難しかったです。

──ヴォルフラムとヒルデは軍人でしたからね。サリヴァンが、第1話で「この森の領主だ」と言うところは、ドイツ語でしゃべったあと、同じセリフが日本語になるというシーンでした。声質は変わらなくても、ドイツ語と日本語の違いは出ていたと思います。

駒田:ドイツ語シーンのジャッジは、僕に委ねられていたところがあって、釘宮さんだけではないんですけど、申し訳ないくらい「もう1回行きましょう」とリテイクをさせていただいたんです。本当に再現しにくい言葉に関しては、僕が言ったことをそのまま言う、オウム返し作戦で乗り切った場面もありました。皆さん耳が良いので、オウム返しをしてもらうと、断然言いやすそうで、スムーズにドイツ語の感じになっていくんです。

 

 
もちろん、お芝居としては、流れで録ったほうがやりやすいと思うので、オウム返しは最終手段だったんですけど。ただ、何度リテイクをお願いしても、「何でだよ」みたいな雰囲気には全然ならず、「ありがとう、もう1回行こう!」みたいな感じで先輩方が盛り上げてくださったので、本当に良い現場だなと思いました。

特に小林さんはすごく熱心に「もう1回、もう1回言ってもらっていい?」と聞いてくださいました。当日は一生懸命みんなで語学の勉強をしている学校みたいでした。本当に皆さん、勤勉だし、再現しようという意欲が強くて、流石先輩、素敵な方々だなぁと密かに感動していました。

──ちなみに、梶裕貴さんが演じているフィニアンも、ドイツの軍事施設にいたという過去が明らかになったので、ドイツ語はしゃべれる設定でしたよね。

駒田:梶さんが演じるフィニも声が高いので、ドイツ語感は薄まってしまいかねないんです。でも、すごく練習をしてきてくださったので、OKも早かったです。

──シエルはドイツ語を勉強しているという状況でしたが、坂本真綾さんはいかがでしたか?

駒田:シエルは頭が良いし、キャラとしても何でもできてしまうから、このくらいはいけちゃうかもなというところですり合わせていきました。で、その塩梅もお上手なんです。この単語で、悔しいというニュアンスが入っているので、悔しさを入れてくださいと伝えると、ご自分のニュアンスで入れてくださるので、素晴らしかったです。最終的にお芝居にニュアンスを入れるのは、僕ではなく演じているご本人なので、それがすごくお見事でした。

 

 

──アニメ『黒執事 -緑の魔女編-』をご覧になって、いかがでしたか?

駒田:もともとファンタジー作品が好きなので、途中で、こういう裏切り行為がある、などのどんでん返し含めて、原作で感じていた面白さが、アニメでもちゃんと再現されている!と思いました。外国の方に評価される理由って、この絶妙なファンタジー感と、日本のアニメのクール感なんでしょうね。

あと、セバスチャン含めて、キャラクターがみんな濃くないですか? セバスチャンを超える燕尾服のキャラはなかなかいないと思っています(笑)。長い歴史があるこういった作品に、いろんな役で参加させていただけて光栄でした。

──本当に、いろんな役で出られていましたよね(笑)。

駒田:はい。結果的にいろんな話数で様々な役で関われました。でもこの現場、日本語部分のアフレコがすごく早く終わるんですよ。これが長くやっている座組なんだなぁと感激していました。通常のアフレコがすぐ終わって、残りの時間でドイツ語をクリアするぞ!みたいな感じでした。

 

 

──役だけでなく、監修という立場で作品を終えた感想をお願いします。

駒田:とても楽しかったです。作品として良くなればいいなという気持ちがあったので、『黒執事 -緑の魔女編-』で、ドイツが舞台だったために、外国語のシーンで芝居がやりにくいだとか、全体の演者さんの勢いが落ちてしまったらイヤだなと思っていたんです。また世界中にいる視聴者の皆さんにも違和感なく楽しんでもらいたいと強く思いました。だからガイドもすごく作り込んみましたし、ガイドを録っている段階でも、翻訳をしてくれた親友といっぱい連絡を取っていたんです。なので、ちゃんと2人で打ち上げをしました(笑)。

──ちなみに駒田さんは、よくドイツに行かれたりするのですか?

駒田:それが日本に帰国してから、全然ドイツに行けてないんですよ。行くなら時間をたっぷり使いたいと思っているし、そろそろ本当に行きたいなという気持ちがあります。翻訳をしてくれた親友もそうですけど、オランダにも親友がいるので、友達に会いに、今すぐにでも行きたいです。

 
[文・塚越淳一]

 

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