日本で17年ぶり【土星食】見られるのはいつ・どこ? 博物館学芸員が見どころを解説 12/8は特別観察会も
紫金山・アトラス彗星が話題となった2024年の天体ショー。秋の夜長に何度も空を見上げた人も多いのでは?
天体観測にちょっと興味が出てきたみなさん、次のオススメは12月8日(日)に見ることができる「土星食」です。
あまり聞きなじみのない言葉でしょう。それもそのはず、日本で夜に観察できるのは17年ぶり。富山では22年ぶりで、今回を逃すと次のチャンスは2037年まで訪れないというレア現象なのです。
月が太陽を隠すのが「日食」、地球の影が月を隠すのが「月食」、そして、月が土星を隠すのが「土星食」です。実は、土星食そのものはそれほど珍しいわけではありません。2024年7月にもありました。が、日中の太陽が出ている時間帯のため、見ることができないのがほとんど。夜に観察できるのが、レアなんです。
というわけで、富山市科学博物館では夕方18時から特別観察会が行われます。日曜日の夕方、観察しやすい時間なので、家族や友人たちと一緒に空を見上げてみるのもよさそうです。
見どころやコツを科学博物館の学芸員に聞きました。
特別観察会「土星食を見よう」概要
開 催:12月8日(日)
時 間:18:00~19:00※時間内は自由に参加できます
場 所:富山市科学博物館前
参加費:無料
注意事項
※小学生以下は保護者同伴
※車は、北側駐車場を利用してください。城南公園南側駐車場(旧近代美術館横) は17:00に閉鎖
観察会は、富山市科学博物館の前で行われます。受付も現地で、特に事前予約などの必要はありません。屋外で寒さが予想されるので、防寒対策などをしっかりして参加してください。
当日は、科学博物館の公式YouTubeチャンネルでも土星食のようすを生配信します。雨天・曇天で観察できない場合は、解説会のみの開催です。
土星ってどんな惑星?
地球の約9倍の大きさ
2024年現在、太陽系の惑星として確認されている天体は8つです。
太陽に近いほうから、水星・金星・地球・火星・木星・土星・天王星・海王星で、1930年に発見された冥王星もかつては惑星と考えられていましたが、2006年8月に惑星の定義が明確化され、準惑星に分類されるようになりました。
土星は、それら8つの惑星のなかでは木星に次いで大きさを誇ります。赤道半径は6万268km。地球の約9倍の大きさがあります。
土星の“環”ってなに?
土星を思い浮かべる時に、ぐるっと星を囲む“環”をイメージする人も多いでしょう。
望遠鏡でこの環が見たのがきっかけで、宇宙や天文に興味を持つ人も少なくないんだそう。でも、この“環”って何か、知ってますか?
この“環”は1本の帯のように見えますが、実はたくさんの環が重なっています。外側からA環、B環、C環と3重になっていて、B環がいちばん明るく、C環はかなり暗くみえます。小さめの望遠鏡でも簡単に見えるのはA環とB環です。
さらに明るい環の外側にはE、F、G環、内側にはD環がありますが、とても暗いので、大望遠鏡や探査機でしか見ることができません。
“環”は何でできてる?
土星の明るい環は、小さな氷の粒からできています。粒の大きさは数mmから数mのものまでさまざま。
一方、暗く細い環のD、E、E、G環は、大部分が数ミクロン(1000分の1mm)の小さなチリの粒子でできています。
“環”がなくなることもある?
土星の環は、土星の公転軌道面から26.7°傾いています。土星はその傾きを保ったまま、太陽のまわりを約30年かけて1周します。そのため、土星と地球の位置関係によっては、環がほとんど見えない状態となります。
2024年は土星の環を横から見ることができるシーズンで、輪が棒のように細く、串刺しの団子のような姿の土星を見ることができます。2025年はさらに真横から見る位置となり、土星の環はほとんど見えない状態となります。天文ファンの間では「環の消失」とも呼ばれますが、決して環がなくなるわけではありません。望遠鏡で見ると、とても細く見ることができます。
土星食
月が土星を隠すと「土星食」
月が土星を隠す「土星食」。地球から見て月がその向こう側にある土星を隠し、一時的に見えなくなります。
日本では2024年7月25日にも土星食がおきましたが、太陽が出ている時間帯なので見ることはできませんでした。前回富山で夜に観測されたのは22年前の2002年3月20日でした。この日の富山はよく晴れ、夕方の観察しやすい時間だったそうです。
何時にどの方角で見られる?
12月8日(日)の月は、ほぼ半月の状態です。出現の時刻や月の高度、月の縁のどこに見えるかは、観察場所によって少しずつ異なります。
富山市中心部では18時27分頃から南の方向に見ることができます。月の高度は約40度です。
※環を基準に算出
潜入開始時刻:富山18時27分(東京18時19.2分)
潜入終了時刻:富山18時31分(東京18時20.5分)
出現開始時刻:富山18時45分(東京19時00.7分)
出現終了時刻:富山18時50分(東京19時02.0分)
富山では23分間の天体ショーですが、東京では約40分。地域によっても差があります。
観察のとき 何が必要?
土星は1.0等級の明るさがありますが、月の輝きに負けて、肉眼では見づらいかもしれません。出現の様子は、双眼鏡や望遠鏡を使うと観察しやすくなるでしょう。
車の往来や野生動物との遭遇にはくれぐれも注意し、安全で、他人の迷惑にならない場所を選ぶようにしてください。冷え込みも厳しいので、しっかり防寒の対策もしましょう。
土星食が見られない地域での楽しみ方
今回の土星食が見られるのは、日本の一部のみ。北海道や中国・九州地方の多くでは見ることができません。
ただし、土星食が起きない地域でも、月と土星がかなり近づくため見応えがあります。そして、鹿児島県垂水市・岡山市・石川県珠洲市・秋田市付近を結ぶライン上では、土星の一部だけが月に隠される「接食」という現象をみることができます。これも天体ファンにとっては魅力的な現象です。
次はいつ見られる?
次回の土星食、日本では2025年2月1日に起こると予想されています、この日も太陽が出ている時間帯なので見ることは難しいと考えられています。夜間に富山で観測できるのは、13年後の2037年3月です。
ちなみに、2024年12月は、8日(日)に土星食、14日(土)の未明にはプレアデス星団食(すばる食)、25日(水)未明にはスピカ食が見られます。
※プレアデス星団はおうし座にある散開星団で、和名では「すばる」と呼ばれています。肉眼でも5-7個の星の集まりを見ることができ、双眼鏡や望遠鏡で観察すると数十個の青白い星が集まっている様子がわかります。
※スピカは、おとめ座のモデルである女神デメテルが握る麦の穂先で輝く星
【富山市科学博物館】
住所 富山県富山市西中野町1丁目8-31
営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)