不登校の終わりと繰り返す遅刻。親のしつけが悪いと思われる?放っておかずに「見守る」難しさ
監修:室伏佑香
東京女子医科大学八千代医療センター 神経小児科/名古屋市立大学大学院 医学研究科 生殖・遺伝医学講座 新生児・小児医学 博士課程
付き添い登校が急に終わりを告げて…
次女が学校に行けなくなり、その後また学校に行けるようになってから数か月間、朝はずっと付き添い登校をしていました。
いつこの状況が変わるんだろう……と思っていたところ、思いがけないきっかけから付き添い登校は終わりを告げて、その後は小学校卒業まで一人で登校することができていた次女。
付き添い登校が終わってホッとしていたものの、次はまた違うことで頭を悩ませることとなってしまいました。
朝なかなか起きられない次女
付き添い登校時には、次女と相談して、「学校はいつ休んでもいいけど、宿題だけはやる」というルールを決めて、取り組んでいました。
そのルールを決めてからというもの、私自身は、朝に次女と「休む・休まない」のやり取りが減って今までより朝の負担が少なくなった……と感じていました。
ただ、付き添い登校が終わってから、今度は朝、なかなか起きられなくなることが多くなってきました。何度起こしても遅刻ギリギリかもはや遅刻……という感じで、対策を考えることにしました。
対策を考えるも、全くうまくいかないし、対立が深まる一方…
以前あった体のだるさや疲労感というのは減少してきていて、起立性調節障害か?とも思ったのですが、そういう症状はない様子。
話し合いが大事……とか自主性を重んじよう……などと思って、次女と対策を考え実行するも、なかなかうまくいかない。なんなら「早く寝てみよう」と私が言うと「そういうことは言わないで」と、次女もうんざりしてきている様子。
私が何か言うのが、コントロールされているように感じてしまうのか?次女から見たら、よほど口うるさい親になっていたと思います。
遅刻しないのは当たり前。ダメな親と思われそう…
私としては、次女の成長に目を向けて、周りの目を気にしないようにしていましたが、次女の遅刻が続くことで、「家庭での指導をしっかりしていないと先生に思われているかも……」という気持ちも拭えませんでした。
場面緘黙の次女は、あいさつどころか軽い会釈すらも返せない、お礼も言えない、固まって笑顔だって見せられない……という症状があり、こういうことに対して親のしつけが悪いと思う人も一定数いるんだろうな、というのはいつも感じていました。
朝起きられなくて遅刻してしまうのも、次女のペースで慣れていけば良いと思うのに、どうしてもこういう考えもムクムク湧いてきてしまうのでした。
次女に任せてみた。とにかく見ないようにして、何も言わないようにした。
でも、同時に私が焦ってもどうにもならないことはこの頃にはよく分かっていたので、周りに何と言われようが気にしないようにしよう!と思って、次女に任せることにしました。
次女を見ると気になってしまったり、「早く!」と言いたくなるので、もはや見ないようにしたりして……。結果、遅刻したりはしましたが、私も以前ほどイライラせずになんとかやっているという感じになりました。
見守る…って難しい
付き添い登校はなくなったけれど、だからといってスッキリ学校に行けているわけではなく、いろいろありつつ、ああだこうだと悩みながらほふく前進している感じで、ここまでやってきました。
次女が中学生になった今、夜更かしはするようになったし朝起きにくいのはまだありますが、学校を休むことは小学校の頃と比べてかなり減っており、次女の変化を感じます。
私はと言えば、周りに何か言われるのを恐れてしまう気持ちはどうしても出てきてしまいますが(やはり完全には拭いきれず……)、必要な時は支援しつつ、こういう変化のできる次女を信じて見守っていけたらと思いながら日々過ごしています。
同時に、本当の意味で信じて見守るってとても度量の広さが必要だな~と、難しさもひしひしと感じているのでした。
執筆/まりまり
(監修:室伏先生より)
まりまりさん、次女さんの朝起きられない状況と、それに対するまりまりさんの葛藤について、正直なお気持ちを共有してくださり、ありがとうございます。「家庭でのしつけが悪い」と思われるのではという不安や、見守りたい気持ちと急かしたくなる気持ちの間で揺れるのは、多くの親御さんが経験することではないかと思います。特に、場面緘黙のお子さん自身のもつ葛藤は、なかなか周囲には理解されにくく、日々の学校生活を乗り切るためのエネルギーは私たちが想像するよりもずっと大きいものかもしれません。朝の目覚めがスムーズでないのは、不安やストレスの影響で睡眠の質が下がっていることも関係しているのかもしれません。そのような奮闘する日々の中で、親御さんが「焦ってもどうにもならない」と現状を受け入れ、次女さんのペースを尊重する姿勢をとられたことは、次女さんにとっても安心につながったのではないかと感じます。
見守ることは本当に難しいことだな、と私自身も感じます。時に口出しし過ぎてしまうこともあるけれど、「今日はちょっと余裕があるから穏やかな気持ちで見守ろう」「今日はしんどいからちょっと距離を置こう」くらいの気持ちで、ご自身の気持ちも大切にしながら過ごしていけるといいですね。お子さんの成長とともに、少しずつ変化していくことを信じながら、どうかご自身もご自愛くださいね。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。