【夜行バスの旅】バスタ新宿から片道約9時間「3列独立シート&カーテン付き」で青森県弘前市に行ってみた
「バスタ新宿」は東京と全国各地を結ぶ日本最大のバスターミナルである。ここからどこへだって行けるのだ。バス通勤をしている私は「間違えたフリをして別のバスに乗ったら……」といつも妄想を膨らませている。
というわけで今回は、仕事後に22時20分発「ジャムジャムライナーJX931便 盛岡・弘前・青森行き」で弘前に行くぞォォオオオオ! 3列独立シートでカーテン付き。夜のうちに移動して翌朝7時40分頃には「弘前駅城東口」に到着するという。最高かよ!
それでは「金沢編」に続いて夜行バスの旅第2弾「弘前編」の始まりである!
・ジャムジャムライナーで弘前へ
冒頭でもお伝えしたように「バスタ新宿」は日本最大のバスターミナルだ。出発15分前集合ということで22時前にバスタに到着。時刻表を見ると同時刻に弘前・青森行きのバスが3本も出発することが判明した……
バス会社名なんて覚えてなくていいだろと思っていた私は、結局2台のバスの受付で「乗車名簿に名前がありませんね」と言われてしまった。スムーズに乗るためにはバス会社名・便名をメモしておくのが良いだろう。
その後、何とか無事にジャムジャムライナーJX931便に乗車。先述したように、今回は3列シートでカーテン付きだから超快適である。
片道料金は1万500円(バス運賃1万円・保険500円)。祝前日だったため4列シートでも9500円くらいだった。プラス1000円でプレミアムなシートを確保したことになる。
そういえば、寒さ対策でタイツを履いてきた。窓際席は少し冷えるからブランケット(ひざ掛け)があれば良かったが、慣れている方はアウトドア用のブランケットを持参している様子。勉強になります。
ちなみに前回の「金沢編」では4列シートの窓際に座ったことにより、途中休憩のサービスエリアにも寄れなかったが……
今回は夜中の2時50分に福島と宮城の県境にある「国見SA」で一旦バスをおりた。静まり返った深夜のサービスエリアの独特な雰囲気ってなんかいいですよね。
レストランは営業時間外だったが売店は営業中。「蛇口からりんごジュース(400円)」を1杯飲んでバスに戻った。
・到着
弘前駅城東口にはほぼ定刻(7時40分)に到着。ってか、いつも最高に気持ちよく眠れそうなタイミングで到着するのは何故なのだろうか。あと2時間くらい乗っていたい。というわけにもいかないのでバスを降りた……めっちゃ眠い!
そして、さすが雪国……「ようこそ青森へ」の看板の前にも雪が積もりまくっていた。とりあえず弘前駅の表玄関である「中央口」へ向かうことに。ちなみに本日は2025年3月20日「春分の日」である。
・りんごの街
弘前は「りんごの街」らしい。郵便ポストには真っ赤なりんごが乗っていて、男女2人組の銅像のタイトルは「りんごの風」。そういえば、駅構内にもデカいりんごがあった。
それはさておき、朝8時だと観光案内所も開いていない。
・徒歩で観光
「駅前の観光案内所で自転車をレンタルしてから出発」という予定を変更して徒歩で市内を巡ることに。ただ、観光案内所のレンタサイクルは4月から(雪のため)とのことなので、案内所が開いていても結局徒歩でまわることになったようだ。
アプリ曰く「気温1度(体感温度はマイナス2度)」。とにかく寒いので地下道へ……
…………
1分で地上に出た。
・虹のマート
寒い……そのまま向かったのは、8時から営業している「虹のマート」。鮮魚店や惣菜店など、弘前市民の台所として知られる食品市場である。創業は1956年らしい。
ブラブラ散策していると「朝ラーやってます」と書いてあるのぼり旗を発見……! 体が冷えていたのでラーメンを食べることにした。お店の名前は「麺屋コルトン」だ。
注文したのは、1番人気の「とんこつらぁ麺(850円)」。
博多ラーメンのような見た目で、飲んだ後のシメというか、二日酔いに染みるラーメンというか……夜行バスの後にもちょうどいい1杯である。寒い朝に最高だ。豚骨の風味豊かなのにクセがないのが人気の理由らしい。目が覚める美味しさだった。
食べ終えて市場をもう1周してもまだ8時30分。まだ観光するには早いってことで……
・アサヒサウナ
15分ほど歩いて24時間営業の男性専用サウナ施設「アサヒサウナ」へ。3時間のクイックコース(700円)にレンタルタオル(300円)を付けて1000円ジャスト。
ここがマジで最高だった。広いサウナ室(約90度)ではヒーリング音楽に癒され、津軽の雪解け水を思わせるキンキンな水風呂からの天然温泉。10時30分まで滞在して完璧に目が覚めた! 夜行バスの疲れも完璧に吹っ飛んだぞーー!
・珈琲の街
アサヒサウナ近くで「壱番館」なる古き良き喫茶店を見つけたので、コーヒーを1杯飲むことにした。弘前は「珈琲の街」とも言われている。弘前における珈琲の歴史は150年ほどあるそうで、懐かしい雰囲気の漂う老舗喫茶が多いという。
カウンター席で注文した「キリマンジャロ(400円)」を飲みながら、店主にオススメのお店を尋ねてみると……
「今日は春分の日だからお墓参りに行くでしょ。地元の人はお墓参りの後にお蕎麦を食べるの。それで言うと、ここからすぐの『高砂さん』は凄い人気ね。いつも1時間以上待つけど、11時開店だから今から行けばいいと思う。海老天が美味しいわよ」
というわけで、壱番館から高砂を目指した。道中で見かけた白とミントグリーンのルネッサンス風建築は「青森銀行記念館」とのこと。明治37年(1904年)に第五十九国立銀行として誕生した国の重要文化財だ。雪景色とマッチしている。
・高砂
開店10分前に高砂に到着した。名簿に名前を書いて待っていると……開店時間が近づくにつれて車が次々と駐車場に入ってくる。地元の方がオススメする人気店だけあって県外ナンバーも多い。早めに来て良かった。壱番館のママありがとう。
注文したのは1800円の「天ざる」だ。ここが勝負所だと思って奮発した! 全ベットするならここだろう。んで、どうだったかと言うと……
勝った。
べらぼうに美味しかった。そばはもちろん身がプリプリで厚みのある海老天が感動的に美味しい。身を開いて揚げていて衣はサクサク & 身はジューシー。
なんなら海苔で巻いた揚げそばまで絶品だった。やはり地元の方のオススメにハズレはない。ちなみに退店時には「1時間待ち」とアナウンスされていた。
・弘前城へ
食後に弘前公園追手門前の「弘前市立観光館」へ。自転車をレンタルしようとしたら「雪のため利用期間は4月から11月なんです」と言われてしまったわけです。建物にも書いてある。
それなら歩ける範囲で観光しよう。観光案内カウンターで「弘前城に行ってみたい」と伝えたら丁寧に道順を教えてくれた。追手門から弘前公園に入り、杉の大橋を渡って道なりに行けば10分ほどで着くらしい。よし、行ってきます。
観光館前にはリンゴのイラストと「世界一」の文字。アップル社のロゴマークみたいだ。アップルが最も似合う街・弘前。
さて、弘前公園といえば「弘前さくらまつり」で有名。国内外から毎年200万人が訪れる日本一の桜まつりだ。公園内には樹齢100年を超えるソメイヨシノが300本以上あると言われている。しかし……
まだ早かった。堀の水も凍っている。まあこれはこれで幻想的だから良し。
そしてついに弘前城に到着。東北で唯一の現存12天守の1つである。現存天守とは、江戸時代までに築城され、修復されながらも残っている天守のこと。
ちなみに司馬遼太郎は著書で弘前城を「息をのむほど美しい」と評し、「日本七名城の一つ」と挙げている。そう言われるとそうなのかなと思ってしまう。
お城はもちろんだが、本丸の展望台から見える富士山のような山がとても美しい。
調べてみると、青森県の最高峰・岩木山なる山で、別名「津軽富士」とも呼ばれているそうだ。
・スタバ
弘前公園から出て歩いているとレトロなスタバを発見した。
日本で2店舗目となる登録有形文化財の店舗だという。大正時代の洋館を店舗に利用している。弘前市内には大正ロマンあふれるハイカラな建物が多い。
休憩してばかりだが、徒歩なので休憩できる時に休憩をする作戦である。「スイートミルクコーヒー」を飲みながらのんびり休んだ。
・図書館と山車展示館
休憩後、旧弘前市立図書館と山車展示館を見学。図書館は木造洋風3階建て。明治39年(1906年)に日露戦勝記念として建てられ、昭和6年(1931年)まで市立図書館として利用されていたそうだ。
レトロな建物が多く残っている理由は「外国人教師を招いてキリスト教が広まったこと」や「西洋をモデルにした旧陸軍の司令部が置かれ、洋風建築が相次いで建てられたこと」「戦争で空襲に遭わなかったこと」などが挙げられるという。
山車展示館は撮影OK。弘前ねぷたまつり(弘前は “ねぶた” ではなく “ねぷた” らしい)に出陣する直径4メートルの大太鼓などを間近で見ることができるぞ。
・アップルパイを買いたい
続いて向かったのは「グランメルシー」なる地元で人気の洋菓子店。弘前出身の知人から「アップルパイならコープの前のケーキ屋さんが王道」と聞いていたため。山車展示館から歩いて約20分とのこと。
途中、これまたレトロな「中央弘前駅」を見学しつつ……
弘前れんが倉庫美術館をチラ見しながら……
アップルパイを目指してひたすら歩く。歩道の両サイドには人の背丈ほど高く積み上げられた雪が残っていた。これも青森ならではの光景か。
そんなこんなで「コープあおもり和徳店」の前にある「グランメルシー」に到着。
アップルパイ(480円)の賞味期限は「当日中」とのこと。テイクアウトのみだったので宿で食べることにした。
・雪を捨てないでください
今度は津軽三味線の生演奏を聴くため「津軽藩ねぷた村」に向かうことに。ルートを決めていればもっと効率的に回ることができただろう。市内をぐるぐる回っている気がする。
「水路に雪を捨てないでください」と書かれた看板を発見した。雪を “捨てる” とはどういうことだろうか。雪国ならではの言葉である。
水路を確認してみると……
いや無理だろ。
捨てるも何も無理なレベルで雪が水路を埋め尽くしている。手作業では不可能な雪の積もり方……自然の猛威の前に人は無力だと思い知らされたのだった。
・津軽藩ねぷた村
「津軽藩ねぷた村」に到着。こちらは津軽の魅力を丸ごと体験できる施設である。弘前ねぷたまつりのお囃子(おはやし)や津軽三味線の生演奏が楽しめるらしい。お土産もひと通り揃っている。
到着したタイミングでちょうど津軽三味線の生演奏が行われていた。津軽三味線の特徴は、奏者が型にとらわれずアドリブで自由に演奏することだという。
生演奏の迫力はそれはもう凄まじく、隣で見学していた外国人も分かりやすく感動を表現していた。たしかに素晴らしかったし、はじめて弘前に行くなら「津軽藩ねぷた村」は外せないと思った。
・市内散策
その後、70円の「こがね焼き」を食べながら土手町商店街をブラブラ歩いていると、巨大な建物を発見した。
通りがかりの人に話を聞いたところ「中三(なかさん)」という大型商業施設で2024年に閉店してしまったらしい。巨大な縄文土器をイメージしたオブジェなのだとか。すごいなこれ。
・宿へ
どうやら半日で約20キロ歩いたようだ。その後、予約していた “泊まれるスナック街” ことGOOD OLD HOTELにチェックインをして休んでから……
弘前の繁華街で、これまた地元の方に教えてもらった「薮きん」なる蕎麦屋さんに行き……
「カレー中華(800円)」を食べた。飲んだ後のシメといえば「薮きんのカレー中華」で決まりらしい。旅行のシメにもいいだろう。
いわゆる蕎麦屋さんのカレーそばよりもサラサラしていて、まさにシメのラーメンって感じ。今日は麺類ばかり食べているが「カレー中華」も中毒性のある味だった。
その後、夜の弘前を散歩してから……
宿に戻り……
アップルパイで旅を締めくくったのだった。
弘前といえば「りんごの街」ですからね。艶感たっぷりで見た目も美味しい。青森県産のりんごをそのまま乗せてシャキシャキに焼き上げたそうだ。メチャメチャ美味しかった。
・弘前最高
というわけで今回は、弘前駅から歩いて行けるスポットを思いっきり満喫。天候に恵まれて良かった。
次回は「弘前さくらまつり」の時期に行ってみたいと思ったぞ。皆さんもぜひ。それではまた次回のバス旅で会いましょう!
執筆:砂子間正貫
Photo:RocketNews24.