断熱材の種類と特徴|選び方や断熱効果・費用にかかわる工法も解説
断熱材は種類が豊富で性能や価格も異なるため、家を建てたりリフォームしたりする際に、何を基準に選べばよいか悩む人も多いでしょう。
この記事では断熱材の種類と特徴とともに、適した断熱材を選ぶための基本的知識について解説します。
断熱材の特徴を比較しやすいよう一覧表も載せていますので、はじめて断熱材を選ぶ方も、断熱材のくわしい情報が知りたい方も、ぜひチェックしてみてください。
断熱材の施工方法
断熱材を選ぶ際、断熱材そのものの種類や特徴、価格だけで選んでしまうと、期待したような効果が得られなかったり、予算内に収まらなかったりする恐れがあります。そのため、適した断熱材を選ぶための基礎知識として、施工方法について押さえておくことが必要です。
断熱材の施工方法は主に3つあります。
・充填断熱(内断熱)・外張り工法(外断熱)・付加工法
それぞれの方法について、特徴やメリット・デメリットを押さえておきましょう。
充填断熱(内断熱)
充填工法とは、柱と柱の間など躯体内の空間を断熱材で充填する工法です。断熱材を隙間なく充填することで高い断熱性を発揮できる工法で、木造住宅などで多く採用されています。
ほとんどの断熱材が使用でき、新たに断熱用のスペースをつくる必要がないことから、後述の方法と比べて低コストで施工できる点がメリットです。
構造内で結露が起こるリスクを防ぐために、気密・防湿シートを貼る必要があります。木造工法の種類と断熱材の種類の組み合わせによっては施工が煩雑になる点がデメリットです。
外張り工法(外断熱)
外張り断熱とは、家の構造の外側に断熱材を貼りつける工法です。柱の外側から断熱材で覆い、熱が出入りする隙間をなくすことで、高い断熱性を発揮します。
躯体内部に結露が起こりにくいため、建材の腐敗やカビ・害虫の発生を抑えられるのもメリットです。また、構造の内側は配管スペースとして活用できます。
柱や梁を避けてシートを施工する充填工法と比べて工法はシンプルですが、断熱材の量は多くなるため、施工費は充填工法よりも高めです。地震などの揺れなどで断熱材が緩みやすいため、しっかり固定する必要があります。
また、外張り工法は壁に厚みが出るため、狭小地の住宅には不向きでしょう。
付加工法
付加工法とは、充填断熱と外張り工法の両方を施工する方法です。屋外からと室内からの熱の出入りをしっかり遮ることができるため、断熱性能は3つのタイプの中で最も高く、内部結露も抑えられます。
ただし、施工費も3つのタイプの中で最も高くなります。また、施工業者が限られる点も注意が必要です。
【一覧で比較】主な断熱材9種類と特徴
主な断熱材の種類と特徴を、一覧でご紹介します。
【一覧表中の用語について】
・熱伝導率:ある物質の熱の伝わりやすさを表す数値のことで、数値がより低いほうが熱が伝わりにくく、断熱性能が高いことを意味します。
・熱伝導率区分:住宅金融公庫による断熱性能の区分。A1、A2、B、C、D、E、Fまであり、Fが最も断熱性が高いことを示します。製品によって熱伝導率に差があるため、一覧では代表的な製品について掲載しています。
無機繊維系断熱材
※1 高性能グラスウール16Kの場合 ※2 住宅用ロックウール(マット、フェルト)の場合 ※2 住宅用ロックウール(マット、フェルト)の場合
木質繊維系断熱材
発泡プラスチック系断熱材
※3 A種ビーズ法ポリスチレンフォーム保温版特号の場合
※4 A種押出法ポリスチレンフォーム保温板3種の場合
※5 A種硬質ウレタンフォーム保温板2種3号の場合
※6 A種フェノールフォーム保温板1種1号2号の場合
天然系断熱材
【種類別】断熱材の特徴とメリット・デメリット
前項で一覧形式でご紹介した断熱材について、それぞれの特徴やメリット・デメリットをくわしく解説します。
無機繊維系断熱材
無機質繊維系の断熱材は、鉱物由来のガラスや岩などを原料とする断熱材です。以下の2つについてくわしくご紹介します。
・グラスウール・ロックウール
グラスウール
グラスウールは、ガラスを細い繊維状に加工した断熱材です。価格も安く、施行しやすいことから、断熱材の国内シェアの過半数を占めています。断熱材といえばグラスウールを思い浮かべる人も多いでしょう。
ほかの種類の断熱性能が向上しているため、断熱性能は低めと捉えられがちですが、繊維の密度が濃いものを選んだり、厚めに施行したりすることで性能を上げることができます。
素材の特性上、燃えにくく、害虫に強い点がメリットです。また、吸音性も高く、施工場所の防音効果が期待できます。マット状のものが多く、配管などに巻きつけて断熱効果を高めることも可能です。
湿気に弱く、防湿・結露対策が必要ですが、最近ではデメリット解消のため、防湿フィルムつきの商品も販売されています。
ロックウール
ロックウールは玄武岩・スラグなどを繊維状に加工した断熱材です。熱に強く燃えにくいなど、グラスウールと似た特徴を持っています。揮発性の高さもロックウールのメリットですが、湿気には弱いため、防湿・結露対策は必要です。
木質繊維系断熱材断熱材
木質系の素材を使用した断熱材のうち、代表的なセルロースファイバーをご紹介します。
セルロースファイバー
セルロースファイバーは、新聞紙や段ボール、おがくずなどの木質系原料を綿状にした断熱材です。壁内部に吹きつけて施工することで隙間ができにくく、高い気密性を発揮します。吸湿・防湿効果が高く、内部結露の発生を抑えられることもメリットです。
環境や人体にやさしく、吸音・防音効果にも優れています。また、難燃材として製造の過程でホウ酸や硫酸アンモニウムを添加しているため、防火性や防虫効果も高めです。
ほかの繊維系と比べて価格が高く、施工できる専門業者が限られる点がデメリットとして挙げられます。
発泡プラスチック系断熱材
発泡プラスチック系の断熱材は、断熱性能や防湿効果の高さや施工のしやすさから国内シェアを伸ばしています。ここでは主流の4種類についてご紹介します。
・ビーズ法ポリスチレン・押出発泡ポリスチレン・硬質ウレタンフォーム・フェノールフォーム
ビーズ法ポリスチレン/押出発泡ポリスチレン
ビーズ法ポリスチレンとは、ビーズ状にしたポリスチレン樹脂を発泡成形した断熱材です。一般的には発泡スチロールとして普及しています。
押出発泡ポリスチレンは、ポリスチレン樹脂を溶かして発泡剤を混ぜ、板状に成形した断熱材です。代表的な製品に、ホームセンターなどでもよく見かける「スタイロフォーム」があります。ビーズ法と材料は同じですが粒が小さく、断熱性能も高めです。
どちらも軽量で加工しやすく、水に強く結露の防止効果が高いことなどから、グラスウールに次いでよく使われます。ただし、価格は無機繊維系より高めです。また、熱に弱いため、火の気のあるキッチンなどでは使えない点がデメリットとして挙げられます。
硬質ウレタンフォーム
硬質ウレタンフォームは、ポリウレタン樹脂に発泡剤を加えた断熱材で、外張り断熱によく使用されるボード状に成形したタイプと、施工箇所に直接吹きつけるタイプがあります。
断熱性能に加え、結露・カビの発生を抑える効果の高さが魅力です。また、吹付タイプは構造が複雑でマットタイプやボードタイプの断熱材を施工しにくい場所でも、隙間なく充填して断熱層を形成できます。
デメリットは価格が高いことと、燃えると有毒ガスが発生する可能性があることです。引火しやすいともいわれているため、火気のある場所への施工は避けたほうがよいでしょう。
フェノールフォーム
フェノールフォームは、フェノール樹脂に、発泡剤や硬化剤を加えた断熱材です。熱を帯びると硬化する性質があることから難燃性が高く、万が一燃えても有毒ガスが発生する心配がありません。
ほかの断熱材と比べて熱伝導率が圧倒的に高く、耐久性も高いことから、高い断熱性能を長期にわたって維持することが可能です。
性能と比例して価格もほかより高いことが、最大のデメリットといえるでしょう。
天然系断熱材
日本において主流ではありませんが、自然派の健康住宅などで使用される天然系の断熱材も2つご紹介します。
羊毛炭化コルク
羊毛
ヴァージンウールと特殊ポリエステルを原料とした断熱材です。羊毛の表面は水をはじきますが、繊維の中に空気の層をつくって高い断熱性を発揮します。この天然の調湿機能と断熱性能があるため、羊毛は古くから断熱材として使用されてきました。
羊毛の断熱材は結露の抑制効果に加えて、天然の消臭効果や吸音・防音効果が高いことでも知られています。
価格が高く、施工できる業者が少ないことがデメリットです。
炭化コルク
炭化コルクは、ワインの栓などコルク製品の製造過程で出た端材を原料とし、炭化させた断熱材です。気泡にたくさんの空気を含むことから、断熱材として使用されます。
メリットは断熱性能に加えて天然の調湿機能に優れ、防虫効果も高いことです。コルクは特に、ダニを寄せつけない効果があります。また、吸音性にも優れているため、施工によって防音効果も期待できるでしょう。
デメリットは、価格が高いことです。
断熱材の選び方
前項で解説してきたように、断熱材は種類ごとに一長一短があります。そのため、断熱性能や単価だけを見て選ぶと、期待した効果が得られず後悔することもあるでしょう。
ここでは断熱材選びで押さえておきたいポイントを解説します。それぞれの特徴やメリット・デメリットとあわせて、断熱材を選ぶ際の参考にしてみてください。
施工場所に適したものを選ぶ
断熱材は、施工場所や用途に適したものを選ぶことが大切です。
結露や雨漏りのリスクが高い天井や、地面からの湿気が多い床などには、耐水性の高い発泡スチロール系の断熱材が適しています。予算などの都合上、湿気に弱い無機質繊維系の断熱材を使用する場合は、防水シートの施工が必須です。
ただし、発泡プラスチック系の断熱材は熱や火に弱いため、キッチンには不向きといえます。ウレタンフォームは燃えた場合に有毒ガスが発生することから特に注意が必要です。
付加効果もチェック
吸音性や防音性、耐火性など、断熱性能以外の効果が期待できる断熱材もたくさんあります。断熱材を選ぶ際は、施工する部屋の用途に応じた付加効果があるものを選ぶのがおすすめです。
費用対効果を考えて選ぶ
断熱材そのものの費用だけでなく施工費もかかるため、費用対効果を考えて選ぶことも重要なポイントです。
フェノールフォームなどは断熱性能に加えて耐水性や耐久性に優れていますが、価格も高いため、用途や場所を考えずに使用すると予算をオーバーする恐れがあります。湿気の影響を比較的受けにくい場所にはグラスウールを使用してコストを抑えるなど、バランスを考えて選ぶことも必要です。
施工業者による工法や断熱材の違いもチェック
断熱材は施工する業者によって、選ぶ断熱材の種類やメーカー、得意とする工法や施工費も異なります。そのため、事前に複数の施工業者のホームページで断熱工事の施工事例をチェックし、比較してみるのがおすすめです。
また、見積もりも複数の業者からとり、使用する断熱材や施工方法もチェックしたうえで、安心して任せられる業者を選ぶようにしましょう。
まとめ:断熱材は特徴とともに、工法やポイントを踏まえて選ぼう
この記事では9種類の断熱材について、特徴やメリット・デメリットをご紹介するとともに、断熱材の効果や費用にかかわる基礎知識として施工方法も解説しました。
最後に、断熱材を選ぶ際に押さえておくべきポイントを再掲します。
・施工場所や用途を考えて選ぶ・断熱性能に加えて、耐火性や防音性などの付加効果もチェック・費用対効果も考えて選ぶ・安心して任せられる施工業者を選ぶ
断熱材の特徴とともに工法や選び方のポイントを踏まえ、快適な家づくりに欠かせない断熱材を選びましょう。