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小学生5人に1人は恋人アリ? 小中学生の「付き合ってる♡」の実態を専門家が解説

コクリコ

ソーシャルワーカー・鴻巣麻里香さんに聞く「小中学生の恋愛バウンダリー」第1回。5人に1人の小学生が「付き合ってる人がいる」という昨今、親はどう捉えるべきか。小中学生の恋愛のリアルとは? 全4回

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女性と子ども専門のソーシャルワーカーとして、日々思春期の「困りごと」に向き合っている鴻巣麻里香さん。人間関係でのトラブルやモヤモヤは、「わたしはわたし、あなたはあなた」という心の境界線「バウンダリー」が侵されることによって生じることが多いといいます。そこで鴻巣さんに、小中学生の恋愛におけるバウンダリーについて、4回に渡って伺いました。1回めでは、「小中学生の恋愛のリアル」についてです。

●PROFILE鴻巣麻里香(こうのす・まりか)
KAKECOMI代表、精神保健福祉士、スクールソーシャルワーカー。ソーシャルワーカーとして精神科医療機関に勤務し、東日本大震災の被災者・避難者支援を経て、2015年非営利団体KAKECOMIを立ち上げ、こども食堂とシェアハウス(シェルター)を運営。

多くが「彼氏・彼女がいる=リア充」と考えている

ニフティキッズの調査によると、「好きな人がいる」と答えた小学生は90.3%(中学生86.5%)、「つき合っている人がいる」と答えた小学生は22.9%(中学生18.8%)。なんと小学生の5人に1人が恋人持ちということになります。

令和の小中学生にとって、恋人がいるのは普通のことなのでしょうか。スクールソーシャルワーカーの鴻巣麻里香さんが日々目にしている、子どもたちのリアルはどうでしょう?

「確かに、『彼氏(彼女)いる』とか『付き合ってる』などと言う小中学生はたくさんいます。ただ、『付き合うって、具体的にどんなことをしてるの?』と聞くと、一緒に帰るくらいで、実際は何もしていないんですよ。

ただ一応、形式としては『告白する』などのプロセスは経てはいます。そこからお互いの関係に『彼氏・彼女』というラベルを付けて、周りからもそう認知されている、という位置づけです。ただ中身は、大人が想像してしまうような恋人関係では全然ないんですね」(鴻巣さん、以下同)

以前だったら「異性の仲のよい友だち」くらいの関係性。そこに、「付き合う=彼氏・彼女・恋人」という名前をつけなければならないという圧力を、子どもたちの日常から感じるそうです。

「圧力をかけているのは、私たち大人。よく子どもたちが『何々ちゃんは、リア充でいいな』って言うんですが、“リア充=彼氏・彼女がいる”をさしているんです。そのメッセージをどこから汲み取っているのかというと、いろんなコンテンツやSNS、小学生が読む雑誌などから。

少女向けの漫画や雑誌では、モテとかモテメイク、モテファッション、モテるための仕草といった特集が組まれているんですよね。それを見た子どもたちは、『恋人がいたほうがいい』『いるのが当然なんだ』と考えるようになり、以前は友だちだった異性の存在に、“付き合う”というラベルを貼っていくんです」

「恋愛リア充の呪い」をかけないように注意!

近年の子どもたちの交友関係を見ていると、ポジティブな変化も感じられると鴻巣さん。

「私たちの子ども時代は同性同士で遊びがちでしたが、今は男女の垣根があまりないですね。同じ趣味や好きな漫画、アニメ、曲などの共通項を通じて、ボーダレスに性別を超えた交流があるんです。

オンラインゲームなどでも、男女分け隔てなくいろんなやりとりをしている。そうして男女間の友情が生まれ、そこに彼氏・彼女というラベルを貼っていく流れなんですね」

ラベルは貼っているけれど、そこに「密接な交際」が伴っているケースはまれだといいます。小学生の娘や息子から「彼氏・彼女ができた」と聞いても、驚いたり過剰に反対したりする必要はなさそうです。

「『早すぎる!』などとびっくりする前に、『そっかそっか、それってどういうことなの?』『何をするのが彼氏・彼女なの?』と、コミュニケーションの入り口として話してみるといいでしょう。

逆に、子どもに浮いた話がないからといって、『何であなたには彼女がいないの?』などと、恋愛リア充の呪いをかけるのは避けてくださいね」

2024年9月には『わたしはわたし。あなたじゃない。10代の心を守る境界線「バウンダリー」』を上梓した鴻巣さん。悩める中高生やその親たちから熱い支持を得ています。  写真:安田光優

「彼氏・彼女」の既成ルートに流されると本音が置き去りに

中学生になると少し事情が異なります。「彼氏と彼女とは、どんなことをする存在なのか」という知識がついてくるため、友だちの延長線上から外れていきがちだからです。

「恋人同士なら手をつなぐ、触れ合う、キスをする、その先、という既定路線みたいなものがありますよね。そこで『付き合ってるならそっちに行かなければならないのかな』『恋人同士だったら、こうするのが当然なのかな』という流れで、本当は望んでいなくても、関係が進んでいってしまう。

『自分がこの人と、どんな関係を作りたいんだろう』などと、自分の体や心としっかりと対話する前に関係が進んでしまうんです。その結果、『本当にこれでよかったのかな』と苦しむ子どもも少なくありません」

その大半は女の子ながら、「積極的な彼女に押されて、望まない関係に悩む」という男の子もいるそうです。

「男の子のコミュニティには、『性的なスキンシップを早く経験すると、ちょっと進んでてエライ』みたいな雰囲気がまだまだあるんですよ。

例えば男の子が『彼女が積極的で、この間キスしちゃったんだよね』と言ったら、仲間の男の子たちに『いいじゃん!』ってうらやましがられる、みたいなね。そういう空気の中で、本当は嫌なのに、嫌だと言う口をふさがれている男の子もいるんです」

「付き合ってるなら、当然こうするべき」という既成概念が優位になる子どもの恋愛。そうなると「この人とどういう関係を作るのが、自分にとって心地がよいのかな」、「自分や相手は、この関係をどうしていきたいのかな」という感情が、置き去りにされがちなのです。

「交際」は人を大切に扱うコミュニケーションを学ぶ絶好のチャンス

「彼氏・彼女なんだから、このぐらい当然」と望まないスキンシップをとることは、その後成長して異性と交際をする際にも、「NO」と言えなくなったり、お互いに同意を取るプロセスを抜かしてしまったりするリスクにもなり得るそうです。

「性行為がからんでくると、女の子のほうが圧倒的にリスクが高く、デメリットの最初の芽がまかれかねません。日本では包括的な性教育が遅れていることもあって、かたよった情報が子どもたちに入ってしまっている。

だからこそ、子どもが苦しいときに『お母さん、ちょっとわからないんだけど』『お父さん。ちょっとこれ苦しいんだけど、どうしたらいいの』と言える関係性があったらいいなと思います。もちろん、親には恥ずかしくて言えないこともあるので、学校の先生やスクールカウンセラーなど、周りにいる大人がそんな存在になれるといいですよね。こうした関係性は、その次に続くトラブルから子どもたちを守ることにつながると思います」

では、小中学生が恋愛をするメリットは、どこにあるのでしょう?

「『誰かを好きになって、大切にするってどういうことなんだろうね』と、周りの大人たちと会話をして、深めていく機会になると思います。

『どんな関係を作るのが、お互いにとって心地がいいかな』『どうやってコミュニケーションをとれば、自分や相手を大切にすることにつながるのかな』と、子どもと一緒に考えてあげるといいですね」

そうすると性教育の面でも、いい影響があるといいます。内容を単に情報としてではなく、「今後もしかしたら、そういうことになるかもしれない」と、自分ごととして考えるようになるのです。「いつかその場面が来たら、絶対にお互いの同意が必要」など、大切なことを学ぶきっかけになるでしょう。

──次回は、親が子どもに伝えるべき恋愛のバウンダリーについて伺います──

取材・文/萩原はるな

10代の生きづらさとその解決策をリアルなエピソードとともに紹介した『わたしはわたし。あなたじゃない。10代の心を守る境界線「バウンダリー」』(出版:リトルモア)。2024年9月発売から1ヵ月弱で重版に。

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