広島県内初!和牛甲子園で西条農業高が総合評価部門最優秀賞を受賞 西農が取り組んだ短期肥育技術の研究
東広島市鏡山の県立西条農業高校(竹志幸洋校長)が第8回和牛甲子園(JA全農主催)の総合評価部門で、最優秀賞に輝いた。広島県内で初。
同甲子園は、全国の和牛を飼育する農業高校生(高校牛児)らの最高の舞台。肥育の取り組み内容を競う取組評価部門と、肉質を競う枝肉評価部門の計2部門で評価し、両部門の合計得点で総合評価部門の最優秀賞1校を選出。今年は25道府県40校が出場し、過去最多の63頭の和牛が出品された。同高は、6回目の出場で、取組評価部門で優良賞、枝肉評価部門で優秀賞をそれぞれ受賞した。
畜産科肉牛部門3年の内城心粋さんは「先生や協力してもらった企業に恩返しができた」と喜び、「先輩の研究を引き継いで頂点に立てた」と先輩に感謝。後輩には「2連覇してほしい」と期待を込めた。同3年の内城粋咲さんは「研究員を目指して勉強を続け、広島和牛の普及に取り組みたい」と目を輝かせ将来の夢を語った。
取組評価部門 短期肥育技術の研究で高い肉質と飼料費の削減
3年生13人のうち、内城心粋さん、内城粋咲さん、川岡春菜さん、遠藤雪鈴さんの4人が代表して「広島和牛に新たな息吹を!~地域と目指すブランド向上~」のテーマで発表した。生徒らは、地元酒造会社の醸造過程から出る赤ぬかに着目。赤ぬかは、口どけ・風味を向上させるオレイン酸(脂肪酸の一種)の含有量が多く、ペレット化して給与することで短期肥育でも肉質の良い和牛生産につなげた。赤ぬかペレットで肥育牛を育てることにより、約4カ月の肥育期間が短縮となりコストの削減や回転率も上がったという。同高が出品した和牛肉は、全ての出品牛の中で最も短い肥育期間だった。
赤ぬかを飼料化『赤ぬかペレット』
日本酒の醸造過程から出る副産物の赤ぬかは、酒米の外側を削ったもので栄養価が高いという。約3年前から賀茂鶴酒造(同市西条本町)から安心・安全な赤ぬかを仕入れ、給与量や時期を調整しながら研究を進めた結果、高品質な和牛の生産につながる可能性があることが分かったという。
牛の排せつ物を発酵させた戻し堆肥
牛の寝床に敷く敷料は、校内の家畜の排せつ物を発酵させた戻し堆肥を活用し、年間約50万円のコスト削減につなげた。戻し堆肥は、細菌が死滅するまで約3カ月間置いて使用し安全性も確認した。現在、戻し堆肥を長く使うために石灰を混ぜているが、廃棄されたカキ殻に注目。カキ殻が、石灰に再利用できるのではないかと考えて研究を進めている。
徹底した飼養管理
平日は毎日、朝礼前に実習(給餌・牛舎の掃除)をする。授業が終わる午後4時頃からは、給餌・牛舎の掃除などの実習を行い、牛舎から臭いを出さず牛にとって快適な環境を整えている(土日など閉庁日は、外部に委託)。
体重測定や毛刈りなどを定期的に行ったり、毎日健康状態を把握したりして伝染病から守るために衛生管理を徹底している。生徒らは、一貫経営(種付け、出産、育成、出荷)のもとで和牛16頭を飼育し、おいしい和牛の生産に向けて研究を積み重ねている。
枝肉評価部門
3年生が25カ月間かけて育てた広島和牛、晃福(あきふく)の肉を出品。肉質は最高のA5等級、牛肉の霜降りの度合いを評価するBMS(ビーフ・マーブリング・スタンダード)の判定基準は、最良の12番。同高の生徒らが飼育した広島和牛が2月9日、ゆめマート西条(同市西条町助実)で販売され好評だったという。
審査
酒造会社などさまざまな企業との連携や戻し堆肥と赤ぬかの安全性、地域資源を活用した経営コスト削減への取り組みや、枝肉のきめの細かい脂と肉質が高く評価された。
市長表敬訪問
竹志校長や内城さんら5人が2月20日、市役所を訪れ高垣広徳市長を表敬訪問し、和牛甲子園総合評価部門で最優秀賞受賞の報告をした。内城さんら2人は「新しく始めた研究データを7分間で分かりやすく動画にまとめるのが難しかった」など発表内容や苦労したこと、後輩への思いなどを熱く語った。祝金と記念品のトートバッグを贈った高垣市長は「すばらしい快挙!」と激励した。
畜産科肉牛部門のあるある
生徒に聞いた畜産科肉牛部門の「あるある」
・自分の手が臭い
・牛が下痢をした時に、ふんをかけられる
・牛が怒った時に、鼻水をかけられる
・高校生が話さないような会話(農業・大腸菌群など)をする
生徒らには、それぞれ担当牛がいて牛に名前を付けて愛情を持って飼育している。
舛宗新悟主幹実習教諭と内田汀映教諭は「3年生13人が、同じ方向を向いて取り組んだことが今回の受賞につながった」とたたえた。今後については「消費者に安心・安全な肉を食べてほしいので、妥協せず全力で生徒らと一緒に取り組みたい」と熱く語り、余韻に浸る暇なく2連覇に向けて踏み出している。(山北)
※学年などは取材当時のものです
プレスネット編集部