第51回「いろいろな働き方」
「私たちの未来は、私たちで作る!」
あなたの「困りごと」、「モヤモヤ」、「お悩み」、もしくは、「変えていきたい社会の課題」などを通して、みんなで一緒に「これから」を考えていく番組です。
今回もリスナーの方から寄せられたメッセージに3人でこたえました。
私はキョンキョンより年上、未婚、貧乏一人暮らし、クレームの多いコールセンターで働いています。
今日はディランの映画「名もなき者」の余韻に浸りながら、ディランを聞きながらのメールです。
私の働いているコールセンターはほとんどが派遣です。
仕事も辛いのですが、私がずっとおかしいと思っていることがあります。
長く勤務した派遣が辞めるときは、お知らせも何一つなくやめていきます。
でも、派遣先の正社員が辞めたり異動する時は、私たちにも「花束と記念品を渡すので、一人〇〇円、協力お願いします」と言われます。そんなに関わりのない社員が辞めるときまで…。
私の父が数年前に亡くなったときは、派遣先からお悔みの言葉の一つもありませんでした。
でも、派遣先の正社員の親が亡くなると、派遣の私たちにまで、通夜、葬儀、斎場のお知らせ、香典の協力願いが届きます。
派遣と社員の扱いに格差があるのはわかってはいたけれど、親が亡くなったときまでと、怒りというか悲しいというか、家に帰って父の写真を見ると涙が流れました。
派遣の立場では、意見すると契約を切られるのではないかと、何か思っていても言わない人の方が多いように思います。
おかしいと思っても声は上げない、誰かが声を上げて良くなればラッキー!という感じなのですよね。
変わらなければ「あの人文句ばかり言って怖いよね…」の変わり者扱い。
何だか最近、そんなことに疲れてしまって、政治も含め、これからこんな社会で一人生きていくことに不安しかありません。長生きしたいなんて思わなくなりました。
定年も近く、これから私は一人希望を持って生きていけるのかな。
私がときどき参加している炊き出しボランティアのテントには、「あなたもわたしもおんなじいのち」と書かれています。この言葉を見るとホッとするのです。
吐き出して今日は少し落ち着けました。
今からボブ・ディラン聞きながら、少し飲みます。
小泉:そうなんですね。もちろん会社によって違ったりするんでしょうけど、こういうことは起きていそうですね。
大石:そうですね、聞くし。
小泉:正社員と派遣との境界線みたいなものを作るなら、きちんと作ってほしいっていう。例えば身内が亡くなった時に、「派遣の方には何もできないけど、こちら(正社員)に何かあった時もしなくていいよ」とか。しっかりとした境界線があれば、まだ傷つかないのに。自分たちの時にはしてくれないのに正社員の方の時にはお知らせが来たりするていうのは、泣けちゃうかもね。
大石:フェアじゃないですよね。
小泉:フェアじゃないって思ったりしちゃうかもね。あと、異動したり、辞めたりするっていうのもお花代みたいなものが回ってきたりするとね…
大石:うん。
小泉:きっと、その境界線みたいなものが最初からあったら期待もしないだろうなと思ったりしますけどね。
大石:そうですね。うちの会社の場合、比較的、社員も派遣社員の方も、契約社員の方も、バイトの人も、基本、全部同じ扱いなんですよ。そういうルールでみなさんに来てもらっているので。だから逆にいうと、このルールに沿えなかったらうちの会社では働かない方がいいですよっていう話だけど。でも会社によっては「線が引かれるのが好きで派遣社員としてきているんです」っていう人もいるから。
上村:そういう方もいるんですよね。
小泉:あまり人と関わりたくない、最低限の関わりしか望んでいない、それが心地良いっていう方もいると思うんです。「だから私はあえて派遣社員をしています」っていう人も絶対にいると思うんですね。
大石:うん。
小泉:もうすぐ定年で、一人で生きていく希望を持ちにくいと思っているかもしれないけど、そう思いながらも炊き出しのボランティアとかをされているの、素晴らしいですけどね。
大石:そうなの!本当にそう思った。
小泉:そういうところで、「おんなじいのち」っていう言葉を信じて、少し人の役に立てるようなことをして、自分を労ったり、褒めてあげたりしてほしいな。
大石:本当ですよ。それこそ、全国でこういうこと、いっぱいあるんじゃないかな?
小泉:もっと、もっと激しく傷つくようなことが起こっているような気がしますよ。見えない境界線によって。
大石:こうやってメールを送ってくれたけど、こういうモヤモヤっていっぱいあると思うから。もし、そう感じた方がいらっしゃったらいろいろ聞いてみたいですね。
小泉:これ、書いていてちょっと心が落ち着きました、って言ってくれて嬉しいです。
上村:またいつでも吐き出してください。
日本全国で農家のお手伝い
「フリーランス農家」のお仕事
お悩みから視点を広げて、こんな話題も紹介しました。
今回ご紹介するのは、ユニークなフリーランス「フリーランス農家」!一般的な農家とは違って、自分の農地は持っていません。日本全国を飛び回りながら、これまでに300軒以上の農家のお手伝いをしてきた小葉松真里さんにお話を伺いました。
農業って、年中、忙しいわけではなくて繁忙期があるんですよね。
植え付けの時期の1、2週間だけ人手が必要とか、収穫の時期に、人が必要とか。
たとえば北海道は春からだいたい10月までが繁忙期で、京都とか関西は秋ぐらいがみかんとか果樹系の収穫の時期で、沖縄や奄美大島とかの離島は、冬が収穫の時期なんです。
通年、北海道から南の島まで繁忙期が回っていくという感じになっています。
私はずっと農業に関わっていたい、だったら私が移動しようと思って。
忙しそうな農業をしている地域を私が渡り歩く形になりました。
最近は北海道と沖縄と奄美大島が多いんですけど、たぶん(年間)300日ぐらいは農村にいますね。
最初、農家さんにバカにされるかなと思ったんですよ。
フリーランス農家って、「舐めてんの?」って言われるのかと思ったんですけど、誰もそんな人いなくて。みんな、応援してくれたり、来てくれてウェルカムというか、喜んでくれて。
農家さんは一人一人想いを持っていて、それがみんな同じじゃないっていうのがすごい面白いんですよね。
異業種から農家になった人とか、親の農業の背中を見てなった人とか。
なるまでのストーリーもぜんぜん違うし、なってからどういう農業をしていきたいか、というのも違うし。
あとは、今、世の中には閉塞感があるというか。
日本ダメだよねとか、課題だらけだよね、っていう雰囲気があるけど、農家さんは全然そんなことなくて。
大変なのは大変なんですよ。課題はあるけど、じゃあ、こうしていこうとか。
世の中こうだから次、俺こうしようと思っているんだよね、という。
自分で考えて実際に行動していく、生きる姿勢みたいなのがすごい格好いいと思っていて。みんな生き方がオリジナルなんですよね。
私も最初、農家さんをお助けしようみたいな感じで回り始めたんですけど、助けるというよりも私が学ばせてもらったり、元気をもらっていることの方が多くて。
私、次で、フリーランスになって7年目になるので、自分で働き方を作ったり、仕事をしたい地域で仕事をするとか、やりたい人と仕事をするとか、そういった自分で「選べる」という意味では安定しているのかなと。
もし失敗しても、さらにまた新しい挑戦が始まるみたいな感じ。
今がダメになったらどうなるんだろうっていう、そっちも楽しみというか。笑
小泉:楽しそう~。
大石:フリーランス農業か。初めて聞きましたね。
小泉:そうですね。「おてつたび」っていうので全国いろいろなところにお手伝いに行くというものは(聞いたことが)あったけど、一人で、フリーランスで農業に関わっているっていうのは初めて聞きました。たしかに、繁忙期が変わっていって、1年中好きな仕事ができるっていうね。
大石:よく思いつきましたね。
小泉・上村:本当ですね~。
小泉:本当に繁忙期って大変なんですよね。私のファンの方で、岡山のみかん農家の方がいて、家族でやっているから繁忙期が近づくと休みがないんですって。冗談で「ブラック自営業」って自分でおっしゃっていて。でも、毎年できたみかんをちょっと送ってくださったりする方がいるんです。そんな時、テレビやSNSを見られないくらい忙しいってよくおっしゃっていて。だから、年に1回か2回、SNSを通して連絡が来るんですけど。だから、助かると思います。ずっと、長い期間の雇用は負担になるけど、繁忙期だけ手伝いに来てくれるって、後光が射すかもしれないですよね。
上村:しかも色々なところを回っている大ベテランの方が来てくれたら!
小泉:全国を回っていって「こうしたらもっと便利だよ」みたいな技も全国に受け継がれて渡っていってるかもしれないし。
大石:弟子とか取らないんですかね。
小泉:ディレクターが「寅さんみたい」って言ってましたね。
大石:ちょっと映画になりそうな感じですよね。新しい人に出会って、ドラマが起こって。
小泉:ドラマがいいな。1本ずつ、農作物が違うところに。
大石:あー。
上村:どんどん南に下っていくみたいな。
大石:いろいろな産地の生産物もわかるわけでしょ?
小泉:小葉松さんを追えばいいだけかもしれない、ドキュメンタリーで。
上村:話し方の快活な感じとか、「小葉松さんが来てくれたら楽しいだろうな」って。
小泉:すごく元気が出そうだし。めんどくさくなさそう。
大石:どうやったら頼めるんですか?「小葉松さん来てください」っていうオーダーは受け付けてるんですか?
あ、WEBサイトでコンタクトできるみたいです。
小泉:一度来てくださった方はリピートするでしょうね。「この時期お願い、来年も空けておいて」って。
上村:実際、小葉松さんの「フリーランス農家」としての仕事の領域は、日本中を移動する中、人と人のつながりを通じて広がっているそうです。
例えば…
・人手不足の農家同士をつなぐ「産地間連携」の支援
・都会の人向けの「ワーケーション」や「インターンシップ」の企画・運営
・全国の農家を紹介する記事の執筆
小葉松さん、お仕事が広がっているんですね。
大石:広がってるんだね。
小泉:いいですね。
小さい葉っぱの松と書いて小葉松さん。なんか、天職じゃないですか?
上村:年間300日以上農村にいて、幸せと。
小泉:この経験は広がりそうですよね。個人の仕事として、300日農業をやっていて、残りの65日どこにいるんだろうね。
大石:たしかに。
上村:気になるな。
小泉:そんなことも聞いてみたいな、と思いました。
(TBSラジオ『サステバ』より抜粋)