テイ&ニューが爆笑を掻っ攫い、ティリー・バーズがロスの波に引きずり込むーー『タイフェス』が初開催した別会場イベントをレポート
5月11日(土)~12日(日)に、東京都代々木公園にて『第24回タイフェスティバル東京』が開催された。今年は初の試みとして、代々木公園から飛び出し、別会場でもファンミーティングやライブを敢行。大成功を収めた。今回は5月10日(金)にヤマノホールで開催されたタイの人気俳優、テイ・タワンとニュー・ティティプーンによるファンミーティング『Thai Festival Tokyo 2024 Special Fanmeeting』昼公演の模様と、5月12日(日)に渋谷WWW Xで開催された、タイ国内外で圧倒的な人気を誇るバンド、ティリー・バーズの日本初単独ライブの模様をお届けする。
⚫︎爆笑の渦に巻き込んだテイ&ニュー
『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』のタイリメイク版『Cherry Magic 30 ยังซิง』や『Dark Blue Kiss ~僕のキスは君だけに~』など数多くの作品で主演を務めるタイの人気俳優、テイ・タワンとニュー・ティティプーン。日本でも抜群の人気を誇る彼らのスペシャルファンミーティングが、5月10日(金)にヤマノホールで開催された。
大勢のファンで賑わう満席の場内。応援ボードや、ぬい(彼らを模したぬいぐるみ)、ペンライトが会場を鮮やかに彩る。
14:40。ピンクの照明に染まるステージに、黒いズボンにデニムGジャンを身にまとったテイと、カーキー色のズボンにブラックデニムジャケットを羽織ったニューが揃って登場。ファンの声援に嬉しそうに手を振り、肩を組みながら『Cherry Magic 30 ยังซิง』の劇中歌「Loudest Love」を披露。美しい歌声を響かせた。
歌い終わると同時に「おはよー!」と日本語で挨拶するテイ。その朗らかさに観客は大笑い。トーク力が非常に高い2人は、観客とも自然に打ち解け気さくに交流する。ここで、司会を務めるRyotaがステージに登場。客席から温かい拍手で迎えられる。「せーの!」とRyotaが号令をかけた瞬間、観客は「チャン、チャンチャンチャン」と手拍子を打ち、見事に拍手が収束。かつて日本の昼間をうきうきウォッチングさせた伝説の番組『森田一義アワー 笑っていいとも!』(フジテレビ系)でお馴染みの、いいとも手拍子だ。場内一体となって繰り広げられる光景に驚きを隠せないテイとニュー。「せーの! せせせーの!」と独自の掛け声で観客に手拍子を求めるニューと、「せーの!」の魅力に取りつかれたテイは、いいとも手拍子はどんな時に使うのか、いつでも使えるのかと、矢継ぎ早にRyotaに質問。「使うとき……えー、ほぼないです!」と答えると、会場は笑いに包まれた。
続いてはゲームコーナー。「特別な記念日はいつ?」という質問に、テイが「7月19日。POLCAさん(テイ、ニューのファンダム名)の誕生日」と答え、会場が大いに沸いた。「テイがハマっているゲームは?」という質問に、「Pokémon GO!」とニューが即答すると、観客だけでなくテイも大喜び。「そう! 僕はチコ(チコリータ)が大好き! ちなみにチコってタイ語だと不良という意味なんですよ」と爆笑しながら答えた。
「ミッションクリアゲーム」で風船割りに挑戦した2人。前日に同会場でファンミーティングを開催し、『タイフェス』の開幕を宣言した事務所の先輩オフ・ジュンポンとガン・アタパンの話題に触れると、「昨日、オフガンは怖がってできなかったのか。よし、今日はオフガンの分まで頑張ります!」と宣誓し、互いの身体の間に風船を挟み込んでは、景気よくドンドン割っていく。
続くマシュマロキャッチも、アザラシ(ニュー)と、トレーナー(テイ)になりきり、これまた見事に成功。「お客さんにもやりたい」とテイが言いだしRyotaは大慌て。自然体なテイ、ニューと彼らに翻弄されるリョータの姿に観客の笑いも止まらない。罰ゲームとして用意されていた「ポケダンス」を、観客と一緒に踊り、大爆笑の中、ゲームコーナーは幕を閉じた。
テイ、ニューそれぞれがソロ曲を披露する歌コーナーで『Cherry Magic 30 ยังซิง』の劇中歌「Voice Within」を披露したテイ。ファンサービスをしながら優しく歌い上げ、会場を魅了した。クリス・ピーラワットの「Call Me」を選曲したニューは、シンガロングする観客と一緒に楽しそうに歌ってみせた。「みんなが一緒に歌ってくれてとても嬉しかった」と笑顔で話し「せーの!」と、恒例になったいいとも手拍子で締めくくった。
続いて「お悩み相談コーナー」。事前に用意されたファンからの悩みに答えるシンプルなゲームなのだが、テイ、ニュー2人の手にかかれば、途端に面白くなってしまう。ボックスから選んだお悩みを、意気揚々と読み上げようとするも「あ……、日本語」とガックリ肩を落とすテイ。逆に「あ! 〇〇さん、タイ語で書いてくれてありがとう! 質問を読みますね」とニコニコしながら悩みを読むニュー。あまりにスムーズなニューの振る舞いを怪しんだRyotaが紙を覗きこみ「ちょっとニューくん! 全部日本語で書いてあるじゃない!」と慌てて突っ込むものだから、場内は大爆笑。客席後方に座るスタッフも笑い転げている。「二人とも、ずっとボケてくる」とRyotaがぼやき、観客は大笑いしながらRyotaにエールを送った。
肝心のお悩み回答も、テイ・ニューそれぞれの個性が光り輝いていた。「仕事中にイライラした時、どうやって解消したらいい?」というお悩みに、「テイはよくイライラするよ」と即答するニュー。「おいおい、俺はないよ、ニューがイライラしてるんだよ」とテイが答え場内は爆笑。「まず落ち着くのがいいんじゃない?」とニューが言うと「イライラしている人にそれを言うと、余計イライラするんだよ」とテイ。ここで突然即興劇が始まり、「(イライラしているニューに)おい、ニュー、どうしんたんだ? 落ち着けよ」とテイが話しかける。その途端ニューは「はぁ? 俺は落ち着いてるよ!」と叫び「ダメだ。余計イライラするわ」と即座に認めるニュー。笑いが渦巻く中、テイが「あ、これは2人の実話なんだけれど、多分これが正解だよ。怒っている人と同じテンションで怒る!」と言い、ニューと新たな即興劇を披露。見事にイライラを鎮めて見せた。また、「物をよく失くす」というお悩みに「改善する方法は3つあります。ひとつはお金を貯めて忘れ物防止タグを買う、ひとつは(物忘れの多い自分に)注意してくれる友人を見つける。もうひとつは、忘れたことを忘れる!」と軽快に答えるテイ。最後の潔い解答に観客の笑いが止まらない。「友人と喧嘩したら?」というお悩みに「悪い行動をしない」とテイが答えると、ニューが「え? 僕に言った? ニューに言ったの? え?」と大騒ぎし、会場は爆笑の嵐。笑いすぎて涙を流す観客もいた。ちなみにニューの答えは「喧嘩したなら腰をすえてとことん話すべき」だった。
最後のQ&Aコーナーでは、ニューの軽快なトークが炸裂。「腹筋見せて」というファンの声に、「ペン持ってる?」と真面目な顔で尋ね、「ほら、描いてるんだよ、僕も」ととぼけた顔で畳みかけ、会場は大笑い。また、「『チェリマジ』の裏話を教えて」というファンからの質問に、「アチ(ニューの役)はね、実は僕じゃないんだよ。僕が演じたんじゃないんだ。これは本当に内緒で、ここにいる人たちだけの秘密にしてね」と真剣な表情で答える。あまりにも斜め上行く解答だったため「え……? じゃあ俺は誰と共演していたの?」と混乱するテイ。場内大爆笑。まさに笑いのカーニバル!
写真撮影を行った後は最後の挨拶。「今日は来てくれてありがとう。ホールの大きさに関係なく、みんなの顔を覚えているよ。また会いに来てください」(テイ)、「見慣れた顔の人が何人かいて嬉しい。みんな覚えているよ。今日は本当にありがとう」(ニュー)。
PARADOXの「Say it again」カバーを披露し、愛と笑いに満ちた、85分にわたるファンミーティングは幕を閉じた。
⚫︎ティリー・バーズ
前日のタイフェスティバルでヘッドライナーを務め、その圧倒的なライブパフォーマンスで会場を熱狂の渦に巻き込んだティリー・バーズ。前夜の興奮冷めやらぬ中、彼らの日本初単独ライブを見届けようと、男女問わず多くのファンがフロア内を埋め尽くし、開演を待ちわびている。
15:40。場内が暗転し歓声と拍手が会場を包み込む中、ステージ袖からボーカルのサード、ギターのビリー、ドラムのマイロ、サポートメンバーのアップ、GLAが登場。赤く照らされたステージに立つや否や、ライブバンドの魅力が凝縮された強烈なサウンドでイントロを演奏。その堂々たる音を体現するようなサードのダンスがオーディエンスを刺激し、場内は一層熱気を帯びていく。悲鳴にも似た歓声が響く中、一曲目に披露されたのは「I’m Not Boring You’re Just Bored」。2022年、コロナ禍によりオンライン配信で開催された『タイフェスティバル』に出演した彼らが一曲目に披露したのが、まさにこの曲。「皆さん、声を出して!」とサードが日本語で煽り、オーディエンスはハンズアップしながら彼らの音を体ごとで享受し、シンガロングする。続けて「ineednoone」、「Revise」、「Can't have it all」を立て続けに披露。リズム隊が生み出すぶ厚いサウンドと、サードの歌声が会場を飲み込む。
「皆さん、こんにちは! 僕たちはティリー・バーズです! タイから来ました。今日は会いに来てくれてありがとうございます。涙が出ちゃう(笑)。僕らのライブチケットはソールドアウトしたと聞きました。本当にありがとう!」と、日本語と英語を交え嬉しそうに話すサード。高校時代に日本語を習っていたという彼は、観客の声をしっかり拾い、ユーモアたっぷりにコミュニケートし、会場を大いに沸かせた。
サードの力強い歌声に魅了された「Can’t keep up」、美しいメロディラインから始まる「It's Not You It's Me」、ビリーがギターを緑色のグレッチに変え披露した「Worth the wait」。次々と放たれる力強いサウンドがフロアを彩り、思い思いに彼らの音を楽しむオーディエンスの姿が浮かび上がる。ティリー・バーズにとって、音楽とは、彼らのサウンドと観客のグルーヴが合わさって初めて完成するものなのだと気づかされた。
「次の曲は新曲で全英語詞です。まもなくアルバムがリリースされますが、その中の一曲です」とサードが嬉しそうに話し、「White Pills」を披露。会場を隅々まで見回し、歌詞の意味をかみしめながら歌うサードのパワフルなパフォーマンスとバンドサウンドに酔いしれた。「Slipped Your Mind」では、ドラムのマイロがセンターに立ち軽快なラップで場内を沸かせ、その後休む間もなく投下された「Status」で会場は更にヒートアップ。オーディエンスの大合唱に「すごい!」と何度も驚き喜ぶサード。会場一体となって曲の世界観を泳ぎ切った。「Bangkok Winter」では、ハンズアップし歌い踊るフロアの様子を楽しそうに見つめながら、ドラムセットの上に立ちラップするマイロの周りを、サード、ビリー、アップ、GLAが囲み、最強のグルーヴを生み出した。
続けて「Send You Off」のイントロが流れると、「君たちこそが主役だ」と言わんばかりにフロアにスポットが当たり、オーディエンスは疾走するサウンドに食らいつく。サードは、熱狂する場内を嬉しそうに見つめ「日本での初ライブ、どうですか? 楽しんでいますか?」と声を掛け、みんなが気を許した次の瞬間、「1、2、3、4!」と更に極厚なサウンドを鳴らす。フロア中が彼らの生み出す音に没頭し踊っていると突如音楽が止まり、サードの漫談が始まる。「あのー、ティリー・バーズは日本語で「チリバ」と言いますね。すごいかわいい」。会場が爆笑に包まれた瞬間、「1,2,3,4!」と、ドSが如く客席を煽り場内は狂気のダンスフロアと化す。まさにカオス! するとまた音楽が止まり、「えっと、日本は一番良い料理です。トロは一番良い! 1、2、3、4!」。もうこうなりゃヤケだ! と言わんばかりに笑いながら「チリバ」に体を操られるオーディエンス。強烈なチリバ体験だ。サードの音頭に合わせゴリゴリの低音響く中、一斉にヘドバンをし、最後にジャンプ! 最強の「Send You Off」が爆誕した。
熱狂冷めやらぬ中、次に披露したのは、バンド結成後、最初に生まれた曲「Heart In A Cage」。サード、ビリー、マイロ3人がステージ中央に立ち、観客の手拍子に合わせ伸びやかに演奏してみせた。続いてキラーチューン「Same Page?」のイントロが流れると場内から喜びの悲鳴が。歓喜するフロアを見回し嬉しそうにキーボードとギターを弾くビリー、変形ハイハットを軽快に叩きグルーヴを牽引するマイロ、力強い歌声で曲の世界を自由に羽ばたくサード、そしてオーディエンスが一体となってシンガロングする姿を見て、思わず胸が熱くなる。間奏で「皆さんの声は、とても素晴らしいですね」と喜びに満ちた表情で話すサードの眼差しはどこまでも優しかった。
メロウなサウンドが心に残る「When the Film’s Over」に続き、ビリーのギターリフで始まるロックナンバー「Like A Dead Man」が流れると、フロアは大興奮。眼鏡越しに見えるサードの鋭い眼光が、会場を隅々まで見渡し支配する。最強のフロントマンだ。間奏中にメンバー紹介も行い、会場は盛大な拍手と歓声に包まれた。
素晴らしいバンドアンサンブルで場内を魅了した「Ordinary」を披露し終えると、サードは「もう疲れた?(笑)」とオーディエンスに問いかける。「僕たちは本当に日本を愛しています。来てくれてありがとうございます」と話すと「待っていたよー!」とフロアから声が。嬉しそうに頷きながら「次の曲は、さよならしてしまったけれど、いつかまた会えるよね、という曲です」と語り、「Until Then」を披露。美しいバンドサウンドに乗せ、祈りにも似たサードの歌声が響く。一筋の光が雲を貫くような、そんな景色が眼前で広がる素晴らしい演奏だった。
ラストナンバーは「Just Being Friendly」。会場のボルテージが最高潮に達すると、サードは「踊って」とフロアを煽り、自らも音に合わせしなやかにステップを踏む。「もっと声を出して!」と挑発するサードに負けじと、オーディエンスも大合唱。骨太なライブパフォーマンスで会場を大いに盛り上げ、本編が終了した。
アンコールの声が鳴り響く中、再び会場に登場したメンバー。サードが驚いた素振りで「うちに帰らないの?」と日本語で言うものだから、場内大爆笑。「帰らないよー!」と声が飛びかうと「疲れたでしょう? うちに帰って」と、とぼけた表情でたたみかける。大いに沸くフロアを見回し、「The One」、「On My Shoulder」、「Who I Am」の3曲を次々と披露。彼らの放つ濃厚なサウンドに呼応するかのようにシンガロングするオーディエンスの姿が、とても美しかった。
すべての演奏を終えたメンバーたちは手を取り合い、ステージ中央に集まる。その表情は実に柔らかく喜びに満ちている。2時間を超えるライブを共に盛り上げ、作り上げたオーディエンスに最大の賛辞を贈るサード、ビリー、マイロ。アップとGLAも両手を挙げて挨拶をし、拍手鳴りやまぬ中、メンバーたちはステージを後にした。
彼らの日本初単独ライブは大盛況のうちに幕を閉じた。強烈なチリバ体験に遭遇した我々は、しばらくの間チリバロスに悩まされるだろう。SNSを通じライブ動画を視聴した人々もまた同じようにチリバロスを味わっているのかもしれない。日本中がチリバロスだ。ニューアルバムをひっさげ、彼らがまた日本でライブを開催してくれるその日まで、チリバロスを引き受けようじゃないか。チリバが描く新しい景色を心待ちにしながら。
取材・文=渋谷のりこ 撮影=ティリー・バーズ:泉健也、テイ&ニュー:オフィシャル提供、川井美波(SPICE編集)