『ダンダダン』第2期 モモ役・若山詩音さんインタビュー|叫んで、戦って、拓かれていく“声優としての新境地”
2025年7月3日(木)より好評放送中のTVアニメ『ダンダダン』第2期。
本稿では、ホラー、ラブコメディ、アクションが目まぐるしく交差する本作で、モモ役を演じる若山詩音さんのインタビューをお届けします!
演技への試行錯誤と収録現場での手応え。若山さんの言葉からは、モモという役に向き合う姿勢と『ダンダダン』という作品に注がれる熱意が静かに伝わってきます。
第2期に入り、より深まっていくキャラクターの関係性や、現場で感じたチームの一体感、モモのキャラクター性に向き合う中で、見えてきた自身の変化とは?
ギャグ・ホラー・アクション! 第2期も“らしさ”は健在
ーー前シーズンに引き続き、大人気の本作。第2期に入ってからの各キャラクターの印象をお聞かせください。
モモ役・若山詩音さん(以下、若山):まず、モモが素直に行動するようになったと思います。オカルンと一緒に様々な怪異や宇宙人と関わったり戦ったりして、ふたりの距離が縮まっているなと感じました。可愛いところや、魅力的なところがどんどん見えてきています!
ジジとオカルンはとにかくカッコいいですね。オカルンはモモのために怒ってくれましたし、邪視(じゃし)は、ブリーフ1枚にもかかわらず、妙にビジュアルが良かったです。山代監督(山代風我)やアベル監督(Abel Gongora)のこだわりも感じられました。
ーー「呪いの家」を使った戦闘シーンも印象的です。
若山:そうですよね。あと、鬼頭家の皆さんもユニークでした。鬼頭ナキさんの「ぢぇにふあ!! ろぺす 穴根打(アナコンダ)」はカンフーっぽい動きと最強ババア感が最高で! 鬼頭家は本当に恐ろしい一家で、悪い人たちではあるのですが、どこか憎めない面白みがあります。大穴に落ちたあとの動きもコミカルですし、ホラーとコメディのバランスが取れている人たちですよね。
ーーターボババアはいかがですか?
若山:ターボババア自身は「どちらの味方でもない」と言いつつ、モモたちを助けてくれています。第2期では、初めて「モモ」と呼んでくれるシーンがあるので、すごく嬉しかったです。
ーー確かに、名前を呼ぶのは初めてですね。
若山:そうなんです! それまでは、「おめえ」「くそだらあ」だったので、キュートな一面を見ることができました。
ーー第1期終盤から描かれている「呪いの家」のエピソードは、ホラー要素が強い印象です。
若山:本当に怖かったです。鬼頭家の人たちの肌の色が特徴的で、一目で「絶対に話が通じない人たちだ……」と思ってしまう説得力がありました。貼り付けたような笑顔も恐ろしいですし、オカルンが問い詰められるシーンなんて、ホラー映画そのものだなと思いましたね。
その後にモンゴリアンデスワームが出てくるのですが、モンゴリアンデスワームの念波のせいで狂気に満ちてしまったモモとオカルンが本当に怖いです。アクションの迫力と「もう逃げ場がない」と感じさせるような絶望感、その両方が詰まっていて、「パニックホラー」のようでした。こうしてストーリーを見てみると、ひとつのエピソードやシーンの中に色々な要素が詰め込まれていて、龍幸伸先生のアイデアの豊富さに毎回本当にびっくりします。常に八方塞がり、いつでも崖っぷちな感じがある『ダンダダン』ですが、爽快にピンチを打開する一手が描かれているのも、とても魅力的だなと思っています。
ーー第1期の取材では、緊張やプレッシャーがあったとお話されていました。第2期の収録には、どのような心持ちで臨まれましたか?
若山:1期の時は本当に緊張しました。自分なりに準備をして臨んでいたのですが、上手くいかないことや後悔が残る部分もたくさんありました。それに比べて第2期では、現場や作品のテンポ感に慣れてきた感覚もあったので、「余裕をもって、より準備万端で臨もう」と思っていました。
ーー具体的には、どのような準備をされたのでしょう?
若山:アクションシーンが見どころなので、アクションのタイミングや種類を頭に叩き込むことですね。第1期の時は、リハーサル用の映像を見ても、動きが激しくて、どのようなアクションになっているのかは瞬時に分からず、「今誰が誰を蹴ったんだっけ!?」と思うこともあったんです。ですので、第2期のアフレコ準備では、頭に映像が浮かぶまで、原作や台本のト書きを繰り返し読んでいました。
ーーいざアフレコに入ってからはいかがでしたか?
若山:アフレコ時には、穴に落ちたあとのキャラクター同士の距離や位置関係にも注意しました。深くて広い穴だということを把握していないと不自然になってしまいます。映像を見ていると忘れがちになってしまうポイントだと思ったので、原作と照らし合わせながら演じていました。
ーーアクションシーン以外の掛け合いはいかがでしたか?
若山:『ダンダダン』はカットごとに情緒がころころ変わる作品でもあります。さっきまで笑っていたのに、次は怒ったり、泣いたり……といった感じです。
セリフごとにプランを設けて、流れも感じながら収録していくので、最初は結構苦戦しました。事前に練習していても、本番では上手くいかないこともありました。でも、花江さんはテストの段階から完成されていて、すごく引っ張っていただきました。
モモはオカルンが大好き!?
ーー若山さんから見たモモ、オカルン、ジジの関係性について、お聞かせください。
若山:オカルンとジジは「恋のライバル」という関係でありながら、友だちになっていくのが素敵です。モモとオカルンは、急速に進展する訳ではないですが、どんどん心が通じ合っている気がします。
ーーモモとオカルンは戦闘シーンでも息ぴったりですよね。毎回、オカルンがモモを背負ってふたりで戦っていて。
若山:そうなんです! それがふたりの戦い方で、徐々に動きも揃っていく。本当に良いコンビだと思います。一方で、モモとジジはしっかり「友達」という感じですね。ジジの思いが「するっと」モモを通過していくのは、ちょっと切ないです。
ーーやっぱりオカルンがいるからでしょうか?
若山:それはもちろんそうでしょうね。モモは圧倒的にオカルンのことの方が好きなんじゃないかなと、個人的には思っています。本当に可愛らしいふたりです。
ーーそれぞれの関係性もどんどん深まっていきますが、キャスト陣のチームワークはいかがでしょう?
若山:第1期の時は、メインの登場キャラクターが少なかったですし、私自身が緊張していたこともあって、静かな雰囲気でアフレコしていました。第2期からは、花江夏樹さん、石川界人さん、佐倉綾音さんがお話してくださって、ワイワイ感があったと思います。
ーー前作に引き続き、本作の主題歌も素晴らしいですよね。楽曲や映像についての印象を教えて下さい。
若山:アイナ・ジ・エンドさんの「革命道中」は、強さ、泥臭さ、命を削って戦うみたいな中に、可愛らしさも感じました。1曲の中に多様なジャンルが詰め込まれている気がして、まさにそれが「ダンダダン」を表現しているようで、感動してしまいました。WurtSさんの「どうかしてる」は、『ダンダダン』に絶対必要な、日常の些細な瞬間や、学校で青春しているモモたちの姿がぎゅっと詰まっています。こういうシーンがあるからこそ、アクションや戦闘シーンが際立つと思うのです。
主題歌2曲あわせて、『ダンダダン』という作品の色々な側面が表現されていると思います。
ーーエンディングの映像では、モモがフォーカスされていましたね。
若山:さすがギャルは自撮りに慣れているなって! 家の前の鳥居にスマホを置いて踊り始めるギャルさ全開なモモが好きです。
ナチュラルなモモで在りたい
ーー若山さんの演じるモモのナチュラルさが作品の魅力を底上げしていると感じました。なぜあれだけ自然なお芝居で演じられるのでしょうか?
若山:ありがとうございます! ギャル感はもちろん意識していますが、基本的には「作り込まない」という方針で演じさせて頂いています。
もちろん、役作りのために色々なものを参考にはしていまして、例えば電車や街で見かける女子高生の方々を観察したり、Youtubeでギャルの方の動画を拝見したりして、マインドや喋り方を勉強しています。
なるべく素に近いまま、普段の自分や見聞きした「ギャル・女子高生らしさ」を抽出して、モモのお芝居を作っている感じですね。
ーー山代監督にお話を伺ったところ、若山さんの演技に驚かれたそうです。「少し誇張されたリアル」があると。
若山:本当にこの上なく光栄です……!
ーーアフレコ現場では、山代監督とどのようなお話をされますか?
若山:山代監督とは、収録の前後に「このシーンの表現悩んだんですよ」「ここは上手くハマったと思います」という風に、演出や表現の裏話をしていただきました。
私たちは半日くらいかけて1話を収録しますが、作画や演出に関わる方々は、収録時間より遥かに長い時間をかけて映像を作っていらっしゃいます。山代監督のお話を聞くたびに、その有り難みを改めて感じました。特に、本作は全ての映像に意味が詰まってるからこそ、そのひとつひとつを聞かせていただけるのは本当にありがたい機会でした。
モモを通して、新たな自分を開拓
ーー花江さんをはじめとしたキャストの方々と共演する中で、変わったことや新しく掴めたものはありますか?
若山:叫んだり、バトルをしたりするお芝居に挑戦したのは、「ダンダダン」がほぼ初めてなんです。序盤は声量が足りていなくて、声の出し方や通り道ができていなかったと思います。第2期の収録が進む中で、叫び声や低い音を使って喋ることなど、自分の声が響くところを開拓できている実感があります。
ーー若山さんの声優としてのイメージを拡張するような役でもあるのかなと。
若山:そうですね。モモのようなキャラクターは初めてだったのですが、ずっと憧れのある役柄だったんです。モモは、ギャルっぽくて、雑さがあって、言葉の届け方も豪速球ですよね。
実は自分の中にもモモと共通する部分が確かにあったので、モモという役でそういった部分を出すことができて、とても嬉しかったです。
ーー最後に、今後の見どころをお聞かせください。
若山:第1期からもちろんそうでしたが、第2期でも、山代監督とアベル監督による原作を深く理解した演出によって、コマとコマの間が丁寧に描かれています。初めてダンダダンに触れる方にも、原作のダンダダンがお好きな方にも、絶対に満足していただける作品になっています。
また、ジジや邪視だけでなく、振り幅のある魅力的なキャラクターもたくさん登場するんです。詳しくは言えないのですが……皆さんお待ちかねのキャラクターも登場します! 魅力的なキャラクターたちがアニメでどのように活躍するのか注目していただきたいです。もちろんモモやオカルン、アイラたちも活躍するので、楽しみにしていただけると嬉しいです。
[インタビュー/タイラ 撮影/MoA]