東南アジアの社員らが萬古焼体験、海外の四日市出身者が三重の観光としてアレンジ
海外で活躍する四日市出身者の発想で、東南アジアの社員の三重県旅行が実現し、11月4日、四日市市の「ばんこの里会館」で萬古焼の陶芸体験を楽しんだ。14人の社員全員が陶芸は初体験だったが、講師も驚く出来栄えだった。観光面ではやや発信力が弱い四日市にとって、これからの可能性がのぞくひとときにもなった。
訪れたのは精密測定機器総合メーカー、株式会社ミツトヨの東南アジアを統括する「ミツトヨ・アジア・パシフィック」(シンガポール)の一行。同社代表で四日市出身の松生高志さん(46)と、シンガポール2人、タイ6人、インドネシア4人、ベトナム2人の14人の社員たちが午前中の約2時間、手捻りで粘土をコーヒーカップや湯飲み茶碗などに形づくっていく体験をした。
粘土の形を整える社員たち
一行は東京で日本国際工作機械見本市(JIMTOF)などを視察するために選ばれた優秀な社員たち。来日時の観光を組み込む時、半数が日本旅行の経験者で東京や大阪は見たというので、松生さんが「三重県は知っているか」と質問したところ、ほとんどが「知らない」と答えた。松生さんはせっかくなら自らの出身地の魅力を知ってほしいと、三重県を訪問地にしたという。
たまたま、シンガポールの三重県人会で知り合ったアップルのアジア太平洋地域のパートナーマーケティングマネージャー新谷雄紀さん(41)と話していたところ、新谷さんは萬古の産地で生まれ育った縁で萬古焼の国際アンバサダーを務めていたため、四日市で陶芸体験ができるように、四日市市の関係者と連絡を取って準備をしてきた。
11月1日に羽田空港に着いた一行は、名古屋から伊勢志摩を巡って3日に四日市へ。三重県内では松阪肉の料理や伊勢志摩での英虞湾クルーズなども楽しみ、特に海女小屋での魚介料理体験の人気が高かったという。
「ばんこの里会館」での体験では、陶芸家の石田和生さんが講師を務めたが、余った時間を使って、人形やぐい飲みなど、独自に別の作品をつくり始める人も多く、「初めてとは思えない上手さです」と驚かせた。この後、釉薬を使って焼き、1カ月後に発送して彼らの手元に届けるという。
作品づくりは応用編のレベルにまで
松生さんは「日本食や焼きものなど、日本の文化に触れてもらうことで日本を好きになってもらい、最終的に日本の企業で働くことに愛着をもってもらえれば」との思いだったといい、新谷さんは「私は焼きものが普通に存在する環境で育ちましたが、海外に出ると、どれだけ貴重なものなのかと分かります。こうやって萬古焼を知ってもらう機会ができて、とてもよかったです」と話していた。
一行はこの後、東京へ向かい、11月5~7日にミツトヨの工場やJIMTOFの視察をして8日に帰国する。
迎えた萬古焼業界の関係者らを含めての記念撮影