坊の窪自治会 DX化で課題解決へ 43歳の自治会長が奮闘
深見地区の坊の窪自治会(263世帯/家永稔之会長)が、デジタル技術(DX)を積極的に活用して業務の効率化を進めている。自治会長を務める家永さんは43歳のプログラマーで、仕事の経験を生かして自治会運営に取り組んでいる。
家永さんは、自治会員として地域の人たちと交流する中で、「なぜ自治会に入らないといけないのか」という疑問の声を聞き、気になっていた。そこで自分の得意分野であるデジタル技術を使って自治会の魅力を高められないかと考えるようになった。
今年4月、自治会長に就任した家永さんが着手したのは、家から家を訪ねて情報を共有する回覧板のデジタル化だった。
これまでは紙を会員世帯に回覧していたため、情報が行き届くまでに時間を要し、高齢者にとっては次の人に届けることが負担となっていた。
そこで家永さんは、高齢者でも比較的使用している無料通話・メールアプリ「LINE」を活用して、会員のスマートフォン(スマホ)へ回覧情報を配信する仕組みを構築した。
4月から実験的に運用を開始したデジタル回覧板には、役員を中心に15人ほどが登録を済ませた。家永さんは「自治会に加入する263世帯の半数の登録を目指したい」と普及に期待を寄せている。一方で、これまでの回覧板を希望する声もあることから、当面はデジタルと紙媒体を併用する考えだ。
さらに家永さんは、自治会館の利用予約にもデジタルを導入した。LINEとGoogleカレンダーを連携させて、スマホから手軽に予約できるシステムを考案した。予約完了後に表示される10桁の暗証番号を入力すると箱が開錠して鍵を受け取れる仕組みだ。
これまでは利用したい日を紙のカレンダーに記入して、役員から直接鍵を借りる必要があった。鍵の貸し出しで役員が自宅で待機しなければならないことや、利用したい時に役員が不在で鍵を借りられない不都合もあったが、デジタル技術がそれらを解決してくれる。
家永さんは「デジタル化によって予約を簡素化することで、会館の利用促進にもつながる」と考える。「住民同士の茶話会や勉強する場所など、さまざまな用途で会館を利用してもらい、『自治会に入って良かった』と感じてほしい」と語る。
役員会議も見直し
京都府出身の家永さんは、29歳で大和市へ移住してきた。都内の企業に勤務する傍ら、大和東小でPTA会長を務めたほか、5年ほど前からは地元の消防団にも所属している。「大和の方々には本当に良くしていただいている。恩返しの気持ちを持ちながら今後も活動したい」と話す。
そんな家永さんは、自治会員の負担軽減の一環として、役員や班長が参加する月1回の会議も見直した。年3回に減らして「勉強会」に改称。前半30分で警察官らを招いて防犯や防災などに関する話を聴き、後半30分で会議をするようにした。
「重苦しい雰囲気も少なからずあった会議を楽しみにされる役員もいる」と、家永さんは手ごたえを感じている。
自治会への加入率は全国的な課題でもある。大和市では2015年に68・8%だった加入率が24年は56・8%まで低下している。